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2016年9月10日 (土)

高島野十郎展~光と闇、魂の軌跡(9)~第4章 静物 小さな宇宙(3)

Takashimakiku 「菊の花」という花瓶に活けた菊の花を描いた作品です。とにかく、菊の花の一輪一輪の花びらの一枚一枚を丁寧に描いている執拗さに圧倒される作品です。画家が細筆を握って、一枚の花びらの小さなところの一部に絵の具を何度も塗り重ねていく姿を想像すると、戦慄さえ覚えます。しかし、そのように一輪の花の、一枚の花びらをも疎かにしないで、すべてにあまねく丁寧に行き渡るように描かれた結果として、平板な印象となっていることは否定できません。メリハリがないのです。だからノッペリとして日本画の花鳥画を見ているような印象です。この作品を見ていると、高島は菊の花の生命感を迫力をもって描こうとしたのではなく、菊の花を題材に迫力のある画面を作ろうとしていたことが分かります。それが、さきほどの「すもも」にあった作為が、この作品では、そのように発揮されているということなのではないかと思います。たとえば、ヤン・ブリューゲルは静物画の中でも細密な花を描くので定評のある画家ですが、その「花卉」という作品と比べてみると、陰影を強調した画面の中で、花の生死が象徴的に描かれていると言われています。傾向の異なる画家なので、単に並べるだけで優劣を問うつもりはありませんが、ブリューゲルは花の諸相を象徴的に描き分けていますが、高島の描いている菊の花は、ひとつひとつはブリューゲル以上に丁寧なのでしょうが、それぞれに個性がなくて、この一輪という唯一さがないのです。コンピュータの画面でいえば、コピー・アンド・ペーストしたように一様なのです。だから、ここで高島の作品から感じられる迫力というのは、そういう労力を厭わずにやり遂げた画家の労力によるものです。以前にも、少し述べましたが、高島は描くというプロセス、つまり自分が行為するということ、もっと言えば、自分が創造主となって宇宙を創造することが重要であって、出来上がったものに対しては、手出しをしない。それは、聖書に書かれているキリスト教の神が人をはじめ万物を創造したあと、人々が様々な試練を受けて、神に対して救いを求め、問いかけを真摯に行なっても、一切答えないのと、よく似ています。
Takashimakarasu  「からすうり」という作品です。代表作だそうです。「菊の花」とは違って、からすうりの赤い実のひとつひとつが個性的に違って描かれています。それが、くねくねした茎にぶら下がって末広がりのピラミッド型のシンメトリーの構図に収まっています。意地悪な見方かもしれませんが、からすうりが横にこれだけ広がっているのだから縦方向、つまり画面の奥行き方向にも同じような広がりがあると思うのですが、そのようには見えない。多少影になっている実がありますが、影になっているだけで置くにあるようには描かれていません。また、彼独特のくねくねした線が各処にあり、作為をわざと見せているようにも思えてきます。ただ、高島はそういうあそび的な要素を画面に取り入れるタイプの人ではないと思うので、それは作為が巧妙ではないのか、そういう要素をいれることで複雑さを加味しようとしたのか、どちらかのような気がします。参考として、同時期に描かれた「葡萄」という作品も併せて見ていくと、平面の画面を蔓(茎)と葉とぶら下がっている実を平面でひろがっているように画面いっぱいに描くということで、花瓶に活けた花を描くのと違って、画面を自分が好きなように構図を創ることができるのと、平面的であることをおそれなくてもいいという利点を見出して、好んで描いたのかもしれないと想像することができます。つまり、創造主として画面を創造するには、彼にとっては、このようなスタイルがやりやすいと。さきほどの「菊の花」のような作品あるギコチなさは、すくなくとも「からすうり」や「葡萄」では、かなり薄くなって気になりません。
Takashimagreap  おそらく、高島の作品(というより高島というキャラクターの画家)には熱狂的なファンか、そうでないかという二極化する傾向がありそうなので、これはウェブ上での展覧会のコメントを眺めていると、そう考えられます。それは「からすうり」のような作品を素直に凄いと感動してしまうか、わざとらしいと距離を置くか、岐れると思います。
Pradojan

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