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2018年2月 8日 (木)

ジャコメッティ展(8)~7.マーグ家との交流

Giacomettimag  「マルグリット・マーグの肖像」という、ジャコメッティにしては珍しい油絵。これは、今回の収穫だったと思います。この作品を見ていると、ジャコメッティという人は色彩のセンスが全くなかった人であることが良く分かります。もしかしたら、独特のセンスの持ち主で、あまりに独特すぎて、誰にも理解できなかったのかもしれません。乱暴にグレーが塗りたくられたような背景に、女性の肖像が描かれていて、比較的大きなキャンバスの真ん中の女性の顔だけに描線や塗色があつまって、その他の部分はおざなりのようで、画面としてつくろうという気配が全くない。しかも、顔の部分はひとつの線を引くのにかなりの観察と考慮と決断に時間をかけているテンションの高さは何となくわかるのだけれど、この顔は人間の顔の形の要素は充たしているのだけれど、人の顔の形をした人でない異形に見えてくるのです。それは、人の存在が持っている本質的な不気味さとか、怖ろしさとかが普段は隠されているのを抉って見せたというのではなくて、そうであれば、そういうものを描こうとする意図が最初からジャコメッティが持っているはずなので、画面全体をそういう描き方で意図的にまとめていくはずです。そうではなくて、彼は顔を描いていくうちに、そうなってしまったという感じがします。譬えとして少しズレているかもしれませんが、目の前の対象を写生しようとして、鉛筆の線で描いていくうちに、なかなかキマらず、満足な線の描写を求めて線を重ねるように何本も線を引いているうちに、紙の上は線で真っ黒になってしまって、顔がその真っ黒の中に埋まってしまった。そんな感じが、この肖像の顔に感じられるのでした。この作品は放っておくと、そうなってしまうのを、時間切れか、周囲がやめさせたか何かで、突然、制作の途中で中断させられて、後は投げ出されたので、かろうじて人の顔の形の描線が残ったという気がします。それだけに、私には、ジャコメッティという人の、ある点では病的なところを、この作品で垣間見ることができたと思います。しかも、いかにも病的というものでなくて、さりげなく普通っぽく提示されているところに、彼の病気の底知れぬ不気味さを感じることのできるものです。
 私には、何点も展示されていた、ジャコメッティというブランドを示しているような独特の細長い彫刻よりも、この油絵一点が、もっとも強く印象に残りました。

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