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2018年3月10日 (土)

池田学展「The Pen─凝縮の宇宙」(8)~Chapter6 誕生 Rebirth

Ikedarebirth 今回の最大の目玉です。池田の最新作にして、最も大きな作品。テレビのドキュメンタリーで制作風景が紹介され、東日本大震災とその復興というテーマ性もあって、今回の展覧会の話題性の大きな要因ともなった作品です。「誕生」という日本語のタイトルは英文では「Rebirth」つまり“再生”といった意味合いになっています。この展示に限っては、撮影可能ということで、スマートフォンのカシャカシャというシャッター音が絶え間なくきこえてうるさいほどでした。画像なんか自分で撮らなくても、ネットに捨てるほどころがっているし、大きさとか画像には映しきれない細部などの実物をリアルに肉眼で確かめることでしかできないことをやったらいいのに、と思いました。それは、ある意味で池田の作品の根本的な性格を、図らずも多くの人が意識しないでも、察していたかもしれません。端的に言うと、ベンヤミンが「複製技術時代の芸術」で言っていた芸術作品の現物にしかない“アウラ”があまり感じられない。実物とコピーの差があまり感じられないという点です。それは必ずしも悪い意味ではなくて、それによって、大衆性というのか親しみ易いものとなっていると思います。なによりも、メッセージ性の強いテーマで、画面下半分が津波に遭ってがれきとなった、いわば廃墟の生々しい風景を延々と描いているのですから、作者の強い思い入れが込められて、ややもすると主観的な主張が鼻についてしまってひとりよがりになったり、みているだけで重苦しくなってしまう危険があるのですが、この作品では、むしろ作者のメッセージ性のようなことは感じられないようになって、人々が見やすくするような一種のエンタティメント的なものが考えられて、惨事を突き放したような客観的な視線に結果的になっているということが言えると思います。

Ikedarebirth2 池田はインタビューへの返答の中で、震災を知らないアメリカの子どもたちが、瓦礫の風景のひとつひとつに悲壮感を受けることなく、「あ、こんなところにクルマがあったよ」とか「大きなコーヒーカップだ、遊園地かな」といって楽しんでみていたと言っています。子どもたちが、そのようなことを言ったと思われる箇所の画像がありますが、それを見ると、自動車は潰れてひっくり返っていますが、周囲の白い人影は、瓦礫を片づけでいるのか負傷者を助けているのかしているのかもしれませんが、そこで遊んでいるようにも見えなくもありません。そこでは突き放したように描き方がされているからで、この奥の方では畑を耕している、おそらく復興の風景なのでしょうが、それが地続きのようになっていることで、行き詰った悲惨さよりもポジティブに感じというのか、そこから白い人影が戯画的な雰囲気もあることからユーモラスな印象を見る人が感じることができるようになっていると思います。

Ikedarebirth6 さて、画面を鳥瞰的に見ていくと(何しろ3×4mという大画面で、画面の中は細かいものがびっしりと描きこまれているので、全体をひと言で言い表すことは不可能だと思います。)下の方が大波と、それに侵されて瓦礫となった風景が延々と描かれていて、色調は土色や灰色です。それが上方に行くにつれて緑が加わって、増えてきます。それに沿うように畑や再建といった復興を感じさせる部分が混じってきます。ちょうど画面中央のあたりに白い線が見えますが、吊り橋をラクダのキャラバンが渡っているというような光景で、そこから上は花咲く風景、おそらくは復興への祈りということなのでしょうが、つまり、下から上にいくに従って、悲惨さから復興の希望へという流れを見ることはできると思います。

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