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2018年4月25日 (水)

ある会社の決算説明会

 何年も前にIR関係の業務をしていたときに知り合って、お付き合いが続いている市場関係者のご厚意で、某電子部品メーカーの決算説明会を見学してきました。以前にも何回も説明会に出席した会社でN社としておきますが、最近、スケジュールが合わなかったので、久しぶりの出席ということになりました。創業者の名物経営者が後継者を指名したことが新聞記事を賑わせていましたが、その後の最初の決算説明会ということで、いつも満員の会場は、さらに盛況で、テレビカメラも入っていたようです。質問者の中には、いつもはいないテレビ局の女性記者が立っていました(ただし、場違いな質問で失笑を買っていましたが)。そのせいもあってなのか、私がそういう目で見ているからかなのか、普段の決算説明会で業績についての具体的な説明や質疑応答の場面が少なくなって、その代わりにその経営者の経営方針とか経営姿勢のようなことを話す部分が目につきました。とは言っても、この経営者は現場たたき上げの人なので、抽象的な経営哲学とか道徳じみた経営姿勢のような建前を説教するタイプではないので、経営の長期的な戦略とか方向性といった形で話していましたが、いつもは話さないような、その戦略がでてくるファンダメンタルな発想とか、経営の見方を話していました。
 例えば、海外のメーカーを買収して、数年で利益率10%から15%の高い利益率にしてしまうことについて、そういう会社の経営者というのは、ビジネススクールで経営学を修めて数字の計算には強いけれど、そこで枠をはめられていて、メーカーであれば業界標準といったようなデータを鵜呑みにしてしまって5%くらいの利益率という発想しかできなくなっている。また、工場をプロフィットセンターと見ないで、営業が取ってきた注文のアフターフォローとしか見ない。だからマーケティングで戦略を熱心に考えるだけでおわってしまう。工場に足を踏み入れることもない。そこに限界があると言います。そこに乗り込んで、工場こそが利益を生み出すとして、生産現場の改善に地道に取り組むと、あっという間に生産効率が上がって利益率が好転するし、それを踏まえた全体的な戦略を進めていくと会社全体が変わっていくと言います。それは、赤字を出している会社では短期的に顕著に効果が現われると言います。むしろ、5%くらいの中途半端な利益率の会社の場合は経営トップが現状に自信を持っているので、それ以上の利益率を求めても現実的と考えないので、時間がかかると。この経営者の持論として、会社にはどんなに優秀な社員がいても、トップがすべてということに収斂するといいます。だから、買収した海外のメーカーの場合も、トップに発想の転換をさせるか、それができない人は替えてしまうそうです。
 製造業のマーケットについての長期的な見方も開陳してくれました。自動車の業界はガソリンエンジンから電気自動車になると、一気にコモデティ製品化してしまうだろうと言います。というのも、ガソリン車の場合にはエンジンというコアの部分が各自動車メーカーが長期にわたって培った技術とノウハウがそれぞれにあって、これが製品の個性になっていたと、他方でそれが参入障壁になっていた面もあると。ガソリン車はそのエンジンというコアに従うようにサスペンションをはじめ末端の部品まで適合させる製品でした。しかし、電気自動車のモーターはエンジンとはちがって、デジタルで機械的なところは規格化されてしまって、どこでも同じようにつくれてしまうものです。スマートフォンやパソコンと同じようにハードはどこのメーカーも変わらないものとなって、ソフトウェアやデザインの差が各メーカーの製品の差ということになるそうです。そうなると、下請けだった部品メーカーは、ガソリン車の場合には自動車メーカーのエンジンに適合した、地同社メーカーに特化した部品を作って、系列に入っていました。だから、売り先は、その自動車メーカーに限られて、生産規模も限界があった。そこで大量生産のスケールメリットでコストを下げようとしても、売上先が限定されて、売れ残ってしまうことになっていた。それが、電気自動車になると一気にコモデティ化してしまうので、部品はパッケージ化された標準的なものが各自動車メーカーが共通に使うようになってきます。その時には、大量生産でコストダウンした部品メーカーが競争に勝つことになる。しかも、自動車メーカー1社だけでなく、すべての自動車メーカーに提供できるような大量の生産と、即時の要求に応える必要があります。そのためには、従来の部品メーカーでは、生産設備を従来の数倍の規模に拡大しなければなりません。そのための設備投資の資金を調達しなければならないし、資金があっても、生産設備や人材を調達、それは会社の規模を数倍に拡大することです。その時に市場競争に勝てば、おさらく独占的にシェアを確保できることなると言います。それは、パソコン市場でインテルが、ライバルを蹴落として、パソコンメーカーを支配してしまったと同じようなことが起こるといいます。この会社は、電気自動車がガソリン車に取って代わるときに、大規模な業界再編が起こると考え、それを好機に、一気に市場トップになる戦略だとして、そのために大規模工場の手配を今から着々と進めていると言います。
 こういう話が、次々とでてきて、ビジネススクールのケーススタディよりも面白かったです。

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