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2018年5月25日 (金)

水口剛「ESG投資 新しい資本主義のかたち」

 ESG投資は、E(環境)S(社会)G(ガバナンス)という要素を組み込んで投資判断を行うことを言う。より多くのリターンを求めるというのが一般的な投資の動機とすると、EMG投資は公共性とかリスク・コントロールという投資の本筋からは外れているように映る。しかし、投資家の多数派がアセットオーナー、その多くが公的年金や企業年金で、実際の投資は運用機関に委託しているが、年金は今20代で年金を払い始めた人が60歳を過ぎた後で数十年にわたり老後の年金を受け取ることができるようにしなければならない。そのため短期的な大儲けを求めることより長期的に収益を継続させることを優先する。しかも巨額の資金を擁して幅広い企業に分散投資をしている、実際には市場のほとんどの企業に投資することになってしまっている。だから、特定の企業というより、経済全体に投資しているようなものだ。例えば、目先のコストを嫌ってCO2対策を忌避した企業は、個別の投資先としては一時的な利益を生むかもしれない。しかし、それによって地球温暖化が進んで、異常気象や海面上昇で経済全体が損害を被ることになると、10年後には、結果として全体としてのポートフォリオは悪化する可能性が大きい。
 一方2012年のイギリスのケイ・レビューでは、多くのイギリス企業にとって株式市場はもはや新規の事業投資のための重要な資金調達の場ではなくなっている。それは日々の事業活動を通じて十分な資金を得られるからだ。それでは、株式市場に上場している意味がないではないか、ということになると、そこで重要になってきたのはガバナンスに関与をうけること、リスク・コントロールを先取りすることだと報告している。それがサスティナビリティーといわれるもので、それが日本でも言われるようになってきた。
 ESG投資の概要を理解するには、概論として手頃だと思う。
ただし、この著作では、それが例えば実際に投資リスクに入って来ているとすれば、企業の側でも資本コストの計算が影響を受けるはずだが、そういう実践的なことの説明は触れられていない。それが、説明の説得力ほイマイチにしている。

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