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2016年1月 4日 (月)

最近の各社のコーポレートガバナンス報告書を見た感想

12月いっぱいで、6月に株主総会を開催した上場企業のコーポレートガバナンス・コードに対応したコーポレートガバナンス報告書の提出期限となりました。つまり、各社のコーポレートガバナンス・コード対応による報告書が出揃ったことになります。ちょうど年末年始の休みがあったので、その時間をつかって、それらの報告書をできるだけ見てみました。それらを見て全体としての私的な感想を少し述べようと思います。そこには何となく違和感を持ったということを最初に明らかにしておきましょう。それは、コードに対する私の認識が大勢とはズレているというのか、それとも各社とも現時点において現実的な限界を無意識なのか意識してなのか、見えない枠のなかにとどまってしまったということなのか、何とも言えません。そこで、そもそも、コードの目的はなんだったのか、ということから考えてみます。簡単に言うと、コーポレートガバナンス・コードは政府の企業活性化策の一環とか伊藤レポートの精神の具体化とかと言ってもよいでしょうが、企業に中長期的な投資を呼び込んで、経営者が先を見越してアグレッシブな経営ができる環境にしようというものだったのではないかと思っています。とくに海外の中長期的な投資を呼び込む際にネックになっているのが、ガバナンスの問題、つまり、日本の経営者は株主の方を向いた経営をしないということでした。それを払拭するためにどうするかということで、その機会としての報告書があった、というのが私のコーポレートガバナンス・コードの捉え方です。実際に、このような説明をした論者や機関投資家を何人も目にしました。だからこそ、ここでIR担当者や経営者は、これをいい手段として投資家に投資先として興味を引いたり、投資意欲を掻き立てさせるアピールできる絶好のチャンスと考えることができるはずなのです。しかし、実際のコーポレートガバナンス報告書を見ると、そう感じられるものは、私の見た限りありませんでした。例えば、コーポレートガバナンスの方針とか、サスティナビリティとか取締役の選任基準とか報酬の考え方とか、それぞれがガバナンスの重要な要素として各個の説明は通り一遍には為されているけれど、どうしてそのような方針を採ったのかという理由とか経営者の考えとか、そういう方針を採ったことによって今後の経営はどのようになっていくのかといった説明にふれることはありませんでした。実は、投資する側が一番聴きたいのは、そういう話ではなかったのか。つまり、その企業の経営から、最終的に株主にとってメリットを生む筋道のようなことです。ガバナンスとは、そのための手段で、手段だけ諄々と説明されても、肝心の目的が見えてこなければ意味がないのではないか、と思いました。そのようなものでなければ、コーポレートガバナンス報告書を読んだ投資家、その企業に対して投資対象として興味を持つということは起こらないのではないでしょうか。そうであれば、そもそもの、このコーポレートガバナンス・コードの目的から外れてしまっているのではないか、と感じたのが、私の違和感です。ただし、このような感想に果たして、経営の側からも、投資の側からも、現実性があるのかは分からないことですが。

ちなみに、私であれば、こういう報告書ならば興味をおこす可能性があるかもしれないという一種サンプルをこちらにつくってみました。このような形の報告書を届けた企業のないので。現実味はないのかもしれませんが。

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