株主総会の実務をIRやコーポレートガバナンスの面から考える(11)~1 株主総会の実務(法定事項)
前回までは、株主総会の意味合いとか目的について考えてみました。いわば序説的なことで、株主総会とは、どういうことで、何をするのかを、そもそも論で考えてみたというわけです。それをベースに、今回から、実際に株主総会をどうしていくかを考えていきたいと思います。まず最初に、現在において実際に株主総会の実務として行われていることを概念的に、大雑把に並べてみます。次回以降、このそれぞれについて、個別に細かく見ていくことになります。
(1)株主総会の実務~法定事項
株主総会を開催し、運営することに関しては会社法とその関連法規(会社法施行規則、会社計算規則)において手続きを細かく規制されています。これは、株主の権利である株主総会の議決権などの権利行使を保障するためという原則です。現在のように議事運営や招集手続などに詳細な規定が設けられたのは昭和56年の商法改正のときからですが、このときは、総会屋が跋扈し、会社と株主の間で、両者を分断させて、株主総会を混乱させることにより利益を得ていたのを規制することを目的としていました。しかし、総会屋を排除するためには会社が株主に対して適正な方法で株主総会を運営しなければならいわけで、そのために一定の基準が必要(株主に対して、どの程度の説明をしなければならないかといったこと)で、それを具体的に示したものと言えます。
簡単に説明していきましょう。
①株主総会の招集
・株主総会の日時及び場所(前回と著しく異なる場合は、その理由)
・株主総会の目的事項(→報告事項と決議事項)
・書面投票あるいは電子投票する旨
・その他省令で定める事項(議決権の代理行使、不統一行使など)
この決議の内容は金融商品取引所の適時開示事項になります。また、議題の中に定款変更などの特別な議題があった場合は、そのこと自体が適時開示事項となります。
多くの上場会社は、この株主総会招集の決議を通期決算発表のときに併せて決議します。そのため、この時の取締役会は決算取締役会と呼ばれることがあります。なぜ、この時期に招集の決議をするのかという理由は、決算発表で開示される決算短信に配当の予定や取締役の異動の予定が記載されるためです。それらは、通常であれば株主総会の議題であるため決算短信に記載するためには決定していなければならず、その決定は株主総会招集の決議で決定されるべきものだからです。テレビや新聞で企業の決算発表と新社長の就任が報じられるのは、このためです。
2)招集の時期
3)招集土地
4)招集通知
招集通知は株主総会開催日の2週間以前に株主に向けてはっそうしなければなりません
②株主総会の議事運営
株主総会の運営は、定款その他の自治規則、または会議体の一般原則に従って運営されます。
1)利益供与の禁止(会社法120条)
2)取締役の説明義務(会社法314条)
ここで実際に問題となるのは、株主総会の質疑応答をどの時点で切り上げて議案の採決に移るかというタイミングです。
3)株主総会の議長
また、会社法315条では議長の権限が定められています。総会の秩序を維持し、議事を整理する権限とされています。具体的には次のような内容です。
審議の方法、株主の発言時期を指定する権限
発言者を指定する権限
発言時間、質問数などを制限する権限
回答者を指名する権限
質問の打ち切りをする権限 等
③株主総会の決議
株主総会の決議には次の3種類があります。
1)普通決議(会社法309条1項)
2)特別決議(会社法309条2項)
3)特殊決議(会社法309条3、4項)
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