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2018年7月 1日 (日)

ルドン─秘密の花園(7)~6.蝶の夢、草花の無意識、水の眠り

Redonprofile3  「花の中の少女の横顔」という作品です。ドムシー男爵の食堂装飾もそうですが、ルドンは花を描いた作品を多く残しました。この作品も、それらのうちの一つでしょう。しかし、ルドンの描く花は、例えば先日見たブリューゲルの描いた花のように、精緻に描き込まれた写実的な花ではありません。むしろ、今までルドンの作品を見てきて、その流れで見てみると、花というのは、事物としての柔らかく輪郭が金属や岩石のようにかっちりしていない、固体といっても流動的な要素もある、不定形になりそうなものと見えてくるように思います。花が多数描かれている背景は、淡い色調の多様な色で彩色されていているので、モノトーンのグラデーションで何もないように見えていた作品とは異なるような印象を受けます。そう多彩な色をつかっているので色の変化で、花が描かれていることが分かるということになっている。それがバックのグリーンのグラデーションの中に溶け込んでいるような画面の状態です。これは、ブリューゲルや他の画家もそうですが、花と距離を置いて対象化して、それを観察したものを画面に再現するといRedonorpheus う描き方をしていると思います。これは写実的な作風の画家に限らず、モンドリアンが樹木を抽象画にしたときも、樹木を観察していて樹木の形象を抜き出して、それを抽象化していったものです。これに対して、ルドンの場合は花と距離を置いて対象化するというのではなくて、花に囲まれた中で、捉えているという描き方をしているのではないか、ブリューゲルにあるように距離感がないのです。間近に花があるというのでしょうか。モノを目に近づけすぎると焦点を合わせられず、ぼんやりしてしますますが、ルドンの作品の輪郭が明確でないのは、それに近い目の感じと言えます。中央の少女の横顔は、この背景と対比させるためのものでしょうか、ルドンの描く人物はおしなべてそうなのですが、生気がなくて、また、先ほど見た「Ⅲ.不恰好なポリープは薄笑いを浮かべた醜い一つ目巨人のように岸辺を漂っていた」の一つ目などの方が生き生きとしています。不定形の引き立て役程度のものでしょう。「神秘」という作品も同じように見ることができます。
Redoncompossion  「オルウェウスの死」という作品。竪琴と一体化したようなオルフェウスの頭部が画面の中心にあります。しかし、この絵で視線が行ってしまうのは背景の白一色の世界で、そのグラデーションによって生い茂る何枚もの葉を描いているところですが、葉の丸い形は、おそらくオルフェウスが水面に浮いているだろうことから、水滴か泡か、どちらにも見えるようです。一方白い背景は、画面下の青と緑との境目が曖昧で、おそらく青は水面で、緑は水草かなのかなのでしょうが、そういう空も水も草地も境目がなく融合してしまっているような渾沌が、視線を上に上げると白のグラデーションが見えてくる。そういう意味では、多彩な色彩で描かれた不定形が溶け合うようにして渾沌となっている。見る人に渾沌とは思わせないのが、オルフェウスの頭部が中央に描かれているからではないかと思います。
 「コンポジション:花」という作品は背景の部分を画面全体にした作品といえるでしょう。いわば、このコーナーで見てきた、背景の対比として人物の肖像を画面中央において、いわば空虚な中心となって背景との対比関係を作っていた。その人物の肖像を取り去ったのがこの作品で、背景の部分をストレートに出した作品です。それだけに、今までの作品よりもルドンの特徴が純粋に表われているのではないかと思ったりもしますが、何か全体の印象が、他の作品には感じられなかったゴテゴテした感じがします。そう考えると、逆に他の作品では、空虚な人物が画面の中心にあることで、抜きの機能を果たしていて、画面がゴテゴテした感じになる事を抑えていたかもしれないと思いました。

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