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2016年7月12日 (火)

矢野顕子「Watching You」

彼女が出産と育児のブランクから音楽活動に復帰したWelcome Backに収録された曲
 本人のピアノとベースとドラムスというジャズのピアノ・トリオというアコースティックな伴奏をバックに次のように歌う。 

あなたのねがお わたしはみてた
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 少しわたしもねむっておきて
 あなたのねがお まだまだみてた
 よかった あなたがいて よかった あなたといて
 よかった よかった 

あなたのおしり わたしはみてた
 少しやさしくつねってなでて
 あなたのおしり じろじろみてた
 よかった あなたがいて よかった あなたといて
 よかった よかった 

たった ひとつの ちいさな命
 世界中にあふれる命をだきしめる
 この手で 

よかった あなたがいて よかった あなたといて
 よかった よかった 

やがて旅立つ 愛をまとって
 世界中の暗闇の中で灯をともす
 その手で
 あなたのねがお わたしはみてた
 少しわたしもねむっておきて
 あなたのねがお まだまだみてた
 よかった あなたがいて よかった あなたといて
 よかった よかった 

育児から復帰直後の彼女の境遇と曲名から子どもを見守る母性溢れる曲に聴こえる。しかし、メインのフレーズもそうなのだが、歌詞の「た」で脚韻を踏んでいるのが妙に耳に引っ掛かる。もっと耳障りの滑らかな音を使えばいいのにと。神経質すぎるかと思っていたら、この「た」がしつこいほど繰り返されていることは意図的ではないかと思うようになった。つまり、ここで歌われていることはすべて過去形なのだということ。現在形であれば、

“あなたのねがお わたしはみてる”

となるはずだろう。しかし、実際には

“あなたのねがお わたしはみてた”

と歌う。だから、あなたがいてよかったと歌う「あなた」は、すでに、この歌が歌われた時点では、もういないということになる。そうすると、この優しいうたは、実は喪失感を歌った歌なのだ。それをあたかも優しい歌であるかのような歌われるとき、その虚しさは、空々しさとともに寂寥感が半端ではないものとなる。歌を聴きすすめていくと、この“た”と“て”というタ行の音がフレーズの尻に脚韻を踏むようにでてきて、その吃音のようなつっかかる音が繰り返しでてくるたびに、その喪失感、空虚感がダメ押しされるように連続して突きつけられる。愛しい者を失ったあとで、その者があたかも身近にいるかのように幸せそうに他人に語る、その時の本人の寂しさ、それを誰も共有してくれない孤独、それを表に出せない、それがストレートにぶつかってくる。その時の本人の浮かべているであろう微笑を、何も知らない人はほほえましいとか思って見る。そういう絶望的な状態。この歌は、そういうものが塊となって、聴く者を真綿で優しく締め付けるような息苦しさがある。
 そして、バックのメンバーは腕達者揃いで、こんな優しい曲に不相応なほどキリキリ緊張するほどのプレイをしている。凄絶

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