無料ブログはココログ

« イギリス風景画の巨匠 ターナー 風景の詩(1) | トップページ | イギリス風景画の巨匠 ターナー 風景の詩(3)~第2章 海景─海岸国家に生きて »

2018年11月10日 (土)

イギリス風景画の巨匠 ターナー 風景の詩(2)~第1章 地誌的風景画

Turner2018maln  若い頃のターナーは、個々の土地や地形を正確に再現、記録することを目的とした地誌的風景画を描くことに取り組み、画家としての出発は素描家、水彩画家だったそうです。言ってみれば、見ればそことわかる絵葉書的な風景を正確に丹念に仕上げたという職人仕事のような作品です。
 「マームズベリー修道院」という17歳の水彩画ですが、慥かに上手いのだろうと思います。しかも、19世紀のロマン主義の廃墟趣味が入っていて、ピクチュアレスクな演出もある。これは受けるだろうなあ、と思います。
Turner2018road  ここに展示されている地誌的風景画というのは、上の「マームズベリー修道院」は若描きの作品だからと別にすれば、写真で言うと広角レンズで撮影したような横長の画面に左右にひろがっていくような構図になっています。しかも、そのほとんどで画面の中央を遠近法の消失点のようにして、その中心がへこんで、画面の左右の端に建物や樹木、あるいは山岳の崖が屹立するように迫力をだしていて、中央にむけて、それがへこんでいくと、視線がそこに導かれるようにして、奥行きを感じるとともに、その向こうへ視線を誘導されるようになっています。たいていは、画面真ん中の下部、つまり見る者には手前と感じられるところに人の姿が描かれていて、それが見る者に親近感とか、身近に感じさせる、つまり見る者の側に近いところにいて、そこから、その上の方の消失点に見る者の視線が導かれていくと、その点の先、つまり向こう側は何も描かれているわけではありませんが、向こう側、つまり彼岸といっていいのか、ある意味、現実の人が行くことのできない憧れとか、憧憬の先のようなもの、それが画面下の手前に感じられるところから、そこに見る者の視線が導かれるように構成されています。例えば、「並木道、フTurner2018stanford ァーンリー・ホール」という作品では広い道の両側には並木が左右から被さっているようになっていて、それで道が薄暗くなっていて、真ん中はその道が向こうに向けて真っ直ぐに、向こう側にのびています。その伸びた先は明るくなっています。その向こうに向けて、人が一人、こちらに背を向けて歩いています。また、「スタンフォード・リンカシャー」という作品では、町の風景ですが、大通りの両側は並木ではなく建物です。向こうに伸びている道の先には教会の塔がそびえています。
 「ソマーヒル、トンブリッジ」という作品は、この展示コーナーでも最大の作品のひとつですが、上述のパターンの変形で、両側から真ん中にへこんでいくのと反対に、両側からまんなかに凸っていくという逆パターンなこと以外は、パターンとおりです。手前の池の水面の透明な水の感じなどは、巧いひとだなあという印象がとても強いですね。
全体として、このコーナーの作品をみていると、たしかに上手いし、人々に受け容れられてTurner2018somarhill 評価されているのは分かります。しかし、このために入場料を払って、わざわざ出かけてまでも見たいと思うかどうか、そういう作品になっているのか、そういう作品、と私には思えます。

« イギリス風景画の巨匠 ターナー 風景の詩(1) | トップページ | イギリス風景画の巨匠 ターナー 風景の詩(3)~第2章 海景─海岸国家に生きて »

美術展」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« イギリス風景画の巨匠 ターナー 風景の詩(1) | トップページ | イギリス風景画の巨匠 ターナー 風景の詩(3)~第2章 海景─海岸国家に生きて »