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2016年5月27日 (金)

ジャズを聴く(34)~ソニー・クラーク「ダイアル“S”フォー・ソニー」

Jazclark_dial Dial S For Sonny
 Bootin' It
It Could Happen To You
Sonny's Mood
Shoutin' On A Riff
Love Walked In 

Sonny Clark (p)
 Wilbur Ware(b)
Louis Hayes(ds)
Art Farmer (tp)
Hank Mobley (ts)
Curtis Fuller (tb) 

1957年7月21日録音
 ソニー・クラークが26歳の誕生日にブルー・ノートで録音した初のリーダー・アルバム。日本で大人気の「クール・ストラッティン」でのように“うしろ髪引かれる”後ノリが顕著ではないけれど、すでにクラーク独特のずらしは控えめながら、ここでも聴き取ることができる。むしろ、それゆえに全体として、心地よく、まろやかで、寛いだ雰囲気のアルバムとなっている。ここでちょっと大上段に構えた議論をする。クラークの場合はパウエル派などとファンはみなしているが、バド・パウエルが切り拓いたビ・バップのピアノのスタイルに大枠として倣っているからだろうと思う。しかし、そのスタイルはパウエルの、今にも、目の前で音楽が生まれてくるような生々しい創造力あってのものなのであり、パウエルのピアノのタッチの燦然とした輝かしさ、厳しさとは切っても切れないものだ。そして、当のパウエルでさえ常に成功するとは言えない異常ともいえるものだ。だから、クラークをはじめ他のピアニストが、右手重視とかスタイルの外形だけをまねしても音楽として成り立たないし、うまくできたとしても、せいぜいのところがパウエルの亜流で終わってしまうだろう。また、時代も変わってパウエルがスタイルを確立したころとはレコードでの音楽聴取という新たな聴き方によって聴衆も変化してきている。その中で、聴衆に受け容れられて、ひとかどのピアニストとして認められていくためには、時代に合うように、そして何よりも自分というピアニストを人々に印象付けるために、パウエルのスタイルを変化させて、プラスアルファを、つまりソニー・クラークだからこそ聴くことの出来る付加価値をつけなければならない。当時のクラークが本当に、こんなことを考えたかどうかは分からないが、後世の、私が、クラークのピアノのスタイルを聴いていこうとする際には、そんなことを考えながら、彼の特徴とか魅力を聴き取ろうとしている。そのような視点で考えると、パウエルのような一瞬の煌きのように、音楽が生まれる瞬間に立ち会うというのは、仮にLPレコードの録音で聴く場合には、ライブの生々しさはなくなり、20分程度を連続して再生、つまり音楽の垂れ流しを聴取する場合には、適さないだろう。それよりも、切れば血の吹き出るようなスリリングな演奏よりも、安心して、音楽の流れに身をゆだねるとか、演奏をじっくり味わうという、あるいは音楽を自宅のリビングでリラックスして聴くといったニーズわ応えるようなもの、それがクラークのパウエルプラスアルファなのではないかと思う。それが具体的なスタイルとして表われたのが、例えば、タッチの重さ、渋く重厚な音色で、ノリは良いのだけれど過度に滑らず、ホンの少し引っかかるようなところで、微妙なニュアンスを生み出す。それが聴き手に渋い味わいを感じさせる。そういうところだろう。このアルバムでは、そういうところを共有できるような奏者たち、とくにサックスのハンク・モブレーなどは特にそういうところがある、と共同作業で演奏全体の雰囲気をつくり上げていると思う。一方、このアルバムが「クール・ストラッティン」ほど“うしろ髪引かれる”ように、なっていないのは、協演者がモブレーであることも要因しているのではないか、「クール・ストラッティン」のマクリーンとの違いということではないか。
 さて、一曲目の「ダイヤル・エス・フォー・ソニー」はクラークのピアノでブルースっぽいイントロから、心地よいリズムで典型的なハード・バップのテーマが3本のホーンのアンサンブルで提示される。そこから順繰りに各奏者のソロへの受け渡されるというシンプルな構造の演奏だが、最初にソロをとるハンク・モブレーが、「クール・ストラッティン」のマクリーンとは違って、節回しを強調する粘っこさはなく素直な伸びのある音で歌うように、一本の長い糸のようにアドリブのフレーズを紡いでいく。繰り返し、聴き込んでも疲れるというものでもなく、何度も聴いて味わっていくという滋味に満ちたプレイではないかと思う。続く、トロンボーンもモブレーのサックスのと調子を合わせるように、低音による滑らかに流れるように演っている。そして、トランペットはちょっとだけ音色の輝かしさを出してみた以外は淡々と、訥々と語るような演奏をする。この3人のホーン奏者の音色のバランスが、ハイテンションになりすぎず、かといってリラックスしすぎず、派手すぎず地味すぎずと過度に一方向にエスカレートせずに絶妙に中庸の調子に演奏がなっている。これらのバックでクラークのピアノは、推進力はあるが煽ることなく、音数を抑えて、必要不可欠なところで控えめに鳴っているが、その控えめさゆえに、どうしてか耳をそばだたせてしまうのだ。
 最後の「ラブ・ウォークト・イン」はピアノ・トリオの形で、クラークのソロをたっぷり聴くことができる。前半はビル・エバンスっぽいそこはかとないムードのメロディをゆったりとしたテンポで、クラークは一音一音を丁寧にゆっくりと空間に置くかのように弾く。後半は一転したテンポ・アップでスィング全開となり、クラーク独特のシングルトーンによるアドリブを追いかけるのが楽しい。
 このアルバムは、ひとつひとつの曲や演奏を取り出して焦点をあてて聴くというよりも、全編を通して垂れ流しのように聞くともなく聴いて、全体の雰囲気とかムードを味わう愉しみ方を提案しているように思える。

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