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2015年8月28日 (金)

ジャズを聴く(35)~アート・ファーマー「The Summer Knows」

Jazfarmar_summerThe Summer Knoows    1976年録音

The Summer Knows

Manhã Do Carnaval

Alfie

When I Fall In Love

Ditty

I Should Care

 

Sam Jones(b)

Billy Higgins(ds)

Art Farmer(tp)

Cedar Walton(p)

 

アート・ファーマーが全編でフリューゲル・ホーンを持って、自身の持つリリカルな特徴を前面に打ち出した作品。人気スタンダードのバラードやスロー・ナンバーを並べ、ワン・ホーンでメロディを歌う。とはいっても、ジャケットの少女趣味のセンチメンタルなムードに流れることはない。そこにファーマーのリリシズムの特徴がある。ファーマーは自己のエモーションをストレートに表出することはせずに、それをいかにコントロールして印象的な響きに結びつけるかに腐心している。自己抑制の姿勢はクールなプレイとなって結実する。だからこそ、これ見よがしにビブラートをかけてみたり、音色に変化をつけてみたりといった余計な装飾をつけず、シンプルな美しさで勝負している。表現を抑えることで、余韻がうまれ、言わば行間を想像させるのである。言うなれば抑制の美。そこに、ファーマーの真摯さがあり、聴く者に品格すら感じさせるものとなっている。

1曲目の「The Summer Knows」は、ちょっとベタな感傷的なメロディを、フリューゲル・ホーンの柔らかなトーンを生かして、クールにメロディを吹いている。ここでの、ファーマーは、フレーズのちょっとした間の取り方が絶妙で、わずかな間が聴く人をググッと引き寄せ、しみじみとした余韻を生み出している。このメロディを何度も繰り返すが、時に即興的なフレーズがメロディから流れように続けて挿入される。この即興が短いながら無機的といえるほどクールで、テーマのもつ感傷的なものに対して中和作用の効果をだして、感傷に没入する歯止めになっている。それが、聴く人に対して、演奏との間にほどよい距離感を与えていて、その距離感があってはじめて余韻を感じることができる。さして、バックのリズム・セクションが渋く堅実なリズムが、メリハリを与え演奏をキリッとしたものにしている。これが、2曲目の「Manhã Do Carnaval」では、テンポが上がりボサノバ調のハードめの演奏に違和感なく続く。ファーマーは、今度はエッジの立った、切り込みの鋭い音で、控え目ながらもホットなブロウを繰り広げている。リズムが煽ることはないが、決してムード・ミュージックではなく、ジャズを演奏している、と襟を正すものとなっている。ここから、間断することなくピアノの印象的なイントロから3曲目の「Alfie」にぐっとテンポを落として、ファーマーのフリューゲルホーンが歌い出すところが、このアルバムの中でも白眉と言えるのではないか。ファーマーは過去に、スティーブ・キューンとかビル・エバンスのような抒情的な持ち味のピアニスト組んで良い演奏を残しているが、この曲でのピアノは彼らに似た抒情的なテイストを持っている。ファーマーがうまく引き出したのか。また、ベースのアコースティックの弾むような弾力性の高い伸びる音が時折印象的で、ファーマーが上手くバックを生かして、全体として、ファーマーのフリューゲルホーンがバックと一体となって、厚みのある音楽を作り出している。

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