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2017年10月30日 (月)

斉藤章佳「男が痴漢になる理由」

斉藤章佳「男が痴漢になる理由」を読みました。

全部と言いえないが、多くの痴漢は一種の依存症で、“いじめ”とよく似ている。痴漢をする人は、変態性欲の持ち主や性的な欲求不満のたまった人というより、むしろ、逮捕者の最大公約数は「四大卒で会社勤めをする、働きざかりの既婚者男性」つまり、どこにでもいる普通の男性だという。それは、きっかけがあれば、男性なら誰でも痴漢の常習者になる、という。

では、きっかけとは何かといえばストレスだという。勤勉で、ストレスを抱えながらも熱心にコツコツ仕事をするような真面目な男性で、その一方何らかの劣等感を抱えていて自己肯定感が低い人は人間関係が不器用で、ストレスを抱え込んで発散できず、それを誰かに相談できず、しまいには孤立化し、自暴自棄に陥る。その時に、自分より弱い存在を支配したり、押さえつけたりすることで、自分を取り戻す。痴漢は、自分より弱い存在として女性を捉え、いやがることをして、追い詰め、傷つけ、征服し、その結果として優越感を得る。職場や家庭で抑えつけられていると感じている者にとって計り知れない刺激だ。それでストレスは吹っ飛んでしまう。これは“いじめ”のおこる構造とそっくりだと著者はいう。

このように女性を弱い存在とみてしまう。それは男性は女性より上位に立つ存在という深層意識がある。いま、そんなことを口に出すのものはいない。しかし、弱っている時に心の底の本音が出てくる。その本音を作っているのは、日本が、じつのところそういう社会だから、ということも大きく要因している。痴漢の被害者である女性が泣き寝入りしてしまうことに、強い問題意識が社会で共有されていないのがそのあらわれだという。

“いじめ”の加害者がいじめたことを忘れてしまい加害者意識を持っていないのに、被害者は傷つき、トラウマとして一生傷を抱えたり、自殺してしまうことと、痴漢の加害者と被害者との関係はそっくりだ。痴漢の加害者は女性を被害者と考えないという。そこに性的なものは成立しないだろう。

これを読むと、私にも痴漢の常習者に陥る危険に、常に晒されていると、怖ろしくなるほどだ。ただし、痴漢は依存症という見方を過大にすると、すべてが病気のせいとなって被害者は救われないことになるだろう。痴漢が生まれるのは社会の男尊女卑の度合いを量るものさしであるというと、日本という社会の状態が恥ずかしくなる。

 

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