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2015年8月26日 (水)

ジャズを聴く(33)~アート・ファーマー「Modern Art」

その形成期に大部分が見落とされてしまって、アート・ファーマーのコンスタントで創意に富んだ演奏は、彼が成長し続けるにつれてようやくその評価が大きくなっていった。クラーク・テリーと共にブラス奏者の間にフリューゲルホーンを一般化させるのに大きな貢献を果たした。彼の持つ抒情性はバップに根差したスタイルに個性を与えている。ファーマーはトランペットに定着する前には、ピアノ、バイオリン、チューバを学んでいる。1945年からロサンゼルスで演奏活動を始め、セントラル・アベニューで定期的に、特にジョニー・オーティス、ジェイ・マクシャン、ロイ・ポーター、ベニー・カーター、ジェラルド・ウィルソンのバンドとプレイした。時には双子のベーシストのアディソンとも一緒だった。1951~52年にワーデル・グレーとプレイした後に、ライオネル・ハンプトンの楽団と1953年にヨーロッパをツアーし、その後ニュー・ヨークに来ると、1954~56年にジジ・グライス、1956~58年にホレス・シルバーのカルテット、1958~59年にジェリー・マリガンのカルテットでプレイした。1950年代後半には多くのレコーディングに参加している。中にはクインシー・ジョンズやジョージ・ラッセルやブレステイジ・レーベルでのジャム・セッションもあった。1959~62年にはベニー・ゴルソンとジャズテットを結成し、1962~64年にはジム・ホールとグループを作った。1968年にはウィーンに移り、オーストリア放送楽団に加入し、ケニー・クラークとフランシー・ボーランのビックバンド、自身のユニットで現地ツアーを行った。1980年代以降、ファーマーはアメリカを訪れ、現代まで売れっ子でいる。彼は、様々なレーベルに多くのセッションを録音している。

Jazfarmar_modern

Modern Art    1958年3月録音

Mox Nix

Fair Weather

Darn That Dream

Touch of Your Lips

Jubilation

Like Someone in Love

I Love You

Cold Breeze

 

Addison Farmer(b)

Art Farmer(tp)

Benny Golson(ts)

Bill Evans (p)

Dave Bailey(ds)

 

ジャズの名盤案内などでは、アート・ファーマーというと、まず紹介される一般的には彼の代表作。アート・ファーマーが1958年に録音したアルバム。当時の時代はハード・バップが盛んだった時で、ファーマーも、そういう状況の中でハード・バッパーとして売り出していた時期だった。でも、テクニックではクリフォード・ブラウンに及ばず、リリカルなプレイではマイルス・デイビスのようにクールにできない。言ってみれば中途半端だった。しかし、それは悪いことではなく、その中途半端さがファーマーの個性として結実したのがこのアルバムと言える。後のアルバムでは持ち味を最大限に生かしたリリカルな演奏を追求する彼が、この時点では、その道を見出すに至っていなくて模索していた形跡がある。例えば、後には演らないようなホットなプレイが見られる。後にそれなりに洗練されていくが、ここでは元々の不器用さがそのまま出ていて、その訥々としたところが、後年にない味わいを時折垣間見せるものとなっている。その辺りが、ハード・バップの好きなジャズ・ファンには受け容れ易かったのでないか。

ファーマーは、一時期、テナー・サックス奏者でもある編曲家のベニー・ゴルソンとジャズテットというグループを組んで活動したが、このアルバムはそれに先駆けたものとなった。ゴルソンのサックス・プレイは横の流れを重視したもので、人によってはメリハリがないと好き嫌いが分かれる人ではあるが、ファーマーのどちらかという控え目なプレイを邪魔することがなかったため、双頭コンポとして協調的なプレイを続けていたと言われる。また、ビル・エヴァンスが、ちょうどマイルス・デイビスのもとで“Kind of Blue”のレコーディングに参加する直前状態でプレイしている。ここでは、後年のエヴァンスらしいプレイは未だ見られないけれど。1曲目の「Mox Nix」のピアノのイントロがユニークで、スィングしながらコードを崩した装飾的な響きは、後年のエヴァンスにつながるような印象的なプレイで始まる。ここからファーマーのトランペットとゴルソンのテナーがマイナーなテーマをユニゾンで入ってきて、ファーマー、ゴルソンの順にソロをとっていく。ここで活躍しているのはドラムス、シンバルが全体を煽り気味にリズムを引っ張っている。そこでのファーマーのプレイは、後年のメロディを歌わせるというよりは、バップの分析的な細かいフレーズを訥々と吹いている感じが、これが妙に味わい深い。これは、続くゴルソンが逆にメリハリのないほど滑らかに吹くことで、ファーマーのプレイを結果的に補うような効果を上げることで、その特徴が引き立てられたと言える。この曲と2曲目は入りのピアノのユニークさが特徴的だが、あとは典型的なマイナーのバップのナンバーで、それを味わい深くプレイしている。3曲目の「Darn That Dream」がスローなナンバーで、ファーマーのリリカルなプレイが、この辺りから表われてくる。このナンバーにおけるファーマーの淡々とメロディを吹くプレイは、抑え気味でシンプルすぎるところに、行間の想像を促すような余韻を生んでいる。それが、ファーマーの抒情性の特徴だろう。このアルバムでは、後年の吹っ切れたように抒情性を追求していくだけではなく、1曲目のようなハード・バップのジャズのプレイも行っている。それを後年の吹っ切れたような作品から見れば中途半端に姿勢に映る。しかし、どちらにも共通しているのは、絶対に手を抜かない丁寧で誠実なファーマーの姿勢であり、それが味わい深いものに結実していると思う。

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