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2016年3月28日 (月)

ウォーレン・バフェットの「株主への手紙」2015(16)

重要なリスク

我々は、すべての株式会社と同じように、SECから我々の10-K(有価証券報告書)に毎年“リスク要因”の一覧表を作ることを要求されます。しかしながら、私は10-Kの“リスク”項目を読んで、ビジネスを評価する助けになった記憶がありません。確認されたリスクは本当でないから、ということではありません。しかし、本当に重要にリスクは通常よく知られています。それ以上に、10-Kのリスク一覧は評価のたすけとはなりません。(1)脅威が実際に発生する可能性、(2)それが発生したときのコストの幅、そして(3)その損失の発生するタイミング。今から50年に表われる脅威は社会にとって問題になるでしょう。しかし、今日の投資家にとってのファイナンスの問題にはなりません。

バークシャーは私の知るどんな会社より多くの業界で事業展開しています。我々の仕事は可能性のある問題とその機会を数え上げることです。リストを作ることはたやすいのですが、評価することは大変です。私、チャーリー、そしてそれぞれのCEOたちはこれらの可能性から生じる見込み、タイミングそしてコスト(利益)の計算の主要な方法について、しばしば意見が分かれます。

いくつか例をあげてみましょう。明白な脅威から始めますと、BNSFは他の鉄道会社のリスクに加えて、次の10年間で石炭輸送の契約を失うことは確実です。将来のことで何点か、私の考えでは長期的視点ではないのだけれど、自動運転の自動車の出現によりGEICO割り増し契約は縮小するかもしれません。この開発は同じように我々の自動車ディーラーに損害を与えることになるでしょう。我々の印刷した新聞の発行部数は減少し続けており、これは買収した時に考慮に入れていたことです。再生可能エネルギーは我々の公益事業を助けますが、とくに蓄電能力が改善されれば、変化するかのうせいがあります。オンラインの個人向け販売のビジネスモデルは我々の小売業にとっての大きな脅威であり、消費者ブランドにとっては気がかりです。これらの潜在的な脅威は我々が直面している可能性のごく一部にすぎません。しかし、ビジネス・ニュースにあまり注意していない人でも、ずっと前から気づいていることです。

しかし、これら問題のどれもがバークシャーの長期的な先行きについて重要ではありません。我々が1965年に、この会社を買収したとき、そのリスクはたった一つの文章で表わすことができました。“我々の資本をすべて投下していね北部の織物産業は損失を繰り返し、ついには消滅するでしょう。”しかし、開発は警鐘ではありませんでした。我々は単に適応しただけです。そして、今後も続けていくでしょう。

毎日、バークシャーのマネージャーたちは常に変化する世界で、どのようにして競争で優位にたつかを考えています。チャーリーと私は資金の安定した流れをどこに展開させるに注意しています。その点で、我々は業界の選択肢に強い制約を受けている企業に対して利点があります。私は先ほど項目別にあげた逆境に見舞われるかもしれませんが、バークシャーには、そういうものを苦労してはね返す資金と才能と文化あると思います。その結果として、さらなる収益力を身につけことのできるものです。

しかしながら、チャーリーも私も無力でしかないバークシャーへの脅威で現在もありますし、未来永劫にわたり存在するものが明らかにひとつあります。そのバークシャーへの脅威とは、また、我々一般市民が直面する脅威でもあります。それは、アメリカ合衆国へのサイバー攻撃、生物兵器、核兵器、化学兵器による攻撃が侵略者によって定義された“成功”することです。これは、バークシャーがアメリカのすべてのビジネスと共有するリスクです。

いずれの年でも、そのような大規模な破壊が起こる確率は極めて小さいものです。アメリカ合衆国が最初に原子爆弾を投下したという記事をワシントン・ポスト紙で読んでから70年以上経っています。その後、危機一髪の事態が数回ありましたが、破壊的な破滅は避けられています。我々は政府と、そして幸運に感謝することでしょう。

それにもかかわらず、長い目でみれば、短期的にはわずかな可能性が確実になってくるでしょう。(いずれの年でも事態が30回にたった1回おこるチャンスがあるとすると、少なくとも今世紀に起こる見込みは96.6%になります。)さらなる悪い知らせは、わが国に対して最大のダメージを課したいと思っている人々、組織、そして多分国家さえもあるということです。このようなことをするための手段は、私が生きてきたうちでも指数関数的に増加しました。“革新”には暗い面があるのです。

