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2016年12月 4日 (日)

ジャズを聴く(40)~ハンク・ジョーンズ「ザ・トリオ」

Jazhank  ハンク・ジョーンズはピアノ奏者。ニュー・ヨークやシカゴといった大都会に比べると地方都市ということになるデトロイトで、ローカルなジャズ・シーンを作っていた小規模な人の輪の中から、何人かのメジャーなミュージシャンが輩出された。その中心にいたのが、彼ハンク・ジョーンズを長兄とする兄弟で、他にも、サド・ジョーンズ、エルヴィン・ジョーンズは彼の弟に当たる。一方、ピアニストであるハンク・ジョーンズの周囲には、同じようにバド・パウエルのスタイルに影響を受けたピアニストが集まった。バリー・ハリス、トミー・フラナガンといった人々。彼らは、パウエル派ということで一緒くたにされて、これらのピアニストたちは、他のプレイヤーのサイドメンとして伴奏をつとめることが多かった等の事情があって似ている点が多い。これは、彼らの演奏そのものではないが、彼ら、3人のピアニストは、3人とも“玄人受けするミューしシャン”とみなされている点で共通している。つまり、彼らの魅力は、ある程度ジャズを聴き込まないと分からないものであり、ジャズのイロハを知っているくらいのリスナーには、演奏全体から放たれる雰囲気、ソロに特徴的なダイナミクスや、聴き手の想像力を掻き立てるスタイルの違いを味わうのは難しい、ということだ。彼ら3人とも、若いころは他人の伴奏で数多くのレコーディングに参加している点でも共通していて、そのせいか、バリバリ弾いて、自分の個性を強烈に主張するタイプでなく、共演者を引き立てながら全体の演奏を組み立てていくところも似ている。そういう演奏の性格から特徴的な個性、これといったものを、分かり易く呈示してくれていない。そういうところが“玄人受けするミューしシャン”と称されてしまう由縁だろうと思う。
 とはいえ、ハンク・ジョーンズというピアニストに個性がないということはない。そうでなければ、ジャズ・シーンで生き残ることはできなかったし、メジャーなピアニストとして称賛される存在にはならなかったはずだ。と言うこともあり、なかなか分かり易いとはいえない、彼の演奏の特徴について、バリー・ハリスやトミー・フラナガンと比べながら述べていくと、多少は分かり易いかもしれない。
 ハンク・ジョーンズは尊敬するピアニストとして、ファッツ・ウォーラー、アート・テイタム、バド・パウエル、アル・ヘイグの名前をあげているという。彼の演奏スタイルは、基本的には、1930年代末から40年代初頭にかけて流行したテディ・ウィルソンやナット・キング・コールのスタイルから派生したものと言われている。そこが単純にパウエル派と決めつけられない点だ。彼のハープのように軽快なタッチは、鍵盤を叩くのではなくピアノの弦を爪弾いているように聞こえる。また、優雅に抑制されたシングル・トーンのスタイルは、バド・パウエルの影響によりその美意識を再構築したものだ。これによって、彼は、どんなスタイルの演奏でも合わせることができだけでなく、アーティ・ショウからジャッキー・マクリーンまでどんなスタイルの器楽奏者をも、刺激し鼓舞することもできる柔軟性を備えることができた。例えば、キャノンボール・アダレイのアルバムでの「枯葉」の洗練された伴奏に、その典型的な演奏を聴くことができる。その控えめで繊細なところはトミー・フラナガンに似ているところもあるが、ソロの部分では上昇するフレーズと下降するフレーズをうまく結びつけて、アダレイのサックスに滋味を加えている一方で、器用にファンキーなタッチをまじえて、ビートを後押しするようにリズムを強調するといったアクセントを巧みに加えている。
 パウエル派といえば、ワイルドなサウンドを前面に出すようなイメージがあるが、ハンク・ジョーンズは穏やかで、無理に出しゃばることなく、共演者をうまくサポートしながらも、ときおりキラリと個性を光らせるタイプといえる。
The Trio    1955年8月4日録音
Jazhank_trio  When Hearts Are Young
 We Could Make Such Beautiful Music Together
 We're All Together
 Cyrano
 Odd Number
 There's a Small Hotel
 My Funny Valentine
 Now's the Time
 Hank Jones (p)
 Kenny Clarke's(ds)
 Wendell Marshal(b)
 ハンク・ジョーンズの脂の乗りきった頃の録音……と書くと、ガンガン弾くように思われるかもしれないが、しっとりとしていながらキラキラ光るタッチがたまらなく良い。ジョーンズのプレイは、迫力を大きな売り物にしていた当時の主流的なジャズとは一線を画するものだった。その主流というのは、バド・パウエルで代表されるように、勢いのあるタッチとスピーディーなフレーズをスタイルの特徴にしていた。その中で、ジョーンズのブレイはむしろ穏やかなサウンドに個性を表出するタイプのものだった。ハープのように軽快なタッチは、鍵盤を叩くのではなくピアノの弦を爪弾いているように聞こえる。そのようなタッチで弾かれるのは、優雅に抑制されたシングルトーンのスタイルだった。
 サヴォイ・レーベルのセッション録音で多くのソロ・プレイヤーをサポートしていたメンバーで構成されたハンク・ジョーンズのトリオは、息の合った演奏で穏やかなジョーンズのピアノを引き立てている。そのようなサポートを得て、ハンク・ジョーンズは絶妙なスイング感に加えてよく歌うフレーズを駆使し、ご機嫌なソロを繰り広げる─上品なサウンドであるが、ジャズの醍醐味やスリリングな展開も認められる。ミディアムテンポの曲では、滑らかなペースと完璧な手首をコントロールしたブラッシュがスキップしながら歩いているようだ。バラードでは、華麗で軽くかき鳴らすコードと鈴のようなオクターブを使ったピアノのメロディラインと絡み合って、クッションの効いた音楽を作り出している。

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