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2016年8月 1日 (月)

株主総会の実務をIRやコーポレートガバナンスの面から考える(19)~2の1-2.IRやコーポレート・ガバナンスの面から考え直した招集通知のあり方

狭義の招集通知について、法令で規定された“あるべき姿”と経緯、そして実態について、これまで説明してきました。しかし、このページのタイトルである『IRとしての株主総会』では、これまで説明してきた招集通知で、果たして良いのかについては、何も言及してきませんでした。ここからは、今までの説明をベースに、いよいよ本題として、IRとしての株主総会のための招集通知を考えていきたいと思います。ただし、招集通知の主要な内容である報告事項の内容は事業報告に詳細が説明されていますし、決議事項の内容は参考書類で詳細に説明されています。だから、具体的な報告事項や決議事項の内容や、その説明に関することは、事業報告や参考書類のところでの説明に場を譲ることにして、ここでは全体としての招集通知のあり方について考えていきたいと思います。

●招集通知というのは、そもそもどのような書類か

いままで招集通知について説明してきましたが、それは会社法に規定された株主総会の開催の要件として必要な書類で、そのような前提のもとに、実際の上場会社でどのように作られているのかを説明してきました。
 ここでは、そういう形式的な議論が生まれてくる以前の、そもそも何のために招集通知が必要なのかという原点に立ち戻って考えみたいと思います。これについては、二つの方向から考えて見ましょう。第一に、一般的な会議の招集という点からです。上場会社の株主であれば、最低でも数百人、多ければ数十万人の人数となります。そのような多数の人々が集まって会議をするためには、いちいち各人のスケジュールを調整するなどということは不可能です。また、明日会議を開催するといっても、急に集まることはできないでしょう。だから、主催者が日時と会場を予め決めてしまって、事前に文書で一斉に通知するということは、実際のところ、もっとも効率的なやり方でしょう。早めに通知をすることで、出席者に会議にあわせてスケジュール調整をしてもらい易く出来ることにもなります。例えば、電話や口頭で、ひとりひとりに連絡するのは物理的な手間が大きく、また連絡時間に差がうまれて、中には連絡が遅くなったためにスケジュールの都合がつかなくなるという事態がおこると、その点で不公平が生じます。文書で一斉に郵送すれば、そのような明白な不公正は起こりにくくなります。また、会議のお知らせをする側では文書で送った方が知らせたという証拠も残ります。
 そして、第二に、株主総会という会議の特殊性という点からです。こちらが、これからの議論の出発点にもなるものです。つまり、株主総会という会議は株主が集まって決算とか経営者の選任といった会社の経営にとって重要な事項を議論して決めるために開かれるものです。このような事項を議論するには様々な情報を事前に得て十分検討をした上でないと実のある議論はできないことになります。そのために、予め株主総会の出席者である株主には必要な情報を伝えておかなければなりません。それが広義の招集通知が行なっていることと言えます。
 これはポジティブに捉えれば、会社の経営陣が株主に向けて発したメッセージと言う事ができると思います。このような上場会社が外部に向けて発する書類は、このほかにも決算短信とか有価証券報告書とか、あるいはIR説明会などがありますが、この招集通知は、これらのどれとも異なる特異なものです。その大きく異なる点は、決算短信や有価証券報告書、株式市場とか監督官庁、マスコミそして投資家などといった会社を傍観者の立場から観察する人々を対象としているのに対して、招集通知は会社の所有者である株主、つまりは利害関係にある人々、会社の事業活動に責任がある主体的な当事者、を対象としていることです。そして、それゆえに招集通知は単なる報告だけに終わらず、対象となった人々の行動を伴う、引き起こすものであるということです。
 招集通知に記載されている株主総会の目的事項、つまり、株主総会で決議しなければならない事項は、取締役の選任─どのような人々に会社の経営を委ねるのか─、定款変更─会社の根幹の内容、会社はどのような事業をどのような体制でおこなっていくのかを決める─、あるいは資本政策上の重要事項、そのほかのことです。これらは、すべて会社が、これから将来に向けてどうしていくのかということの核心的な事項です。株主総会で、そのようなことを議論して、決定するためには、その場で「はい、決めてください」と言われても困ります。だから、そのために必要なことを事前に知らしめて、その上で集まって議論をする。招集通知はそのためにある、ということになるわけです。だから、そこには、会社の将来に関することが情報として盛り込まれていなければなりません。そしてさらに、株主総会で議案の提案をしているのはほとんどすべての場合、会社の経営陣です。ということは、会社の経営陣が、これからこうしていきたいということを会社の所有者である株主に向けて所信表明をして、それを承認してもらうためのものに、実質上はなっているということです。株主にとっては、この議論と決議を積み重ねて、それに基づいて経営陣が行動していくことが将来に企業価値を形成することに繋がっていくことになるはずです。当然、その判断はシビアなものにならなければなりません。だから、招集通知には、そのために必要な情報がなくてはならないのです。
 そのような招集通知は、だから決算短信や有価証券報告書に比べて財務情報が豊富でないかもしれませんが、会社の将来を考える上で必要な情報が充実していなければならないと言えます。招集通知が、そういうものであるならば、株主だけでなく、傍観者である投資家にとっても、たいへん興味深い資料となるはずです。
 以上のような視点で招集通知のあり方を考えてみると、IRであるとかコーポレート・ガバナンスの点からも、存在価値の高い書類と言えるのではないでしょうか。

