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2016年7月 3日 (日)

株主総会の実務をIRやコーポレートガバナンスの面から考える(3)~序の序 株式会社はどこから生まれてきたのか(3)

③東インド会社~株式会社という経営形態の発生

 今から40年前、私の学生時代の歴史の教科書では、1600年にイギリスが設立した東インド会社をもって株式会社の起源と説明されていたのを覚えています。諸説あると思いますが、ここではその記憶を尊重して述べて行きたいと思います。これまで、主にイタリア商人が繁栄していくプロセスで経営形態が継続化と大規模化の要請に応えて変遷してきたことを見てきました。しかし、彼らは株式会社をつくることはありませんでした。14世紀イタリアと17世紀イギリスとの間にはひとつのギャップがあり、それを跳び越えたところに株式会社という経営形態の成立があったと思います。
 イギリスでは、11世紀以降に商人ギルドが生まれました。もともと、ギルドというのは中世のヨーロッパでよく見られた宗教的あるいは社会的な目的で血縁に基づかない職能的な集団です。イギリスでは大規模な荘園において牧羊が発達し、そこで生産された羊毛を大陸に輸出することによって商業が急速な発展をみました。その関係者である富裕な商人や手工業者により商人ギルドが作られるように成りました。中世のキリスト教社会であったがゆえに商人ギルドの当初は宗教的な理念が残されていましたが、次第に商業活動の拡大とともに実利的な面が大きくなっていきました。これに伴い、新たな形態の組合的な企業が、ギルドに取って替わることとなりました。
 この組合的な企業は海外市場の拡大に伴う商業資本主義の成長と新しい形の海外貿易企業へのニーズに適合したもので二種類の形態がありました。その一つはレギュレイティッド・カンパニー(制規組合)と呼ばれる形態です。ここにおいてメンバーの従うべき規則があって、その上で各組合員は、各自の資本でもっとそれぞれの取引を行っていました。各組合員が独立のものとして存在する複数の資本ではあったものの、一種の寄り合い所帯のようなもので、そこに資本を結合するという考えはありませんでした。
 これに対してジョイント-ストック・カンパニー(合本会社)では資本の結合が図られていました。これは、16世紀以降ヨーロッパ諸国による植民地獲得が始まり、その先兵となって商人が貿易を開拓しながら事業を拡大していく重商主義の経済に適合した形態であったと言えます。その中で設立されたのが東インド会社です。企業の主体は民間の事業家である商人でしたが、リスクの軽減及び多額の資金は株式会社に近い企業形態の採用をもたらしました。また、そうした地域との貿易は、ときに国家に等しい立場で外交や軍事などの活動を併せ行なう必要がありました。具体的に言えば、16世紀以降の毛織物業の急速な発展の中、東インド貿易に進出しようとしたイギリス商人は先行するオランダに対抗するために東インド会社を設立しました。しかし、初期の東インド会社は、資本の払い込みを受けることが困難だったため、資本を払い込んだメンバーだけからなる制規組合的な形態にとどまり、1613年の合本の成立によって全メンバーの出資から構成される合本を持つようになり合本会社の形態に進化しました。その後1657年のピューリタン革命による民主化の影響を受け、出資を広く国民一般に開放し、閉鎖的でない株主総会、完全な継続性の成立をもたらしたクロムウェルの改組がありました。ここで注目すべきは、この継続性の確立が配当システムの完成へとつながったことです。つまり、企業が継続していくということは清算による払い戻しをしないということです。そこで、出資部分の払い戻しと配当をはっきりと区別し、もうけの部分だけを分配するものとして確立したのでした。これは、別の面から言えば、出資者は企業が続いている限り払い戻しを受けられないことになり、企業が破産した時に責任を負うこと~逃げられなくなります。その後、王政復古の後1662年の破産者法の成立によって、東インド会社をはじめとする株式会社に対して、全出資者の有限責任が認められました。 

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