ウォーレン・バフェットの「株主への手紙」2014(18)
チャーリーが私をそこから助け出した
私の葉巻の吸いさし戦略は、小さな額の投資をやっている間は、うまく行っていました。本当のところ、私が1950年代に得たたくさんの一服は、私の10年間の、相対的でも絶対的でも投資パフォーマンスを良いものにしてくれました。
しかし、それでも、私は葉巻の吸いさしに対する例外をほんの少し作りました。その最も重要なものがガイコでした。1951年に後にこの会社のCEOとなるロリマー・ダビットソンと話し合ったおかげで、私はガイコが素晴らしい会社であることを学び、すぐに同社の株式に私の9,800ドルあった自己資金の65%をつぎ込みました。この頃の最初の頃の私の投資のもうけの大部分は、バーゲン価格で取引した平凡な会社への投資から得たものでした。ベン・グレアムから私に教えられた技術で、それは役に立ちました。
しかし、この方法の主な弱点が徐々に明らかになってきました。葉巻の吸いさし戦略の投資は点のような規模の小さいものには有効ですが、そこまでで、それ以上の規模の大きな多額の投資には通用しませんでした。
その上、安い価格で株を買うことのできるマイナービジネスの企業は短期的な投資案件としては魅力的ですが、それらの会社は規模の大きく永続的な事業を構築する基盤としては適当ではありません。結婚相手を選ぶときには、単にデートする相手を選ぶ場合よりも、あきらかに多くの大変な判断基準を必要とします。(バークシャーは高い満足のできる“デートの相手”でした。我々が株式に対するシーバリイ・スタントンの11.375ドルの申し出を受けていれば、BPLのバークシャーの投資に対する年間加重リターンの約40%になっていたでしょう)
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私が葉巻の吸いさし戦略を切り上げて、満足な利益を求めて大規模な合併ができる事業を構築するコースに乗り換えるためには、チャーリー・マンガーを連れてこなくてはなりませんでした。チャーリーは、私と同じように、今、私がいるところから数百フィートの圏内で育ち、若い頃は私の祖父の食料品店で働きました。
我々の年次総会に出席したことのある方ならば、チャーリーが幅広い視野や莫大な記憶力やしっかりとした意見を持っている人物であることはご承知のことと思います。私は必ずしも決断力のないほうではではないので、時に我々はぶつかり合うこともあります。我々の意見が異なる時、チャーリーは、いつもこう言って会話を打ち切ります。「ウォーレン、あなたは頭がよく、私は正しい。だからよく考えてみよう。きっと私に同意するよ」
ほとんどの皆さんがチャーリーが建築に情熱を持っていることはご存知ないでしょう。彼は(自給15ドルの)開業弁護士としてキャリアをスタートさせましたが、30歳のころ、彼が最初に実際に金を稼いだのはロサンゼルス近郊に5棟のアパートを設計・施工したことによるものでした。同時に、彼は55年後の現在も住んでいる家を設計しました。(私のように自分の環境に満足しているのであれば、彼はじっとしているでしょう。)近年、スタンフォードとミシガン大学の大規模な寮を設計し、今は、91歳で他の大きなプロジェクトに従事しています。
しかしながら、私から見れば、チャーリーの建築における最も重要な仕事は今日のバークシャーのデザインだったと思います。彼のつくった青写真はシンプルなものでした。「いい値段で公正な事業を購入することに関する知識を忘れて、そのかわりに公正な価格で素晴らしいビジネスを買いましょう」
自分自身のふるまいを変えることは容易ではありません。私は、ビジネス・スクールで1日も過ごしたことのない弁護士(私ですら3日は出席したというのに)の意見を聴くので、チャーリーの意見もなくて合理的な成功を甘受していました。しかし、チャーリーはビジネスについての格言を繰り返し、私に投資することを決して諦めませんでした。そして彼の論理は反駁できるものではありませんでした。したがって、バークシャーは彼の青写真によってつくられました。私の役割は、バークシャーの子会社のCEOに下請けとしての実務をやらせる総合指揮者でした。
忘れてはいけない1975年のワウムベックの買収のように時折、私が以前に逆戻りすることがなくもなかったけれど、1972年という年はバークシャーにとって転換点となる年でした。それから、ブルー・チップ・スタンプからシーズ・キャンディを購入する機会があり、チャーリーと私、そしてバークシャーは大きな賭けでありました。最終的にはバークシャーに合併されてしまいました。
シーズ・キンディーは西海岸では伝説的な箱入りチョコレートの製造販売業者でした。わずか800万ドルの固定資産を利用して年間400万ドルの税引き前利益を稼いでいました。その上、この会社は貸借対照表に表れてこない巨大な遺産を持っていました。それは市場価格を支配できるほどの広範囲で永続的な競争優位性でした。この強みは、確実に、時とともにシーズ・キャンディの利益を大きく成長させるものでした。さらに良いことには、ほんのわずかの追加投資で実現したのです。言い換えると、シーズ・キャンディはこれから数十年にわたり現金を噴出させるように生み出していくことを期待できるということです。
シーズ・キャンディを経営しているファミリーはこのビジネスに3000万ドル要求し、チャーリーはそれだけの価値があると正しく言ったのでした。しかし、私は2500万ドル以上は払いたいとは思わず、その数字にも心動かされませんでした。(3回提示された固定資産総額に私は息をのみました。)私は見当違いの注意によって、素晴らしいビジネスの購入を逃すところでした。しかし、幸運にも、売り手は我々の2500万ドルの提示額に応じる決定をしてくれました。
現在までに、シーズ・キャンディは19億ドルの税引き前利益をあげ、その成長にために要した追加投資はわずか4000万ドルでした。シーズ・キャンディは、このように、莫大な金額を分配することができ、それは、次にバークシャーが他の利益を生み出し分配してくれる会社を買収するときの大きな助けとなりました。(まるで、ウサギの繁殖を見ているようです。)活動の中でシーズ・キャンディを見ることを通して、私は多くの他の有益な投資に対して目を開かせた強力なブランドという価値についてビジネス教育をうけることが出来ました。
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