内部監査担当者の戯言(6)
前回は前置きだけで終わってしまいました。それが内部監査と何の関係があるのかという感じでした。最初から愚痴めいたことを書きます。それをストレートに書きたくないので前置きをしようとして、長くなったのが前回でした。
先日、連結の内部統制として子会社の監査に赴いたときのことです。この監査は通常の子会社監査とは少し事情が異なるもので、昨年度末に買収して新たに子会社となったのを、はじめて訪問するというものでした。実は、私の勤め先では、外部の会社を買収するなどということは初めてのようなもので、それの買収した会社を内部統制の対象とするなどということも初めて。買収に際して、デューデリジェンスなんぞもやっていて、ある程度の情報もあるのではありますが、実際のところ、内部統制とか監査については実質的には白紙のような状態で、まずはどうなのかを見て、どうするかを考えようという監査というわけでした。このとき、社外取締役(監査等委員)も同道して、一緒に見ましょうというわけでした。
それで、その子会社の経営陣にヒヤリングしたり、社内を見学したり、決算書や諸規則を閲覧したりと、まあ、時間も限られていたし、初めて訪れるというので、通り一遍の調査をしました。
ひと通り終わって、その会社を辞したあと、その社外取締役と話したのですが、
「この会社どう思いますか?」
と私が尋ねると
「どう思うって?わからないよ。情報もないし、チェックリストもないのでチェックしようもない」
という答え
そこで、私は
「では、どのような視点で情報を集め、チェックリストを作っていけば良いとおもいますか?」
とあらためて、思ったこと、あるいは感じたことを尋ねたつもりが
「言ったじゃない、情報もないし、チェックリストもないのでチェックしようもないのに、この会社のことを調べられないし、分かるわけないじゃない」という答え。
最初から、この会社に対しては白紙の状態であることは分かっていて、そもそも、どのように調べていくか、突っ込んでいくかを探りに会社を訪問したわけで、それが、調べてあることを前提にしたチェックリストがないと調べられないという答えに、唖然としてしまいました。
それで、では雰囲気とか、感じたことはと尋ねたら、そんなことは基準が明確でなくて答えられないとのこと。でも、その基準をこれから考えていくために訪問したわけですから。
これでは、卵が先が鶏が先かのどうどうめぐりになってしまいそうだったので、そこでやめましたが。
さらに言うと、取締役というからには、会社の方針といったことをつくって決めていくのが大きな職務であるはずで、経営もそうですが、あらかじめ作られている基準のとおりにやっていけばいいというものではなくて、絶えず変化して、今までにない状況に直面するようなことも多々あり、そのつどどうするかを新たに考えていくという、その考えることが大きな役割のはずだと思います。したがって、このときの新たに子会社となった会社の内部統制として、連結の体制の中で、どのように統制していくかというひとつの経営方針の一環でもあるわけで、それをつくるために当の会社を訪問して、基準がないから分からないと言われて、かなり唖然としてしまいました。私は、取締役でも経営者でもなく、一介の使用人に過ぎませんが、それでも数点の視点を用意して、それについて議論をしようと思っていたのですが、やめました。
それと、この議論の時の考えを表わすことには、ある程度のリスクが伴うことになりますが、それを真っ先に負うのは、この場合取締役になるはずで、それが取締役の責任であるはずで、使用人は、その責任、ということは権限を伴いますから、その権限にしたがって行動するというのが筋です。
これ以上書いていくと、この取締役の人に対する中傷と区別がつかなくなりそうなので、このへんでやめます。ただ、この取締役の行動も、長年子会社として関係していて、問題のないことが明らかな会社であれば、それでもかまわないので、このような行動が外形的に適切でないというわけではないのです。ただの何のためにとか、それが会社にとってどうなのかということを考えると・・・。つまり、価値合理性と目的合理性ということで、ここはまとめておくことにします。
最後にひとつ、つけくわえると、内部監査をするということを、私は、できれば目的合理性という点で考えて、進めていきたい、もっというと、そうすべきではないか、と考えています。そのような視点で、このことについて、思ったことなどを、今後、時折、綴っていくつもりです。
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