日産のゴーン氏の事件について思うこと
日産の有価証券報告書の虚偽記載の件、といっても何のことやら、という人には、カルロス・ゴーン氏の役員報酬の開示を偽ったとして逮捕された事件について、若干述べます。
最初に、ゴーン氏ではなくて日産の件としたのは、有価証券報告書を実際に作っているのは日産という会社であるはずだからです。常識では、有価証券報告書というのは日産が記載するというものです。新聞やテレビのニュースの報道で、「ゴーン氏が」というようにゴーン氏という個人が主語になるとしたら、記載させたというのが普通のはずです。ゴーン氏が実際に書いているわけではなく、日産のしかるべき部署の担当者が作成したからです。以前、西武鉄道の有価証券報告書の虚偽記載が発覚した時は、当時の堤会長が書かせたと報じられたはずです。日産の場合も、有価証券報告書の虚偽記載となるはずなのに、ゴーン氏の個人の犯行のように報じられているのは不思議です。なぜでしょうか。そういう、変なところがあります。事件そのものについても、その報道についても。
役員報酬の額について、ゴーン氏から申告された額を有価証券報告書に記載されているように報じられています。そこで思うのは、日産の経理ってそんなにいい加減なのか?ということです。だって報酬を払っているのは日産なんだからゴーン氏から申告してもらう必要がどこにあるのでしょうか。ゴーン氏が一人で役員報酬の額を決めていて、誰も、その金額を知らなかったということですが、普通に考えれば、ゴーン氏が報酬額を独断で決めたとしても、その報酬金額をゴーン自身が銀行窓口に振込依頼しに行くとは到底思えません。少なくとも事務処理、経理処理を日産の社員の誰かがしているはずです。その時点で、ゴーン氏がいくらもらっているかは分かるはずではないでしょうか。それを帳簿につけて決算をするわけです。だから、有価証券報告書に役員報酬の記載をするのに、ゴーン氏に申告してもらう必要なんてないはずです。かりに申告してもらったとしても、それが正しいかどうかを帳簿で確認すれば、間違っていることが分からないはずがない。それが分からないのは、なぜか。だから、会社が組織的にやっていたと考える方が自然なのです。それをゴーン氏と仲間の代表取締役の二人の個人がやったことにされている。もっと言えば、監査法人の会計士が何も疑問に思わなかったのも変。それで、他の取締役がゴーン氏がいくらもらっていたか知らなかったというのは、知ろうとしなかったに等しい。何か変です。
そして、この事件で一番重要だと思うことは、そもそも、有価証券報告書というのは企業が責任を持って決算を公的に公開するものです。それについて、たとえ会長といっても、その言っている数値が検証や確認されずに記載されたようなのだということです。つまり、一番の問題は、有価証券報告書の役員報酬の数値がゴーン氏の言ったとおりに虚偽が記載されていたのが事実とすれば、他にもそういうところがあるかもしれない、その可能性があるということは容易に想像できてしまいます。例えば、会社の業績、つまり粉飾ということになるのです。そうなってしまったら、日産の決算が信用できないことになる。だから、この虚偽記載がどのように行なわれたかを明らかにすることが重要なので。虚偽ができるのは役員報酬に限ってなのか、それともすべての数値でも、できてしまうか、ということ。つまり、今、日産という会社の信頼が根底から揺らいでいると思うのです
しかし、そういうことに報道は興味がないのか、追究しようとしません。役員報酬額が高いかとか、日産の末端の社員を捕まえて感想をきくとか、かつてリストラした人のことを引き合いだすとか、あるいはルノーとの合併の話とそれに伴う陰謀の話とか、上述の事件の核心から話を逸らすかのように、混ぜっ返すような報道をしていて、報道は何をやりたいのか(役員報酬に関する報道の内容は、無知が露呈していて、知識がないからいえるような見当外れなことを報道していて、人々を誤解に誘導しているとはっきり言えます。)、これではフェイク・ニュースと言われても仕方がないのではないかと感じています。
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