ムンク展─共鳴する魂の叫び(1)
去年の11月はじめに東京都美術館で見てきた「ムンク展─共鳴する魂の叫び」感想です。

おそらく代表作「叫び」は絵画好き以外の人にもひろく知られていて、ムンクという画家は知る人も多いので、こんな画家という紹介は無用だと思いますが、一応、展覧会の主催者のあいさつの一部を引用します。“ノルウェーの由緒ある家系に生まれたムンクは、病弱だった幼少期に家族の死を体験し、やがて画家になることを目指します。ヨーロッパ各地で活動しながら世紀末の思想や文学、芸術と出会うなかで、人間の内部に迫る象徴主義の影響を強く受けながら、個人的な体験に根差した独自の画風を確立し、ノルウェーの国民的画家としての地位を築きました。愛、絶望、嫉妬、孤独など人間の感情を強烈なまでに描き出した絵画は、国際的にも広く影響を及ぼし、20世紀における表現主義の潮流の先駆けにもなりました。本展覧会には、ムンクの代表作《叫び》(1910年?)が出品されます。世界一有名な絵画というべきこの《叫び》”には、技法や素材、制作年の異なるヴァージョンが4点、その他に版画作品も現存します。オスロ市立ムンク美術館所蔵のテンペラ・油彩画の《叫び》は、日本では本展覧会で初めて公開される作品です。さらに、ノルウェーへの思慕が漂う美しい風景画や、肖像画、明るい色彩が印象的な晩年の作品などをあわせて展示し、画家の幅広く豊かな創造活動を紹介します。時代を越えて私たちを魅了するムンクの芸術を、この機会にぜひお楽しみください。”

例えば、ムンクの作品は《叫び》だけを見ていると突出して独自というのか、それを通り越して奇矯にすら見えますが、他の作品と並べて時系列でもいいから見ていくと、同時代の他の画家たちとの共通性がけっこう見えてきます。人の顔を平面にしてしまって、色の配列のようにしてみるのは、同じ北欧のシャルフベックと共通するし、これも代表作の「不安」と言う作品などは、アンソールの仮面を並べたようなカーニバルの絵画によく似ています。そういうところから、人間の内面とかいうよりも、造型の面で同時代の影響の中である傾向に流れていった画家で、主催者あいさつにある“。愛、絶望、嫉妬、孤独など人間の感情を強烈なまでに描き出した絵画”という評判は、見た人が勝手に感じたのを画家が、それを煽って作品に付加価値をつけたように思えたのでした。そういう私の個人的な印象ですが、個々の作品を追いかけながら、具体的に述べていきたいと思います。
« エドワード・ヤン監督の映画「恐怖分子」の感想 | トップページ | ムンク展─共鳴する魂の叫び(2)~1.ムンクとは誰か »
「美術展」カテゴリの記事
- 没後50年 鏑木清方展(5)~特集2 歌舞伎(2022.04.06)
- 没後50年 鏑木清方展(4)~第2章 物語を描く(2022.04.05)
- 没後50年 鏑木清方展(3)~特集1 東京(2022.04.02)
- 没後50年 鏑木清方展(2)~第1章 生活を描く(2022.04.01)
- 没後50年 鏑木清方展(1)(2022.03.30)
« エドワード・ヤン監督の映画「恐怖分子」の感想 | トップページ | ムンク展─共鳴する魂の叫び(2)~1.ムンクとは誰か »
コメント