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2019年1月10日 (木)

ルーベンス展─バロックの誕生(7)~Ⅳ.神話の力1─ヘラクレスと男性ヌード

Rubence2018heracles  ここから、階段で上のフロアに上がります。ここは一つの部屋に向かい合うように男性ヌードと、次のコーナーの女性ヌードが展示されていました。いってみれば人体表現、しかも理想化されたものが集められたと言うべきでしょう。この男性ヌードの格好の題材としてルーベンスがよく取り上げたのがギリシャ神話のヘラクレスです。
 「ヘスペリデスの園のヘラクレス」という作品は、2.5×1.3mというサイズの、それほどの大画面ではなく、ルーベンスが早い筆遣いでさっと描いたものと考えられます。それだけに、荒さがある反面で躍動感に溢れています。ギリシャ神話で、ヘラクレスはヘスペリデスの園のゼウスの妻であるヘラの所有する樹から黄金の林檎を手に入れるという難題に挑戦して、みごとに成し遂げます。この作品でのヘラクレスは、足元に樹を守る竜を踏みしめ、右腕を伸ばし、それとバランスを取るために頑丈な肉体の体重を右足にかけて、一方の左足は力を抜いて曲げています。この姿勢は、当時はファルーネーゼ宮殿にあった、古代ギリシャの彫刻家リュシッポスによって制作された「ファルネーゼのヘラクレス」から引用されたものと説明されていました。慥かに、ポーズはよく似ています。この彫刻は、もはや若くない英雄を、功業の結果疲労困憊した姿を表わしたものとされているそうですが、ルーベンスは、そRubence2018heracles2 の彫刻に対して沢山の素描を、数々の異なる視点から行い、細部に至るまで分析し、創造の根本あるアイディアを知るために、各部分を幾何学的な形態に換言した図像も試みたそうです。この古代彫刻にはミクロコスモスとでも言うような万物を支配する調和の秩序が反映したがゆえに普遍性を備えた完全な姿であるとして、ルーベンスは、その秘密を古代の人々に倣って幾何学を活用して分析しようとした。それが正方形や長方形や三角形という幾何学的図形を当てはめて、彫刻のスケッチを行ったといいます。その姿を引用するように描いた、この作品のヘラクレスは、したがって普遍性のある完全無欠の理想を表わそうとしたものと言えるかもしれません。たしかに、画面いっぱいに描かれたヘラクレスは、画面そのものは大画面でもないのに巨大さを強く印象付けられます。人間の姿形で描かれていますが、人間を超えた巨大な印象です。それは、同時に展示されていたグイド・レーニの「ヒュドラ殺害後休息するヘラクレス」が同じように古代彫刻のポーズをとっているのですが、ルーベンスに比べると、すっきりとしていて、美しい人体の姿という印象で巨大さを感じさせないのと対照的です。つまり、同じように理想的な人間の肉体を二人とも描いているのに、グイド・レーニは美しい人体の印象なのに対して、ルーベンスは人間の姿をしているのに人間を超えた巨大な何ものかになっているのです。その違いはどこにあるのか、私には明確なことは言えません。あくまでも印象の違いとしか言えません。
Rubence2018heracles3

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