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2019年2月10日 (日)

ムンク展─共鳴する魂の叫び(8)~4.魂の叫び─不安と絶望

Munchscream  フロアがかわって、長いエスカレーターを上ると、そこだけ特に人々が集まっている展示室となります。通路は柵で囲まれて、警備員が沢山いて、立ち止まらないで下さいと絶えず注意している。おそらく、ムンクの一番有名な作品が展示されているところで、この作品目当ての人が大半なのだろうと思います。
 「叫び」です。“ムンクの最も有名なモチーフである「叫び」は、人間が抱える実存的な不安と孤独と絶望の象徴となっている。オスロ・フィヨルド上空の日没時の空が見せる鮮烈な感覚を、ムンクは心の内の混乱を表わす革新的なイメージへと転換させたのだった。この絵画を観る者は、叫びとは、人間の口から放たれ、風景の中へと拡散し、それを揺り動かし、さざ波を立てていくものだと見なすかもしれない。だが、自然が叫び、両耳をふさぐ人物に激しく襲いかかっていると考えることもできるだろう。ムンクの芸術家としての感受性は、都市の匿名性や資本主義における疎外という、近代社会のもたらす副作用に反応した。彼が描いた鋭く叫びたてる人物は、自然からも、社会からも、そして内なる彼自身からも孤立しているのである”と説明されていました、この作品は程度の差があっても、このような方向性で鑑賞されてきたものではないかと思います。というより、こういう作品であるという意味づけが出来上がり、それが情報として広く膾炙して、そういうものだとして、この作品の前に立つ。そして、その情報を確認する、あるいは確認したつもりになる。そういう対し方をするのに、たいへん都合よくできている作品ではないかと思いました。このような説明を読まずに、タイトルの知らないイノセントな状態で見た場合に、そういう見方をするのかどうか。例えば、渦巻き模様で構成された奇抜なデザインと見ることもできます。ムンクの絵画は、ベタッと色を平面的に塗って、しかも、その塗りにムラがあって、それが面を塗ると筆の幅の波のような模様が画面に残る。それを逆に利用して、縞模様だったり渦巻き模様が何か意味ありげに見えてしまうような画面を結果として作りだす。この作品では、その渦巻きを人物にも意図的に応用している。そういう見方もできます。伝記的エピソードでムンクは精神のバランスを崩して療養生活を送ったとされているので、引用した説明のような解釈をされているようですが。そういうように筆を動かしていくのを身体的に楽しんで描いたかもしれません。私には、画面の粗さなどから、そんな感じがしなくもないのです。引用した説明にあるようなことについて、実際の作品には、そういう不安とか孤独といっことを描いているにしては、画面から執拗さとか、そういうのを描こうとする迫力が感じられないのです。画面の仕上げがぞんざいに見えるのです。意図的に、このような粗い画面にしているとは思えず、そうなってしまった、という印象なのです。
 しかも、この作品が評判という先入観で接するパターンで扱われるということについて、画家はある程度意識的ではなかのかと、私には思えるのです。というのも、このような奇抜な、どちらかという気を衒ったような構成の作品は、初めて見る場合のインパクトは大きいのですが、それが強ければ強いほど、長く作品をみていれば慣れてしまってインパクトが薄れてくると、飽きてしまうものです。流行というのは、それによって起こる現象です。この作品は初見のインパクトを明らかに狙っていると思います。それは、ムンクという人の画家としての商売の方法にも適していると思えるからです。ムンクは個展をヨーロッパ各地に巡回しておこない、その入場料を主な収入としていたということです。各地を巡回するわけですから、同じ場所にずっと展示していて、人々に長く見てもらうことを狙っているものではないのです。それは、寺院の半永久的に飾られる宗教画や家が存続する限り邸宅に飾られる肖像画などとは違うのです。一定期間人々の前にあって、しかも、その期間内にできるだけ多くの人を集めることを目的とする。そのためには、刺激が強く、人々の話題になる方が適しています。人々が飽きる頃には、他の場所に移ってしまうわけですから。そういう目的には、この「叫び」という作品の画面のデザインは都合がいいと思います。そして、各地で飽きないうちに巡回して、見た人々の前から見ることができなくなってしまうと、言葉による感想だけが残り、それが評判としてのこり、しかも、口コミとして流通する。しかし、作品は巡回してみることができないので、情報が独り歩きします。まるで、ブランド品のマーケティング戦略と同じです。

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