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2016年2月 1日 (月)

プラド美術館展─スペイン宮廷 美への情熱(2)~Ⅰ.中世後期と初期ルネサンス

Pradomemu ハンス・メムリンクの「聖母子と二人の天使」という作品です。この年代の展示物のメダマは、ヒエロニムス・ボスなのでしょうが、展示されていたのは知られた作品の縮小コピーのようなもので、ボスの迫力のひとつの源泉である大画面で迫ってくることと執拗に細部にこだわるといった一種の病的なところがなくて、拍子抜けしたように感じられて、むしろボスのイメージがダウンしてしまう印象でした。その手前に小さくひっそりとありました。調べてみると、メムリンクという画家は15世紀のフランドルの画家だそうです。ルネサンスというよりは中世の礼拝画のような形式的な型に嵌まった構図ですが、とりあえず中心の聖母子や天使は措いといても、背景の中に描かれている花々や木の茂みの細密さに引き寄せられました。花の場合は画面左の天使が持っている百合のようにアトリビュートとして何らかのシンボルとしての意味合いがあるので、ある程度のスポットライトが当てられるのでしょうが、例えば聖母子の足元の草の葉の一葉の描き込みはどこまでなのでしょうか。また、背景に点在している流木の葉の一葉は奥のほうにいたるまでです。その細かさが、中心の聖母子がサラリとした感じで、決して生気がないとか、明らかに手を抜いているというのではないのでしょうが、静かで濃くない描かれ方に対して、明らかに濃いのです。しかし、不思議なことに、それが画面内の聖母子を蔑ろにして、前面にしゃしゃり出ることにはなっていない。それが収まるところに収まって、聖母子の静けさや穏やかさを巧みに引き立てているのです。そのバランス感覚が絶妙なのです。それは、多分は統一感のある色遣いで花や葉を細かく描きこんでも色調を抑えて目立たせないようにしているのと、背景でも石造の建物は大雑把に、形態もリアルにしていないというような描き込みの濃淡を使い分けていることなどが原因していると思います。それらをうまく構成させているのは、この画家のセンスが卓越しているということでしょう。

Pradodav ヘラルト・ダーフィットの「聖母子と天使たち」を見てみましょう。画家のヘラルト・ダーフィットはメムリンクと同じフランドルの画家で、オランダの画家の組合で、そのメムリンクの死後、彼を引き継いだ人だそうです。メムリンクに比べると聖母の顔は、肉付きがよくて顔色などに甘美さがあって、少し肉感的な感じ、あるいは母親としての成熟した感じが強くなっています。それだけ、人物の描き方に写実的な要素が強くなってきています。私の好みからすれば、その写実的なところが、作品や主題とバランスが取れていないように感じられるところがあります。しかし、その一方で、ダーフィットもメムリンクに負けずに細部の描き込みが好きなようです。とくに、聖母に王冠を被せようとしている二人の天使の描き込みが細かい。天使の羽の一枚の描き込みはメムリンクの描く天子の羽と比べて見てください。ダーフィットの天使は羽根の付け根の部分が筋肉が盛り上がって肉厚になっていて、羽根を羽ばたかせて実際に飛べそうな感じがします。そのように、細密さにリアルさが混入してきて、天使や聖母子の表情や雰囲気と少し齟齬感が生まれているように見えます。メムリンクの作品の約30年後に描かれた作品のようですが、メムリンクの作品にあるような絶妙のバランスによる安定した穏やかで静かな雰囲気から、なんとなく裂け目が生じているような、様式的なパターンに収まりきれず、何かがはみ出してきているような感じ、それが微かにではありますが画面全体に生々しさというのか動きを生んでいるように見えます。同じフランドルで、わずかな時間の隔たりが、大きな変化を生んでいたことが、この両作品を見ていると、実感できるような気がします。ダーフィットの作品では、背景が描かれていませんが、ここにリアルに歩み寄ったような背景が描かれたとしたら、バランスを保てなくなってしまうおそれが大きく、画家は描けなかったのかもしれないなどと想像させるところがあります。

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