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2016年8月 8日 (月)

株主総会の実務をIRやコーポレートガバナンスの面から考える(26)~2の2 参考書類─剰余金処分の件(6)IRガバナンスの視点で剰余金処分を考える

●IRやガバナンスの視点で考える

●剰余金の配当は株主からはリターンに直接係わる重要議案

言うまでもなくある企業に株式投資をした場合に、得ることのできるリターンは株価の上昇(キャピタルゲイン)と配当(インカムゲイン)の二つです。もちろん、企業への投資には様々な動機があり、この二つのリターンだけが目的であるとは必ずしも限りませんが、少なくとも投資ですから経済的なリターンが動機に含まれないということはありえないと言えます。
 このうち、株価については、企業の業績はもちろんですが、それだけでなく景気変動や為替を含めた金融事情などのマクロ的な要因、それらに対していみじくもケインズが言ったように、株式投資は美人コンテストと同じで、皆は美人に投票するのではなく、皆が美人と思うだろうと予想される人に投票するというように株式市場において様々な思惑が交錯し、変動するものと考えられます。したがって、企業が努力しただけでは株価が上昇するとは、必ずしも限りません。翻って、投資した株主が、企業に努力を求めたり、経営戦略に意見を述べることはできても、それが株価に反映するものではありません。
 しかし、これに対して配当については、株主総会の議案であるかぎりにおいては、議場で修正動議を提出したり、賛否の投票をすることによって、直接、そのリターンの決定に参加することができるものです。また、この配当議案の根拠となるのは企業業績や将来の成長可能性であり、この議案を契機として株主と企業の間で対話を始めることもできるわけです。だから、配当が少ないと判断すれば、株主は投票で否の意思表示ができるわけです。

●会社からは議案の説明を契機に資本政策や経営方針を株主に理解を得ることができる

これは、株主に対して会社の側からは配当に対する考え方を株主に理解してもらえれば、株主総会の場においても会社提案に対して一定の理解を得ることを、前以て期待できるということでもあります。これは、今後、企業相互の株式持合いの解消が加速し、海外からの投資が増えていく方向にあり、企業の配当を含めた資本政策に対して厳しい視線が注がれることになるだろうと予想される中で、これに積極的な開示の姿勢を示す企業は、株式市場での資金調達だけでなく、M&Aや、はてまた市場での企業防衛の見地からも得るメリットは小さくないと考えられます。

●安定配当という欺瞞

これまで、企業が配当に関する方針を積極的に説明することなく済まされてきたのは、ひとつには、株式の持ち合いなどによって株主総会での定足数が足りていたため議案に対する賛成を計算できたことと、各企業が横並びのように一定額を配当する、いわゆる「安定配当」が行なわれてきたことが理由として挙げられます。各企業が同じような配当をするため、配当によって投資先である企業を差別することが難しいため、投資する側としては配当に対する期待が相対的に低かったと言えるかもしれません。これは高度経済成長といった日本経済が右肩上がりで成長していた時代に、どの企業に投資しても、それなりのリターンが得られた時代のことで、現在のような低成長に入って、企業によって業績や将来性に大きな差が現れてきたときに、現実的とは言えなくなっていると考えられます。
 そもそも「安定配当」の由縁を考えてみると、昭和初期の戦時体制で自由な資本主義経済を否定して投資資金の流れを国家が集中管理しようとする計画経済の思想の下に作られた制度なのです。かいつまんで言うと、株式に投資される資金の流れを銀行預金の方に持って行くために、企業の株主へのリターンを国家が法律で規制してしまって、銀行を国家が管理することによって軍費を調達したというものです。これは、敗戦後も継続し、戦後復興や高度経済成長で鉄鋼や石炭産業への投資を集中させる経済政策ための資金を供給するために機能したといいます。つまり、安定配当ということは、もともと結果的ではあるにせよ、企業が投資家を蔑ろにした制度が現在まで温存されたものと言うこともできるのです。
 だから、安定配当の本来的な存在理由を顧みれば、企業が株主へのリターンとして安定配当を標榜しようとすれば、本来的な安定配当の意味合いではなく、株主を蔑ろするものでないことを明らかにしなければならないと考えてもいいのではないでしょうか。
 なお、安定配当について詳しい説明は「安定配当について」の先日の投稿を参照してください。

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