●具体的に、どのような招集通知を作ろうというのか

このページのタイトルを「IRとしての株主総会」と仰々しくしてみましたが、上場企業の株主総会の実情を見渡してみると、傾向が二極分化しつつあるようにも見えますが、実際には株主総会の運営を担当する総務部門や招集通知を作成する法務部門などでは、ほぼ全体的に株主とのコミュニケーションを外部の余計なツッコミと見なして、いかに法的に問題なく避けるかという発想のもとで実施されています。
 そして、一見二極化した一方の極であるIR型の株主総会においては、出席株主とのコミュニケーションを持とうとする努力は真摯に行なわれていると思いますが、ある面ではコミュニケーション自体が目的となっているのではないか、と思われる節があります。そこでは、何のためにコミュニケーションするか、何を対話するのかという視点がもう少し重要なのではないかと思います。
 それは例えば、ある企業に対して潜在的に興味を持っていた投資家が株式を購入し株主、つまり企業の所有者となって株主総会に出席したところが、所有者というわりには株式を購入する以前に公開されていた情報と質の面でも量の面でも、ほとんど変わらず、その企業の個性や魅力を深く知ることもできなかった、というのが大半の株主総会の現状ではないかと思います。株主総会の招集通知も、その一連の流れの中で作成されるものです。だから、たんに招集通知だけの問題ではなくて、株主総会に対する、というより株主に対する企業の姿勢から考えていかなければならないということになります。
 で、ここでは、あまり話を大きくすると議論の収拾がつかなくなりますので、招集通知に絞ります。例えば、株主総会の議題のなかには取締役の報酬という議案があります。これは、会社法の規制により、株主総会での承認が必要とされるものです。それらは役員報酬枠の改定、役員賞与の支給、ストックオプション等の様々な報酬の種類によって、それぞれ個別に株主総会での承認を、その都度得ているのが通常です。ところが、投資家目線で追いかければ、例えば、その議案を提起することによって役員の報酬は全体としてどのようになるのかとか、それが分かると、報酬の役員に対するインセンティブがどうなのかのイメージが湧いてくるでしょう。また、その企業が中長期の経営計画をもっていて、役員報酬がそれに連動したものであったということであれば、企業の中長期のビジョンへの理解が深まるはずです。
 それゆえ、招集通知について、ビジュアル面で図やグラフを多用して見やすくするとか、企業側では、そういうことに議論が傾きがちですが、それよりも、上記のような方向で、理解し易く、いかに伝えるかを考えていくほうが、興味深いものとなるのではないかと思います。
 
ここでは、全体としての方向性について説明し、個々の議案については参考書類のところで、企業の説明については事業報告のところで、具体的に説明していきたいと思います。 

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