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2016年8月 5日 (金)

株主総会の実務をIRやコーポレートガバナンスの面から考える(23)~2の2 参考書類─剰余金処分の件(3)配当とは何か?

●配当とは何か? 

企業は企業価値の向上に資する積極的な投資を可能な限りまかなったうえで、なお余剰資金がある場合には、企業は毎年、純利益や利益余剰金から株主還元を行います。株主還元には、一般的には、配当と自己株式の取得の2つがあります。企業が基本的に当期純利益の一部を現金で株主に分配することを配当といいます。
 この当期純利益に対する配当の割合を配当性向と呼び、配当を株価で除したパーセンテージを配当利回りと呼びます。

配当性向(%)=配当金÷当期純利益
  配当利回り(%)=配当金÷株価

●剰余金の配当についての会社法の基本的な考え方

会社法では453条で「株式会社は、その株主に対し、剰余金の配当をすることができる。」と規定され、旧商法において「利益の配当」とされていたのと異なり、「株式会社の配当財産を株主の有する株式数に応じて分配する行為」として規定されました(会社法454条3項)。旧商法の下では、株主に対する会社財産の分配を行う場合は、株主総会決議による利益処分としての「利益配当」及び取締役会決議による「中間配当」に限られていましたが、会社法では所定の財源規制の下、1事業年度中に回数の制限なしに実施することができるようになりました。
 これに対する株主の「剰余金の配当を受ける権利」(会社法105条1項1号)は、従来からの株主の権利(自益権)のうちでは最も基本的なものの1つとして位置づけられていますが、一方では、株主有限責任原則の制度的裏づけとしての会社債権者保護のため、分配可能額の制限等の財源規制が課せられています。

①剰余金の配当の決定
 剰余金の配当は、その都度株主総会決議で行うというのが会社法の原則です(会社法454条1項)。ただし、次の2点については例外として取締役会の決議により決定することができます。

(ⅰ)中間配当

    取締役会設置会社は、1事業年度の途中において1回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当をすることができる旨を定款で定めることができる(会社法454条5項)。いわゆる中間配当です。

(ⅱ)分配特則規定

    次の2つの要件を満たす場合は、株主総会によらず、取締役会決議で剰余金の配当等を行なうことができる旨を定款に定めることができる(会社法459条1項)。

・取締役の任期が1年以内であること
 ・会計監査人及び監査役会(または監査委員会)が設置されている株式会社であること

なお、実際に取締役会の決議によって剰余金の配当を行う場合には、事業報告において、「取締役会に与えられた剰余金の分配に関する権限の行使に関する方針」を記載しなければなりません(126条10号)。これは、剰余金をどのような方針で内部留保に充て、また株主に分配するのか、さらには株主資本の各項目をどのようにするかなど、全般的な方針を明らかにすべきものと考えられています。

②分配可能額

剰余金の配当により株主に対して交付する金銭等の帳簿価額の総額は、剰余金の配当の効力を生ずる日(金銭の支払い開始の日)における分配可能額を超えてはならないとされています(会社法461条1項8号)。その額の算定方法は会社法446条に定められていますが、基本的な計算式は次のようなものです。(実際には、ここに様々な検討事項が付加されて計算されますが、ここでは基本的な原則に留めておきたいと思います)

剰余金の額(基本部分)=資産の額+自己株式の帳簿価額の合計額-負債の額-資本金及び準備金の合計額-(資産の額+自己資本の帳簿価額の合計額-負債の額-資本金及び準備金の合計額-その他資本剰余金の額-その他利益準備金の額)

=その他資本剰余金の額+その他利益剰余金の額

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