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2016年7月26日 (火)

株主総会の実務をIRやコーポレートガバナンスの面から考える(17)~2の1 狭義の招集通知(5)

⑧場所
 株主総会の開催場所は法定記載事項です(会社法299条4項、298条1項1号)。記載方法については、とくに規制はありませんが、株主が株主総会に出席する場合には容易に会場が分かることが必要で、住所、建物の名称、階、会場の名称(部屋名)を具体的に記載する程度は必要でしょう。末尾に案内図を掲載して、その旨を注記している例が多い。また、前回と開催場所を違う場所に変更した場合には、「会場を変更しておりますのでご注意下さい」と注記している例もあります。
 また、過去に開催したどの場所からも遠く離れた場所で開催する場合には、そのような場所に決めた理由を記載しなければなりません(退社方施行規則63条2号)。ただし、その場所が定款で定められている、あるいは、その場所で開催することについて株主総会に出席しない株主全員の同意がある、そのいずれかの場合は記載しなくてもいいとなっています。
 かつて、旧商法の時代には、株主総会の開催場所は本社所在地とされて、そうでない場合には定款に株主総会の開催場所を規定しなければならないとされていました。これは、以前の株主総会において社内の経営の主導権をめぐる対立が株主にも波及して、反対派の株主を総会に出席させないために、出席し難い場所で総会を開いたという事例が発生したことへの対策の意味合いでした。しかし、この旧商法の規定は持ち株会社が認められたり、業界再編で大規模なM&Aが行なわれたことや、株式の持合解消が行なわれて個人株主が増加するという株主構造に変化が生じ、株主総会自体も「開かれた総会」という株主と企業との対話の場とする傾向などから、株主総会の出席者が飛躍的に増加し、株主数の多い企業は株主総会の出席者が数千人という規模に拡大し、会場の確保が困難になりました。それは一方で開催日の拡散に繋がりましたが、開催場所の制約があると本社所在地(同じ市区町村)に株主総会の開催が可能な大規模な会場施設がなかったり少ない場合は、わざわざ理由を明確にして定款変更を行なわなくてはならなくなります。そのような事情もあって会社法では株主総会の開催場所についての制約をなくすことになったというわけです。ただし、前年と違う会場で遠隔地に変えた場合には、何らかの恣意が働いているとして説明を義務付けています。 

⑨⑩目的事項
 招集通知には株主総会の目的事項を記載または記録しなければならない(会社法298条1項2号、299条4項)とされています。株主総会の目的事項とは、株主総会での報告事項と決議事項の2種類の事項を総称していいます。一般的には「報告事項」を「日時」や「場所」と並べてタイトルとして、その内訳として「報告事項」と「決議事項」に分けて、それぞれについて複数ある場合は、別々に番号を付して列記しています。
 なお、ここでの目的事項の記載は、株主が株主総会で何が報告され、何が決議される予定であるのかが事前に知っていてもらうためのもので、詳しい内容は、それぞれ事業報告や参考書類で、別に説明されます。
 次回で、報告事項と決議事項に分けて説明していきましょう。

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