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2017年12月 9日 (土)

没後40年 幻の画家 不染鉄(1)

2017年7月 東京ステーションギャラリー

Fusenpos 決算を巡る一連の行事や書類の提出、届け出も終わり、この時期は担当部署の一服休憩となるため、各処でセミナーが開かれる、この時期に情報収集をしておこうというもの。そのひとつに出席のため都心に出た。猛暑日の続く陽気で、炎天下に歩きたくないのと、ポスターを見て興味を覚えていたので、立ち寄った。また、些細なことかもしれないが、東京ステーションギャラリーは午後6時まで開館しているので、他の美術館の5時閉館と比べて、この1時間がとてもありがたい。この猛暑の陽気で、平日の閉館前の1時間という時間帯のせいか、館内はそれほど混雑するほどでもなく、落ち着いて作品を鑑賞できました。

さて、不染鉄という聞きなれない画家については、パンフレットに紹介されているので引用しておきます。

不染鉄(1891~1976年)は、稀有な経歴の日本画家です。20代初め、日本芸術院研究会員になるも、写生旅行に行った伊豆大島・式根島で、なぜか漁師同然の生活を送ります。しかし、3年が経つと、今度は京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)に入学。特待生となり、在学中第1回帝展に入選、首席で卒業した後も、度々帝展に入選を重ねますが、戦後は画壇を離れ、奈良で晩年まで飄々と作画を続けました。これまで美術館で開かれた回顧展は、21年前の唯一回だけ。その画業の多くは、謎に包まれてきました。

不染の妙味は、見えないはずのものも見通す俯瞰と接近の相俟った独特な視点にあります。太平洋に群れ泳ぐ魚から雄大な富士山を越えて、雪降る日本海の漁村まではるかに広がる本州を表した作品や、蓬莱山を思わせる切り立った孤島に、幾重にも波頭が打ち寄せ、波間に一艘の舟がたゆたう様を描いた作品は、不染鉄の心象風景であり、秀逸な筆致で表現された世界が、見る人を画中へいざなうようです。また、老境に入り、自らの生い立ちや日々の暮らしの光景を描き、幼いころの思い出や母への思慕の情を書き添えた作品には、「いい人になりたい」と願った不染の無垢な思いが満ち溢れ、優しく語りかけてきます。

別のところで、

その作品も、一風変わっています。富士山や海といった、日本画としてはありふれた画題を描きながら、不染ならでは画力と何ものにもとらわれない精神によって表現された作品は、他のどの画家の絵とも異なり、鳥瞰図と細密画の要素をあわせ持った独創的な世界を作りあげています。

このような紹介では、不染鉄という画家の経歴のユニークさと作品の独創性ということを強調しているようです。ここで、はじめに私の個人的印象を簡単に述べて、ここの作品を見て行くことにしますが、不染鉄の作品は、至極真っ当、正統的と言えると思います。この展覧会を通してみていると、一貫した流れがあって、その基に、不染鉄が都度の作品で試みや挑戦を繰り返している。そして、その一貫した流れというのは、彼の引く線ではないかと思えたのです。ごく初期の習作時代には、家の輪郭などで部分的に表われてきますが、本人も、意識的ではなかったように見えます。それが絵画専門学校の卒業制作の「冬」では顕著になり、本人も自覚していることが分かります。それは、筆でなのでしょうが、ペンでもあるかのような硬質な感じがします。しかし、ペンの硬さにはないしなやかさが秘められているような。強靭さと繊細さをあわせ持つ印象の細いが、しかし明瞭でくっきりした線です。この線こそが、他の画家にはない、不染鉄の独特のものではないかと思えるのです。この線では、どうしても明確な形の輪郭を要求されるということで、それに適した題材として建築物や構築物といった人工的な構造物、その典型的なものとして家屋が選択された。さらに、明確な線によって細かい描きこみが求められ、無地の余白とかぼかしによる朦朧としたというように明確さのない効果は求められなくなった。その結果として作品が出来上がって行ったというストーリーが思い浮かびました。その意味では、主催者の紹介にある画家像とは少し異なる、表層の画面のロジックが貫徹しているという印象です。むしろ、そう見える画面からは、ユニークな経歴とか幻の画家といったことは見えてきません。

このような視点で作品を見ていきたいと思います。

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