ウォーレン・バフェット「株主への手紙」2016(5)~保険業(1)
保険業
バークシャーのさまざまなビジネスについて、最も重要な分野である保険から始めましょう。我々が1967年にナショナル・インデミニティとその姉妹会社ナシャナル・ファイエ・アンド・マリーンを860万ドルで買収して以来、この分野は我々の拡大成長を牽引したエンジンでした。今日、自己資本で量ると、ナショナル・インデミニティは世界最大の損害保険会社です。
我々が資産事故保険ビジネスに引き付けられた理由のひとつは財政的な特徴からでした。資産事故損害保険業者は前払いのプレミアムを受け取り、後で請求に対する支払いを行います。極端な場合、極端な場合には、アスベスト曝露に起因する請求など、支払いは何十年にもわたって伸びる可能性があります。このような、今現金を受け取り、支払いは後になるモデルでは、我々の手元に多額の「フロート」と呼ばれる現金が据え置かれることになります。最終的には、そのお金は我々の手元を離れることになるのですが。一方、我々がこのフロートを投資に振り向けることで、バークシャーは利益を得ることができます。ここの方針や主張は行ったり来たりしますが、保険会社が抱えるフロートの総額はプレミアムボリュームに関して安定しています。その結果、我々のビジネスは、フロートに応じて成長しました。我々がいかに成長したかは、下に表しています。(下の表は省略)
我々はフロートを1000億ドル以上に増やすことになる巨額の保険契約を最近締結しました。以前の増加以上にガイコや我々の専門の商業保険でのフロートは、このよい機会に増加することは、ほぼ確実です。しかしながら、ナショナル・インデミニティの再保険部門では、たくさんのランオフ契約を保持しており、これらのフロートが不安定で落ち込む可能性があります。
我々が将来のフロートの低下を経験するとしても、それは非常に段階的で、数年で3パーセントを以上にはならないでしょう。我々の保険契約の性質は、我々の持っている現金資源に比べて、それを上回るような金額を即時に支払わなければならないような要求を受けることはあり得ない、というものです。この構造は設計によるものであり、保険会社の傑出した財務力の中の重要な要素です。 それは決して損なわれません。
プレミアムが我々の費用と最終的な損失の合計を上回っていれば、フロートが産み出す投資収益を加え、我々は引受業務利益を計上します。このような利益が産み出されるとき、我々は自由なお金の運用を喜びます。さらにこれを増やしながら、後の支払いを待ちます。
残念なことに、このような幸福な結果を成し遂げたといいう保険業者の願望は、激しい競争を引き起こします。ほとんどの年に競争は活発であるため、損害保険業界全体に大きな引受業務損失を起こすほどです。この損失は、事実上、業界がフロートを保持するために支払うようなものなのです。競争のダイナミズムは、保険会社に対し、すべての会社がフロート収入を持っているにもかかわらず、アメリカの企業と比べて水準を下回る収益しか得られないという惨憺たる記録を続けることを強いています。
この結果は、現在世界中に存在する劇的に低い金利によって、より確実になります。 バークシャーはそうではありませんが、ほとんどすべての損害保険会社の投資ポートフォリオは債券に集中しています。これらの高利回りのレガシー投資は成熟し、控除された債券に取って代わられるため、フロートからの収益は着実に低下します。 こうした理由からも、今後10年間の業績は、特に再保険に特化した企業の場合、過去10年間の業績には及ばないと断言できます。
それにもかかわらず、私は我々の見通しをとても好ましいものと思っています。 バークシャーの圧倒的な財務力は、損害保険会社に一般的に利用可能な投資よりもはるかに柔軟な投資を可能にします。 私たちが利用できる多くの選択肢は常に有利です。 時折、彼らは私たちに大きなチャンスを与えてくれます。 他の投資家が柔軟に投資しにくくなる時、我々の選択肢が広がります。
さらに、我々の損害保険会社は、優れた引受実績を有しています。バークシャーは14年連続で引受業務利益を上げてきて、この期間の税引き前利益の合計は280億ドルにも達しました。その実績は偶然ではありません。規律あるリスク評価は、貴重なフロートがひどい引受け結果によって台無しになってしまう危険をよく知っている保険マネージャーたちの毎日の注意点なのです。このメッセージは保険業者の間ではお世辞として受け取るものですが、バークシャーにおいては宗教的心情になっています。
それで、我々のフロートはどのような我々の本質価値の計算に影響するのか?我々のフロートはバークシャーの帳簿価格を計算する際には負債として完全に差し引かれます。ちょうどそれは、我々が明日払わなければならなくって、それを補充するものがない時のように。しかし、それはフロートを表示するには誤った方法で、回転資金として置き換えて見られるべきです。毎日のように、我々は古い請求への支払いを行い、2016年には600万人以上の請求者に対し合計で270億ドルになり、フロートを減らしました。同じようにたしかに、我々は毎日のように新たな保険契約を結び、それによってフロートを加えるあらたな請求を引き起こします。
もし、我々のフロートの回転にコストがかからなくて、それが永続するのであれば、私はそれはありえると思いますが、この責任の本当の価値は会計責任に比べ劇的に少ないものになるでしょう。新規事業は代替品を届けることは確かなため、建物の外に出ることのない1ドルを借りることは、明日ドアを開けて出て行って帰ってこない1ドルを借りることとは違います。しかしながら、このような負債の二つのタイプはGAAP(一般会計原則)では同じものと見なされます。
この誇張された負債を部分的に相殺するのは、資産として帳簿価格に含まれる保険会社に対する”のれん”に起因する155億ドルです。非常に大きな部分において、この”のれん”は、我々の保険事業のフロートを生み出す能力に支払った価格を表しています。しかしながら、”のれん”のコストは本質的価値とは関係がありません。例えば、もし、保険ビジネスが大規模で持続的な引受業務損失を生み出してしまうのならば、それに起因する好意資産は、当初の導入コストがどれだけかかっていても、意味がないと考えざるを得ません。
幸いにも、バークシャーはそうではありません。チャーリーも私も、我々の保険業務の”のれん”の本当の経済的価値を信じています。だから、継続的な運用価値の超過額が大きくなるかぎりで、我々の持つフロートとよく似た性質のフロートを持つ保険業務を購入するのに喜んで支払います。実に、我々の保険事業においてうまく運用された155億ドルのほとんどすべてが、すでに2000年の我々の帳簿に存在していたのです。しかし引き続き当社はフロートを640億ドル増加させましたが、これは我々の簿価に決して反映されていきせん。それは、我々がバークシャー固有の本質的なビジネス価値が帳簿価格を大幅に上回っていると考えている理由、しかも大きな理由です。
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