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2017年5月30日 (火)

オルセーのナビ派展「美の預言者たち─ささやきとざわめき」(4)~3.親密さの詩情

Nabisbolnald2  最初のところで、ナビ派の特徴として日常的なことを主題としたという特徴が説明されていたのを引用しましたが、そのまさに日常生活の風景を親密さというキーワードで作品としたものが展示されているということでした。
 ピエール・ボナールの「ベッドでまどろむ女(ものうげな女)」という作品です。タイトル名や女性のポーズからみて情事の後の情景ということなのでしょうし、その女性のポーズが扇情的なのでしょうけれど、まるで、シーツのしわと同じように見えます。裸の女性が恥ずかしげもなく両足をひろげて、恥毛をあらわにするというポーズは、かなり扇情的で、それなりの意図や覚悟でもなければ、当時では描くようなものではない者ではないかと思います。しかし、この女性の上方のシーツのしわでつくりだされる模様と右方の毛布の形と、女性のポーズはよく似ていて、とくに女性が浮き立たせるようには描かれていないので、それらが色違いの模様のように見えます。ここにあるのは、たしかに日常の情景かもしれませんが、それを冷たく観察していて、描いている対象の女性に対して、シーツや毛布と同じように分子レベルで観察しているような、親密さの感情など微塵も感じられない機械のセンサのような情報処理です。
Nabisvallotton  フェリックス・ヴァロットンの「化粧台の前のミシア」という作品です。ヴァロットンは2年以上前に、同じ美術館での回顧展で見ましたが、このようにして他の画家たちに比べると、その時に見えてこなかった特徴が際立つように思いました。その時には、フラットな画面に見えていたのが、いま、ドニやボナールの作品の平面性と比べると、はるかに立体的で、空間を感じさせる画面になっているのが分かります。しかも、二人に比べると見た目の形が明確です。化粧台、女性、背後の箪笥の位置関係とそれぞれの輪郭がハッキリしています。しかし、ヴァロットンの特徴としては、それがハッキリしすぎている点ではないかと思います。実際に目で見て、これほどまで書き割りのようにくっきりしていると、むしろあざとく映ってきます。そのあざとく映っているところでは、リアルのある部分をスッパリと切り捨てている。むしろ、切り捨てすぎているところに、冷淡に映るところがあるかもしれません。例えば、化粧台や箪笥、あるいは壁に建て付けられた棚は定規で直線をひいた図面のようですし、化粧台に置かれたブラシや櫛のような小物は、見る者がそれと分かるような明確な形で表わされていて、リアルな写生とは異なるものです。端的に表われているのが人物。化粧台の前にいる女性です。この女性は外形の情報を、画家なりの処理により、そのまま画面に転写したというのではなくて、実際に情報を取得しているのではなくて、女性らしき形を入れているように見えます。書き割りのような装置のなかで、いかにもそれらしいポーズ(かたち)の女性がレイアウトされている。それは、現実の日常生活の情景というよりも、演劇の舞台に設定されたホームドラマの風景のようです。ここで展示されているドニやボナールがセンサで情報を取得したままを描こうしていたのに対して、ヴァロットンは見る者の立場に立って描いているように見えます。多分、ブルジョワの小市民の生活なのでしょうが、それを伝統的な歴史画や宗教画の重厚な描き方で描くと、壮大で重苦しいものになって、わざとらしく窮屈になってしまいます。それを等身大で(この展覧会でいうと親密さ、ということになるだろう)描こうとして、このようなスタイルになっている、そういうように描いている。そこにヴァロットンという人の屈折というのか、一筋縄ではいかないところがあると思います。それは、同時に展示されているエドゥアール・ヴュイヤールの「エッセル家旧蔵の昼食」の家庭風景と比べてみると、特徴が際立つと思います。Nabisvoul

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