アメリカの会社や投資家はこのようなリスクから逃れる方法がありません。大規模な惨状に至る事態がアメリカで起こったとすれば、すべての株式投資の価値は間違いなく崩壊します。

誰も「その翌日」がどのように見えるか分かりません。しかしながら、私はアインシュタインの1949年の評が未だに適切であると思います。「私は第三次世界大戦がどのような武器で戦われるか分からないが、第四次世界大戦は棒と石で戦われるだろう」

 

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我々は今年の株主総会で気候変動を考慮した議案を提起するので、このセクションを書いています。後援者は我々に気候変動が保険事業に及ぼす危険について報告し、このような脅威に対して我々がどのように対処していくか説明することを求めています。

気候変動が、この惑星に大きな問題を引き起こす可能性は高いと思います。私は「確実」といわずに「可能性が高い」と言いました。これは科学的な根拠を持っていないからで、かつての2000年問題に対する「専門家」のひどい予測を覚えているからです。しかしながら、もし、結果として事態がほとんど確実で、迅速な行動により危険をさける可能性がほんの少しでも残されているならば、私にも誰にでも、この次の巨大な損害の発生に対して100%確実であるという証明を求めるのは愚かなことです。

この問題は、神の存在についてのパスカルの賭けによく似ています。パスカルは神が存在するということにわずかしか可能性がないとしても、信仰の欠如が永遠の悲惨を招くリスクに対して見返りが莫大であるのだから、人は神が存在するかのように行動すべきだと主張しました。それを思い出しました。同じように、この惑星が災害に向かっているということのたった1%でも可能性があり、遅れは後に引けない段階を過ぎてしまったことを意味しているのであれば、今、何もしないことは愚かなことです。これをノアの法と呼んでください。箱舟が生き残るために不可欠であるならば、たとえ、空に雨雲が現われなくても、今日、それを作り始めるべきです。

株主総会で議案を提起する後援者が、我々が巨大な保険会社で様々なリスクをカバーしているため、バークシャーがとくに気候変動によって脅かされると思っているのも不思議ではありません。後援者は天候の変化のために資産損失の危険性が一気に高まるのを心配しているのかもしれません。そして、事実として、我々が10年または20年の保険契約を固定価格で行なうならば、そのような心配は正当化されるかもしれません。しかし、保険証書は慣習的に1年契約で更新され、毎年価格を事態に合わせて評価しなおされます。損失の危険性の高まりは、すぐにプレミアの増加に転嫁されます。

私が最初にGEICOに熱心になった1951年を思い出しましょう。この会社のその時の保険契約ごとの平均損失は毎年30ドルほどでした。もし私がその時2015年に損失経費が契約ごとに100ドルに増えてしまうと予測したなら、皆さんはどのように反応するでしょうか。そのような損失の急上昇は壊滅的ではないのか、と尋ねるかもしれません。そうではありませんか。

長年にわたり、インフレーションは事故に関係する自動車の修繕や人の治療のコストの莫大な増加を引き起こしました。しかし、このように増加したコストは、それにプレミアムの増加によって、適正化されました。それで、コストが現状維持であれば、バークシャーは、今、1件230億ドルの保険より、毎年6億ドルの自動車保険を所有するでしょう。

今まで、気候変動は頻繁に大きな損失を伴う事態を起こさなかったですし、他の気象災害も保険の対象にはなっていませんでした。結果として、近年、アメリカの異常な災害の保険料金は着実に下がりました。それはそのビジネスを我々が後退させた理由です。決して確かではありませんが、そのような異常災害が大きな損害を伴い、頻繁に起こるようであれば、バークシャーの保険ビジネスに対する影響は大きくなり、より多くの利益をもたらすようになるでしょう。

一市民として気候変動にせいで眠れない夜を過ごしているのを自覚するかもしれません。低地に家を建てているので、あなたは引っ越すことを望むかもしれません。しかし、あなたが主要な保険会社の株主としてだけ考えているのであれば、気候変動は心配事のリストには入ってこないでしょう。

 

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