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2015年1月27日 (火)

ジャズを聴く(21)~ズート・シムズ「ズート」

ズート・シムズはクール・ジャズにカテゴライズされるスタイルのテナー・サックス・プレイヤーだった。彼のテナーはスウィングのエナジーとブルージーな熱さに充ち溢れながらも、滑らかでリラックスしたフィーリングをも兼ね備えていた。ビック・バンドやボーカルもまじえたジャム・セッションで舞い上がるように目立つことも出来たが、合わせものでは過度に出しゃばることなく、その上手さを発揮していた。シムズはレスター・ヤングの影響を受けていたが、盲目的な模倣者ではなかった。たしかに、彼のキャリアの最後近くでは、レスター・ヤングやビ・バップに影響されたアプローチよりも、むしろ、原点に戻るようにベン・ウェブスターのモードでプレイしていた。

シムズの家族は寄席芸人で、彼自身も小さい頃からドラムスとクラリネットを演奏し始め、13歳でテナー・サックスを手に取った。2年後にプロとなり、ダンスバンドのツァーに参加した。1943年にベニー・グッドマンに加入する前の40年代前半にはボビー・シャーウッドともプレイしている。1944年にはビル・ハリスとニュー・ヨークのカフェ・ソサイエティでプレイしている。その一方、ジョー・ブシュキンのリーダー・アルバムのレコーディングに参加している。

その後、カリフォルニアに移り、シット・ギャレットと共演する。軍務に就いた後の1946年には再びグッドマンのもとでプレイし、47年にはジーン・ローランドのもとに加わった。そのころ、スタン・ゲッツ、ジミー・ジェフリーそしてハービー・スチュワードとプレイしている。ハーマンのもとを去ると同時に、短期間バディ・リッチと活動を共にし、50年にはグッドマンに復帰している。1951年にはエリオット・ローレンスに加入した。50年代前半になってプレスティジ・レーベルでソリストとしてデビューし、1953年には、スタン・ケントンのグループでプレイしていた。1954年から56年にかけて、ヨーロッパに渡り、ジェリー・マリガンのバンドに加わり、それ以降のマリガンのバンドのソリストとなった。他方で、50年代前半にアル・コーンとの間でコラボレーションを始め、これが後々まで長く続くことになった。2人はコラボはフレンドリーでありながら、ほどよい緊張関係を保っていて、素晴らしいツイン・サックスのレコーディングを何点も残している。彼らは、70年代にスカジナビアと日本にツァーを行っている。シムズがボブ・ブルックマイヤーとのクインテットでプレイしたセッションは5枚の異なる録音となって残されている。彼は、50年代には、ユナイテッド・アーティスツ、リバーサイド、ABCパラマウントでレコーディングした。70年代に入るとソプラノ・サックスを演奏し始め、ソプラノ・サックスによる優れた録音をパブロ・レコードに残している。60年代以降は様々なレーベルで多くのレコーディングに参加している。

Jazzoot_zoot

Zoot   1956年10月12日録音

 

9:20 Special

The Man I Love

55th Street

The Blue Room

Gus's Blues

That Old Feeling

Bohemia After Dark

Woody'N You s

 

Gus Johnson(ds)

Johnny Williams(p)

Knobby Totah (b)

Zoot Sims(ts)  

 

ズート・シムズというプレイヤーは録音を通じての印象は好不調の波が少なく毎回安定したプレイをしている。それはそれで凄いことだと思う。ジャズというその場一発の即興演奏をウリとする音楽で、毎回いいフレーズが浮かんでくると限らない。しかも、録音してプレイが後世に残るわけで、人は前回の録音があれば、今回の録音は前回と比べてどうこう言ってくる。前回の録音が素晴らしければ、今回は当然のごとく、それ以上のものを期待する。前回と同じレベルでは期待外れと言われかねない。かくして、プレイヤーは過大なプレッシャーを抱え込んで録音に臨むとなれば、そこでコンスタントに毎回安定した結果を残すこと自体が、実は非凡な才能、あるいは隠れた努力の賜物と言っていいと思う。

ズート・シムズの場合は、そういう安定と裏腹にマンネリということを常に抱えていたと思う。例えば、ズートをこれから聴こうという人に、彼のおすすめ録音をというときに代表的なものをと思っても、結局どれも、そう変わらないということになってしまうのだ。それが、ズートの特徴でもあるのだが。へんな喩えだが、水戸黄門の一件落着と同じで、マンネリをひとつの藝にしてしまった、というものではないだろうか。

だから、彼の録音の違い、それに対する好き嫌いは、ズートのプレイもさることながら、サイドメンの顔ぶれと編成による変化によるところが大きいといえる。

この録音は、ズート・シムズにとっては初のリーダー・アルバムだったということだが、編成は、彼のテナーによるワン・ホーンの編成で『Down Home』と同じ形態となっている。ただ、メンバーの違いがでて、こちらの方が鋭い感じで、『Down Home』のようなズンチャッ!という感じがなく、より洗練された感じになっている。特にピアノの抜けがよくて、人によってはキンキンするように感じられなくもない。

さて、マンネリをひとつのウリにまでしているズートの特徴が顕著に表れているのが2曲目「The Man I Love」というスロー・ナンバーだ。ここでのズートのプレイは聴き手の感情移入を拒むかのようだ。嫋嫋としたところは微塵もなく、この辺りが、彼を男性的と評する人がいるが所以なのだろうけれど、ズートはメロディや音楽の形を厳格と言っていいほど守っている。それ以上にリズム感、全体の乗りをキープさせている。つまりは、スロー・ナンバーでも、歌い上げるということよも、安定した乗りで曲が前へ前へと進むことを大切にしている。それは、聴く者にとっては、演奏に部分的にのめり込んだりすることはなくて、音楽と一定の距離を保ちつつ、安定した乗りから生まれる心地よさを、それとなく享受している感じになる。かといって全く音楽から離れてしまうとことはなく、音楽との間に就かず離れずといっていい絶妙の距離感が生まれているということだ。だから、録音をエンドレスにして流しっ放しにしていてもいい。そこで、安定したズートのプレイはピッタリはまるというわけだ。

それはまた、ズートのアドリブにも言える。彼の即興には光るフレーズとか意外な展開とか、即興自体の切れ味で勝負するのではなく、即興が続いて全体として生み出される乗りに聴く人を巻き込んでいくような感じだ。だから、彼のフレーズはテーマの変奏のように聴こえる。そこで、部分的にフレーズに注目してしまうと、かえって聴く人の乗りが崩れてしまうのだ。だから、彼のサックスはブローすることは少なく、腹八分目という感じで余裕をもって軽く吹き流している。その真骨頂は1曲目の「9:20 Special」や「55th Street」「Bohemia After Dark」といったテンポのいいナンバーではないかと思います。

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