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2015年7月11日 (土)

ボッティチェリとルネサンス─フィレンツェの富と美(4)~第3章 富めるフィレンツェ

Bottimaria2_3この展覧会の企画の進め方、展示の方法論は、よく分かりません。フィレンツェが経済発展によって豊かになっていくのと、美術作品との関連性を明らかにするという意図ではないかと思うのですが、前章の展示は対外への市場開拓がすすむという方向性ですが、それが具体的に美術作品の傾向にどのように反映しているかということは、全く分かりませんでした。また、この章では、前章の市場開拓があった結果としてフィレンツェが富み栄えたということであれば、時系列が、前章の後になるはずで、展示される美術作品もそのような時系列に従うはずですが、そうでもありません。なにか、恣意的に展示がされているようです。いい加減、と私には思えます。こんなことをするならば、むしろ、各絵画作品を制作年代順に並べてくれたほうが、混乱しなくていいと思います。

さて、ここでの展示で見たいのは、フラ・アンジェリコの作品です。美術史の教科書の記述や、この展覧会の説明でもボッティチェリはアンジェリコの後任としてメディチ家の後援を受けるようになったということがあったことから、前時代の人というイメージを持っていました。しかし、実際の作品を見ると、アンジェリコの作品の方が、ボッティチェリの作品に比べ、親しみやすい、言うなれば近代的な感性が見えてくるように思えました。ほんとに小さな作品がわずか2点しかありませんが。

『聖母マリアの埋葬』という細長い作品。小さな作品ですが精緻に描き込まれています。シンプルな構成で、中心に横たわる聖母マリアの左右に会葬者が横並びになって、それぞれの表情がみえるというものです。そのために横長の板に描かれているのでしょうか。しかし、その単純な画面でも、視点がはっきりしていて、それは神のような超越的なものではなく、分散した複眼的なものでもなく、人がそこに立って見ているような、一点からの視界として描かれています。具体的に言えば、真ん中のマリアを中心に、そこに消失点を設定した遠近法という構成です。つまり、この画面は平面ではなくて、空間が設定されているということです。そういう空間にいるからこそ、居並んだ人々の様々な表情がリアルに見えてきて、そのどれかに感情移入することも可能になってくるのです。中心から向かって右側の、手を合わさずに横を向いている男性や、その右隣の手を合わせてはいるものの、あらぬ方向を見上げている男性といった描き分けは、微笑ましさを誘います。ベタベタ貼り付けられた金箔は視線を遮るようで邪魔ですが、それをないものとして画面を見ていくと、聖母の葬式の厳かさだけでなく、葬儀に参列する人々が生き生きと描かれているのが分かります。

Bottimaria1_4『聖母マリアの結婚』という作品は、上記の『聖母マリアの埋葬』と対のように展示されていました。作品のサイズも同じで、画面構成も同じようなものです。こちらは、背後に建物があって、定規で線引きした図面のようなところはありますが、しっかり建物としての重量感があり、空間に存在しています。その意味では、前章でボッティチェリとダ=ヴィンチを比較しましたが、アンジェリコはダ=ヴィンチの側にいる画家であることが、はっきりと分かります。その中で、明るい色遣いが生きてくる。ボッティチェリのように色彩が浮いていないで、画面の中に納まっています。列席している人々は、埋葬の時とは違って、おめでたい席でもあることから、表情のバリエーションが豊かです。そこに、ボッティチェリにないヒューマニスティックとでも言ってもいいような、存在感のある人々が描き分けられています。

アンジェリコの作品というと、教科書などで『受胎告知』を目にしたことがありましたが、それ以外の作品は、初めてみたような気がします。

 

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