ジャズを聴く(29)~ブッカー・アーヴィン「ザ・ブック・クックス」
The Book Cooks 1960年6月録音
Blue Book
Git It
Little Jane
Book Cooks
Largo
Poor Butterfly
Tommy Turrentine (tp)
Booker Ervin (ts)
Zoot Sims (ts)
Tommy Flanagan (p)
George Tucker (b)
Dannie Richmond (d)
ブッカー・アーヴィンの初のリーダー・アルバムで、編成がピアノ・トリオのリズム・セクションにもう1本のテナー・サックスとトランペットという6人編成。ここでのアーヴィンは部分的には特徴を出しているが、全体として窮屈な印象を受ける。ただ、メンバーは手練れの人たちなので、演奏はまとまっているので聞きにくいということはない。聴き方によっては、全体のバランスとよく、まとまっているし、凝縮されたアーヴィンのプレイ自体は充実している。ただし、延々と垂れ流すようにプレイが続くことによって、諄いという特徴が際立ってくるので、そこまで行っていない。だからアーヴィンの諄いプレイが好きで、堪能したいという人には、物足りないかもしれない。
アルバム冒頭で、何も聞こえてこないと耳をそばだてていると、ベースのイントロから始まる。耳が慣れれば、ベース自体は強い音で腹に響いてくるようではある。その後で、3管によるテーマが提示されるのだが。このベースの始まりが喩えていえば、地を這って来るような印象で、テーマがブルージーな雰囲気を湛えているので、最初からアーシー(泥臭い)世界が始まる。この後にピアノのソロは、この雰囲気を壊さずに、しかも落ち着いた(沈んだ)ものにさせているため、ベースのイントロから重さを引きずり、続くトランペットのソロがフリーキーな要素を交えつつ荒っぽいプレーをしている。それが、この曲のアーシーで重い雰囲気に妙に合っている。実際、この曲ではプレイの時間もそうだが、トランペットが最も印象的。その後のサックスはアーヴィンのプレイではなく、続いて2本のサックスの掛け合いに入り3本のユニゾンでテーマに戻る。演奏としては、メンバー全員がアーヴィンをバックアップして彼独特の雰囲気を盛りたてようというものとなっているので、アーヴィンの世界という点では個性が鮮明に感じられる。しかし、アーヴィンのプレイの諄さ、飽きるほどのしつこさまで行かない。これはアルバム全体の他の曲の演奏にも言えることで、2曲目の「Git It」でも、ユニゾンによるテーマに続くのは、ズート・シムズのソロで、その後にようやくアーヴィンのソロが続くのだけれど、特徴的な抑揚を排した音を長く伸ばすようなフレーズが出てくる、曲はアーヴィンのオリジナルだけあって、曲調にハマったものになっているけれど、プレイ時間はそれほど長くはなく、途中から2本の絡みになって終わってしまう。4曲目の「Book Cooks」でようやくアーヴィンのソロが長く展開されるけれど、もう一人のサックスとの絡み(バトル!)の方が中心となっている。最後の「Poor Butterfly」はスタンダード曲で佳演と言えるもの。
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