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2016年1月23日 (土)

恒例N社の説明会の印象

また、ある関係者の厚意により、N社の決算説明会に行ってきました。第3四半期の決算です。アメリカで金利の引き上げがあったり、中国の経済成長が失速してきたり、原油価格が低迷したりと、最近は株価が世界的に暴落してしまったりと、このような景気の先行きがどうなのか、いいのか悪いのか、どっちなのか?という状況で、オピニオン・リーダー的な経営者でもある、この会社の社長の話を、こういう時こそ聞きたいと思いました。

N社の第3四半期までの業績は全体としては順調(この会社の場合は高い成長率を続けているので、他の会社であれば、特筆すべき好業績になると思うのですが)ということでした。ただし、一部で中国市場の不景気とスマートフォンの頭打ちで、それに関係した製品の業績が落ち込んだようです。これは、新聞等で連日話題とされるとつながるので納得です。他の部門の好調が、これを補って、全体としては順調ということだったようです。説明会では、こころなしか、いつも元気のいい社長の口調に迫力を感じられなかったのです(私だけがそう感じたのかもしれませんが)。そう感じたことから、これらの2部門のことに触れたくない、それでか、第3四半期の単期業績については、ほとんど触れようとしなかった。そんなことを気にしているのは、私だけかもしれません。で、説明の大半は中長期的な経営戦略で、その説明はとても興味深いものだったのはたしかだけれど、あえて、そちらの話題に逃げたと、私には思えてしまったので。しかも、説明はすぐに終わって、今までの説明会では社長さんの強い自信に圧倒されていたのですが、今回は、それが薄まった印象です。好意的にみれば、目先の業績よりも、先行きの戦略の方について、むしろ、このような時だから語りたいという、という見方も可能です。だから、私の印象は一面的かもしれません。

ただし、中長期の説明は、とても興味深いものでした。社長さんは、現在が技術の大きな転換期にあると言います。この時に新たな技術による製造の変化によって新たな部品、素材、製造装置の市場を切り開く余地が急激にひろがっていると言うのです。だから、この機にあらたな視点での素材、部品、製造プロセスのありかたを創り出すことによって先取り特権のシェアを占めることができる、というわけです。例えば、プロセッサーをいち早く市場投入し、パソコンのキーデバイスになって、パソコン市場を支配したインテルのようなチャンスが、今、開けようとしているのです。かつて、日本の電機メーカーや機械メーカーは、既存の製品を低価格、高品質で提供することにより、世界的な競争に打ち勝って成長しました。しかし、中国や韓国といった新興国のメーカーとの価格競争に負けてしまいました。それでは、と新たな製品を開発しましたが、それについても、またたく間に新興国に追いつかれて、価格競争となってしまいました。その場合の新製品というのは、実は既存の製品の枠組みの中での新しいバージョンというのか、性能を高いものにしたり、オマケのような付加価値を加えたり、というものだったと思います。これに対して、今は、そのような既存の枠組みそのものが変わろうとしている。そのようなことを、社長さんは話していました。例えば、自動車の世界での自動運転に象徴されるシステム、燃料電池やPHVの制御などでは、今までにないセンサや様々な制御機構が多数車載される。そのような自動車は、もはや、それまでの自動車とは別のものになってしまいます。実際、自動運転で目的に運んでくれるということになれば、今までの自動車の売りであった、スピードとか加速とか運動性といったことで自動車が選ばれることはなくなります。そうであれば、エンジンの性能を上げることに意味があるでしょうか。その代わりに、自動車には、さまざまな制御や制御のためのセンサ、そして、それらをコントロールするシステムを多数搭載することになります。しかも、たんに機械的というのではダメで、人が安全で快適に移動できるように、気まぐれに対応して、突然の危険を避けるために極めて曖昧なところで統一的に動くことができる、人と機械のあいのこのようなシステム、ロボットのようなものになっていくということになると言います。そういうものに対応するものを作る。そのためには、従来の技術の発想では対処できないというのです。例えば、部品を作るという従来のものづくりから、その部品が機能するシステムを提供する。そして、それらを統合的にコントロールするシステム。その技術を開発したというだけではだめで、それが製品として普及しなければならないので、画期的技術であることに加えて、大量生産できなければ意味がないのです。もし、そのシステムを自動車に組み込むのであれば、それらの細々としたシステムを、自動車の大量生産と同じスピードで、コストや製造の手間をかけないで、また、製造後のメンテナンスを容易にすることができなければなりません。だから、新たな技術を開発するだけでなく、そのような新技術を低コストで大量に生産する生産技術(従来の製造ラインでは生産に多大な手間がかかるだろうから)までふくめて、全部開発しなければならないのです。具体的には、従来では制御機構というのは制御装置というハードで制御していたのが、ソフトがそれに取って替わるということ。制御装置と言うハードは、可視化されているもので標準化ができるためコモデティ化し、(つまり、他社が容易に真似できてしまう)他社が参入し価格競争に巻き込まれることになってしまう。しかし、ソフトであれば、ブラックボックスにできるので、他社が真似できないので、価格競争になる可能性が低くなるといのです。このような分野は、ほかにLOTだったり、ロボティックスだったり、ALだったりとする。さこで、他社、そして、新興国メーカーが追いつくことの出来なくなるわけです。

つまりは、社長さんの言うことが、現実におこっているのであれば、日本の他の電子部品メーカーや素材メーカー、そして産業機械(ロボット)のメーカーにとっては、千載一遇のチャンスにあるということになるのです。またそのような生産工程となれば、生産ラインを低賃金の海外に置く必要はなくなり、日本国内に置く方が有利になってくるのではないか、と思いました。その意味では、希望を持たせてくれたことは確か。そういう点で、経営者は人々に希望を与えることができる人だ、というのを社長さんは示してくれた。そういう説明会でした。

しかし、最初に言いましたが、気になるところもあるのです。

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