ウォーレン・バフェットの「株主への手紙」2015(6)
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今年は選挙があり、候補者たちは我が国の問題(もちろん、彼らだけが解決できることですが)について話すことを止められません。このドラムビートのような否定的な言葉の連呼の結果、多くのアメリカ人は、今、自分たちと同じように子供の世代も生きるのがたいへんになっていくだろうと考えるようになってしまっています。
その見解は誤りです。今日、アメリカで生まれている赤ちゃんは、史上、最も幸せです。
今のアメリカの1人あたりのGDPは約56,000ドルです。これは、昨年、私が言及したように、私が生まれた1930年代の6倍前後で、私の両親やその世代が夢にも考えなかった大きな飛躍です。アメリカ市民は、今日、本質的に知的でもなく、1930年代の人々ほど勤勉でもありません。かえって、我々はずっと効率的に働き、それによってはるかに多くの生産をすることができます。アメリカ経済の魔力は健在でうまくいっています。
一部の解説者は我々の実質国民総生産の成長率が年間2%であるのを嘆いて見せます。そして、我々はみんな、より高い成長率を見たがります。しかし、この非常に嘆かれている2%という数字を使って、ある単純な計算をしてみましょう。すると、その率は仰天するほどの成長をもたらすのを見ることができるのです。
アメリカの人口は年間で約0.8%増加しています(国内での出生と死亡の差0.5%と移民による0.3%)。このように全体的な成長の2%は1人当たり約1.2%の成長を生み出しています。それは印象的でないかもしれません。しかし、ひとつの世代、言わば25年で、この成長率は1人当たり実質国民総生産の34.4%を生み出すことになります。(様々な要因が重なることで、単に1.2%を25倍することによって算出される結果のパーセンテージを超えてしまうでしょう)次に、この34.4%の成長は次の世代のために1人当たり実質国民総生産を19,000ドルという驚異的な結果を生みます。今日の政治家たちは明日の子供たちのために涙を流す必要はありません。
本当に、今日の子供たちはよくなっています。私の近所の中の上の階層のすべての家族は私が生まれたときにジュン・D・ロックフェラー卿が過ごしていたよりも標準的に快適な生活をおくっています。彼の比類のない富をもってしても、いくつかを具体的に名指しすれば、流通、エンターテイメント、通信、医療サービスといった分野を問わず、我々が今日当然のことと思っているものを手に入れることはできません。たしかに、ロックフェラーには力と名声がありました。しかしながら、彼は、今の私の隣人と同じように快適な生活をすごすことはできませんでした。
次世代で共有されるパイは今よりずっと大きくなるのでしょうが、その分け前をどのようにするかという方法については激しい議論が続いています。ちょうど今起こっているのは、製品やサービスの生産が増加しているをめぐっての奪い合いになっています。現役の人々と退職者との間で、健常者と障害者との間で、相続人とホレイショ・アルジャーの小説に出てくるようなアメリカンドリームの成功者との間で、当しかと労働者との間で、とりわけ、市場で高い評価を受ける才能に恵まれた者と市場が重視する技量を欠きながらも平凡で礼儀正しく勤勉な人々との間で。このような種類の衝突は、我々の間で永遠に続くものです。議会は戦場で、お金と票が武器になります。ロビイングは成長産業であり続けるのです。
しかし、よい知らせは、これらの争いの敗者となった側でさえも、そう思えば、過去に受けたよりも、ずっと多くの商品とサービスを将来には間違いなく享受することができるということです。彼らが受ける助成金は量も質も劇的によくなりました。人々が求めるものを生産するということにおいて市場システム以上のものはなく、同様に、人々自身が欲しいと分からないものでさえ提供できるのは市場システム以外にありません。若い頃、私の両親はテレビというものを想像することはできなかったし、私も50代でパソコンを必要とするとは思いもよりませんでした。二つの製品は、一度それらが何ができるかを人々が分かると、人々の人生に革命を起こしました。私は、今、毎週10時間をオンライン・ブリッジに費やしています。そして、私がこの手紙を書いているとき、検索を重宝しています。(しかし、私はTinderを使う準備ができていません)
240年の間、アメリカに対抗するのは間違いで、そうしていれば今という時は始まらないでしょう。商業と革新のアメリカの金の鵞鳥は、たくさんの大きな卵を産み続けます。
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