無料ブログはココログ

« アドルフ・ヴェネフリ展 二萬五千頁の王国(2)~第1章 初期作品 | トップページ | アドルフ・ヴェネフリ展 二萬五千頁の王国(4)~第3章 地理と代数のノート »

2017年7月17日 (月)

アドルフ・ヴェネフリ展 二萬五千頁の王国(3)~第2章 揺りかごから墓場まで

Walflinegel  ヴェルフリがつくった物語が「揺りかごから墓場まで」というもので、そこで描かれていた作品が展示されています。しかし、一般に物語の部分として描かれた絵画というのは、その物語の場面を再現するものではないでしょうか。ここで展示されている作品には、そのような場面を描いたものはありません。いや、もしかしたら、見ている私がそのように見ていないからなのか。ヴェルフリは物語の場面として描いたのか、分かりません。
 「ネゲルハル(黒人の響き)」という作品です。たしかに、「ニュー=ヨークのホテル・ウィンザー」が文様の組合せのようだったのに比べると、画面の下半分は円周上に建物や岩山のような形態が見分けられるようになっています。しかし、それは、物語の一部を切り取って、その中で起こっていることを、その物語の登場人物か、あるいはその人物を物語の中で近くで見ている人間の視点で写しているものには見えません。物語から距離をおいて、鳥瞰的に見渡して、物語の宇宙全体を描いているのか。あるいは、この作品のあちこちに頭に十字をのせた顔が描かれていますが、まるである種の神学の主張するような神が遍在するようなかんじで、あらゆるところに、この顔がいて、その顔があらゆるところから、あらゆるものを見て、それを画面に写し換えたとでもいうような感じがします。言わば、描いているヴェルフリは、物語でも現実世界でもこっち側でなく、あっち側に行ってしまって、そこからこっち側を描いているような感じです。それが、色鉛筆によって彩色されていると、絵の具と違って原色に限定されて、色を混ぜたり、グラデーションを施すことがほとんどないので、均一に塗られていると、極彩色に塗り分けられるようです。しかし、色鉛筆の色は、絵の具のような鮮やかさがなくて、彩色された極彩色はくすんだような、色褪せたような仕上げになっています。そのような色彩の感じられ方で、文様化された宇宙のような画面は、仏教の曼荼羅に似たものに見えてきます。「デンマークの島 グリーンランドの南=端」という作品では、山の形をした宇宙、まるで須弥山のかたちをなぞった曼荼羅のようです。また「氷湖の=ハル〔響き〕.巨大=都市」という作品では、おそらく湖を上から鳥瞰的に見下ろして、湖を楕円に文様化して、全体を描いていますが、まるで胎蔵界曼荼羅のようです。
Walflidenmark  実際のところ、このような複雑に構成されたものを、ヴェルフリは、どのようにして制作したのでしょうか。新聞用紙をそのまま使っているので、画面の大きさとしては、新聞を広げた大きさで、鉛筆で描いていくには、小さいとはいえない大きさです。そこに、曼荼羅のような複雑なものを描いていくわけですから、全体をこのように描くというイメージが固まって、それで画面全体を設計するというのが、普通、想像できます。しかし、そうであれば、下書きのスケッチとか、試し書きとかいったものが残されていてもいいはずです。そうでなければ、大雑把に下書きを施して、何度も修正をしながら、描き進めていくといったやり方でしょうか。ところが、実際の作品には消しゴムをつかった形跡が全く見られないのです。消しゴムを使えば、紙の表面が削られた跡が残りますし、消し切れない鉛筆のあとが残っているはずです。そのような痕跡がまったく見つからないのです。だから、ヴェルフリは下書きもしないで、修正や描き直しをすることなく、ぶっつけ本番で一気呵成に描いていったとしか思えないのです。実際の作品において鉛筆で引かれている線をみても、迷いなく引かれているようなのです。下絵をなぞったような中途半端さはなくて、勢いがあって、しかも、その勢いは一定しているのです。ヴェルフリは確信をもって線を引いているようにしか見えない、そんな線です。淡々として、疾るでもなく、かといって途中で止まることもない。ぶれることなく、真っ直ぐに伸びていて、力も一定で、途中で太さが変わることもない。定規にあてて引いたような機械的なところはなくて、おそらくすべてフリーハンドなのでしょうか機械的なところは全くありません。つまり、線が生きているのです。この線を見ているだけでも、この人が描くということについて高い技量をもっていることが分かります。そして、もしかしたら、この複雑な構成を一発勝負で描いてしまったのであれば、かれは、その点だけでも天才だったと言ってもいいのかもしれません。それほど、ちゃんと表現として出来上がっていると思います。
Walfliice_2

« アドルフ・ヴェネフリ展 二萬五千頁の王国(2)~第1章 初期作品 | トップページ | アドルフ・ヴェネフリ展 二萬五千頁の王国(4)~第3章 地理と代数のノート »

美術展」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/564097/65546850

この記事へのトラックバック一覧です: アドルフ・ヴェネフリ展 二萬五千頁の王国(3)~第2章 揺りかごから墓場まで:

« アドルフ・ヴェネフリ展 二萬五千頁の王国(2)~第1章 初期作品 | トップページ | アドルフ・ヴェネフリ展 二萬五千頁の王国(4)~第3章 地理と代数のノート »