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2016年8月10日 (水)

株主総会の実務をIRやコーポレートガバナンスの面から考える(28)~2の2 参考書類─剰余金処分の件(8)配当の方針の開示の試み

●ある視点からの配当に関する方針の開示

現時点では、実現が難しそうなことを建前論でしかないという批判を覚悟の上で、書き連ねてきました。ここまで述べてきたのは、ややもすると実際に企業現場で為されている努力をことごとく批判して、批判のための批判で、建前とし正論を立てているに過ぎない、とい受けられれても仕方のない内容となっています。それでは、実務の視点でページを作成している意味がなくなりますので、ここで、ひとつの試みをしたいと思います。配当の関する方針といっても企業によって、措かれた環境や経営の方向性など千差万別なので、全般的なモデルをつくるのは不可能と思われるので、ひとつの立場の上に立って事例としてのモデルを試みにつくってみたいと思います。 

当社経営の状況に対する基本認識と株主の皆様に対する基本姿勢 

資本政策の基本方針

当社グループは1950年の会社設立以来、製造業向けに計測・制御機器を提供することで産業界に貢献し、事業を成長させてきました。当社グループの機器は製鉄所をはじめとして様々な工場の生産ラインで稼動し、日本の工業製品の高い品質を支える一翼を担っているものと自負しております。もし、何らかの事故などにより当社の製品やサービスの供給がストップした場合には、各地の工場の稼動に関して大きな影響を受ける懸念があり、当社グループにとって、経営の安定はユーザーのニーズであり、当社グループの強みである顧客の信頼の大きな基盤となっているものです。
 このような当社グループの業態の要請から、安定した経営基盤を確保した上で、持続的な成長に努めていくことが当社グループの基本的な経営姿勢となっております。
 資本政策に関しても、このような経営姿勢の一環として位置づけております。それは、収益性を向上させ、効率を上げることにより資産回転率を改善することにより資本効率を改善して、株主価値を高めていくというものです。とくに、当社で力を入れるのは、総資産に対する売上高の比率を高くしていくことです。これにより資本回転率が向上するだけでなく、派生して収益性も高まることになって、最終的にROEの改善に結実するからです。さらに、IRの推進と配当政策等の株主還元を総合的に進めることによって、少なくとも株主資本コストを上回るように、株主価値を持続的に向上させて、ついには最大化を目指していくものであります。

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 当社の現状  

Row5324_2  当社グループは、堅実な財務政策と企業努力の積み重ねにより、内部留保を厚くし、自己資本比率を高い水準で維持してきました。(下のグラフは最近5年間の自己資本比率の推移を示しています。)その主な理由(メリット)として、次の3点が上げられます。 

①受注から売上までのリードタイムが半年~数年と長期間で、売上を現金として回収するには更に期間を要し、その間の仕入れの負担のような安定した事業運営には、現金の備えを手厚くする必要があったこと。

②当社はもともとユーザーが資本を出し合って設立された会社で、B to Bの事業形態をとっているため、事業を拡大するための戦略の一環として資本政策を機動的に行ってきたことから、保有している投資有価証券が多くなっていること。

③安定した財務基盤をベースに長期的な視野にたった研究開発や事業展開ができることで、他社が入ることのできないような開拓の困難な市場にフロンティアとして入ることを可能にしていること。

④外注や仕入先への支払を現金払いとすることにより、業者の経営の安定と信頼関係の強化を図り、協同で技術開発やコスト削減を進めるなど、質の高い協力体制をかためることができていること。 

Row5325 その一方で、自己資本利益率(ROE)は、上図の通り低い水準を続けています。これは、ちょうど資本コストと同じ程度の水準となっているため株主価値が創出されていない状態にあります。これを補完する機能も含め、配当政策は資本政策の一環として併せて株主価値向上を総合的に図って、企業努力を続けています。

 

資本政策上の課題

①売上高純利益率の改善

当社のROE改善のための最も大きな課題は、一般に日本企業が欧米の企業に対してROEが低いと言われる最も大きな要因として指摘されている、本業での「儲ける力」が強くなくなってきているということです。端的に言えば、そのためにすべき最大の課題は売上高の伸長です。ROA、つまり総資産に対する売上高を増やしていくことです。これは、当社の本業である事業の成長をより強く進めることに他なりません。現状では、総資産額よりも年間売上高が少ないという、資産が回転していない状態にあり、また、利益を伸ばすためにはそのベースである売上高を増やすことがまず必要になります。それゆえ、売上高の伸長は最大の経営課題であります。なお、詳細については事業計画を参照してください。 

②総資本回転率の改善

総資本回転率の改善についても主要な課題は売上高の伸長です。しかし、それだけでなく資産効率の向上ということで、キャッシュフローの創出にも関わることとして、次の2点を課題として注力していきます。

・売上債権回収の促進

・棚卸資産削減施策の継続⇒より一層の適正在庫として回転率4回転以上を目標

③最適資本構成の模索

一般に、日本企業は自己資本比率を高めて財務の安定性を重視しているのに対して、欧米の企業は財務レバレッジを高めてROEを高めていると言われています。当社も高い自己資本比率で財務の安定性を重視しています。これには、受注から現金回収までのリードタイムが長期間で、その間の運転資金を確保しなければならないことと、事業の将来のために一定以上の規模で開発投資を継続させる必要があるためです。しかし、最適資本構成は常に模索しており、内部留保の調整弁として、株主に対する配当政策も活用しています。 

利益還元に関する基本方針 

Row5326 当社グループは株主価値の最大化を目指し、その持続的な向上に努めています。基本的には業績及び収益の向上によりROEの向上による株主価値創造に努め、そして業績及び収益の向上により得た現金を株主に対して継続的かつ安定的な利益還元を行う株主還元をこれに補完させることで、トータルとして株主資本コストを上回る価値創造を図って努力を続けています。とくに、中長期的な視点で投資してくださる株主の皆様には、創業期を過ぎ急激な事業の成長というよりは、長期にわたり事業を継続してきたという会社の性格から、中長期の視点で投資してくださる株主の皆様には、持続的に事業を成長させることにより配当額を増やし続けていくことによるトータルとしてリターンを考慮していただけるものと考えております。
 現在の指標としての配当性向は、このような政策的な考慮に基づき、株主の皆様の期待値の側面もある資本コストを越えるリターンを図り、当社グループの状況とのバランスを勘案した末のものであります。
 実際の株主還元としては、剰余金の配当と自己株式取得の二本立てで進めます。このうち利益の還元は基本的に剰余金の配当をもって行い、中間と期末の年2回の配当を行います。そして、経営環境の変化に対応して自己株式の取得を機動的に行います。  

剰余金の配当についての基本方針

 株主還元の基本方針に則って、株主に対する配当は安定配当性向を原則として、単体業績に対して配当性向35%以上を堅持することを方針としています。これは、現時点において当社の自己資本利益率(ROE)が高い水準にあるとは言えない状態にあるため、配当金により株主へのリターンを補完する意図によるものです。現在の状況では配当性向35%ではおおよそのところで自己資本利益率(ROE)に換算すると1%に相当するものと考えられ、これによって株主に対して資本コストを上回るリターンを確保できると考えられるためです。さらに、過去の配当実績を見てもらうと、配当性向35%を大きく上回るケースが多くなっていますが、一定程度額以上の配当を続けることで安定した株主へのリターンと内部留保から供出により長期的な最適資本構成化も進めています。

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