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2016年7月23日 (土)

株主総会の実務をIRやコーポレートガバナンスの面から考える(14)~2の1 狭義の招集通知(2)

Row521 招集通知文は続いて、所謂「なお書」があります。サンプルで言えば、フォントが明朝体からゴシック体に変わり太字になって強調されている部分です。ここには、株主総会に出席できない株主に対しても書面投票、電子投票による議決権行使の依頼や委任状用紙の返送依頼の文言を記載しています。その際に、文言を強調するために、ゴシック体にしたり太字にしたり、それ以外にも下線を施したり、赤色にしたり、罫線で囲んだりするケースもあるようです。
 署名投票制度の採用を取締役会の決議で定めた場合には、「株主総会に出席しない株主が、書面により議決権を行使することができる」旨を招集通知に記載することが必要とされ(会社法298条1項3号、299条4項)、その旨とは一般に「なお書」に記載されています。サンプルでは「当日ご出席願えない場合は、書面によって議決権を行使することができます」という部分です。
 さらに、サンプルにはありませんが、電子投票制度の採用を取締役会の決議で定めた場合には、「株主総会に出席しない株主が電磁的方法により議決権を行使することができる」旨を招集通知に記載することが必要で(会社法298条1項4号、299条4項)、このことは書面投票の場合と同じです。一部の会社では、書面投票や電子投票を促進するためにその旨を記載するところもあります。
 このような書面投票や電子投票では、この方法により議決権を行使する(投票する)期限として特定の時を定めた場合には、招集通知にその日時を明記しなければならないとされていますが、この「なお書」の議決権行使依頼のところに記載されるのが一般的です。サンプルの例では「なお書」部分の最後のところ「平成26年6月25日(水曜日)午後5時までに到着するようご返送下さいますようお願い申し上げます。」という文章がこれにあたります。また、このように議決権行使の期限として特定の時を定めない場合には、議決権行使の期限は株主総会の日時の直前の営業時間の終了時、つまり株主総会の前日の営業時間の終了のときが期限となります。なお、議決権行使の期限を特定の日にしない場合も、議決権行使の期限は招集通知に記載することされています。ただし、議決権行使書に明記されていれば、招集通知には記載しなくてもよいとされています。ここでの注意事項ですが、議決権の行使の期限を特定の日に定めには、取締役会の決議が必要で、なおかつ、この特定の日が属する日の2週間前までに招集通知を発送しなければならない。つまり、特定の日の15日前までに招集通知を発送しなければならないことになります。例えば6月27日が株主総会の場合、特定の日を決めなければ6月11日までに招集通知を発送すればいいのですが、議決権行使期限を2日前の24日に決めた場合6月9日にしなければならないことになります。面倒くさいのは、株主総会前日の25日を特定の日とした場合は招集通知の発送はこれで考えれば、10日ということになりますが、特定の日を決めなければ前日の営業終了時ということで、これならば11日までに招集通知を発送すればいいことになり、同じ1日前でも決めるか決めないかで招集通知の発送期限が違うということになります。(会社法311条1項、312条1項、会社法施行規則63条3号)
 このように、書面投票や電子投票の期限を決めなければならないのは、株主総会で決議をしなければならないからです。書面投票と似たような制度として委任状があります。株主は、株主総会に出席できない場合、自分以外の誰か出席できる人に自分の議決権を託して、つまり委任して自分の分も投票してもらうという制度です。書面投票とは法的性格は違いますが、ここではそのことには触れずに行使期限ということに絞りますが、委任状の場合は委任された人が株主総会に出席して決議に参加しなければなりません。その時に委任されたという証拠である委任状を持参していなければ決議に反映されないわけです。だから言うまでもなく、株主総会の決議の時に委任されていなければなりません。これに対して、書面投票や電子投票はそれ自体が投票なのです。株主総会で決議されてしまっても投票はできるのです。ただし、この場合には決議されてしまっているので投票自体は無効となりますが。しかし、電子投票であればインターネットを通じていつでも投票できるわけです。極端な例ですが、株主総会で決議を諮って集計している最中に投票することもできるのです。もしその時、決議結果が微妙で、その電子投票の1票で賛否が決まるようなことがあれば、集計している1秒の違いで結果の賛否が違ってしまうわけです。そうでなくても、実務上のことを考えれば、決議の集計中に後から後から投票が加わってくれば集計できなくなります。ましてや規模の大きな会社で投票する株主数が多数であれば、事前に書面投票や電子投票を集計しておかないと株主総会当日の会場での投票と合わせて集計できません。そのため、書面投票と電子投票の期限を設定しなければならないのです。

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