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2019年2月 3日 (日)

ムンク展─共鳴する魂の叫び(1)

 去年の11月はじめに東京都美術館で見てきた「ムンク展─共鳴する魂の叫び」感想です。 
Munchpos  東京都美術館のホームページの展覧会の案内ページには混雑が予想されますという表示があった。他の展覧会案内でも、混雑を予想していた。そんなに人気がある画家なのかと訝りながらも、ちょうど展覧会が始まって1週間と経たないうちに大手町に用事があり、夕方に片付いた。東京駅で午後4時過ぎの時間。昼間でもないし、いまなら空いているかも知れないと思って、出かけてみた。しかし、行ってみたら、入場の順番待ちこそなかったが、会場内は作品の前に黒山の人だかり、人気作を見るには列の順番待ち。とくに、展覧会ポスターにも使われている、有名な「叫び」を見るには策で囲われた通路に1列に並んで、警備員が立ちどまらないで下さいと説明する中で人垣から垣間見るというもの。展覧会というよりイベントに近い。そういうタイプの画家なのかと、あまりの人気に面食らって帰って来た。
 おそらく代表作「叫び」は絵画好き以外の人にもひろく知られていて、ムンクという画家は知る人も多いので、こんな画家という紹介は無用だと思いますが、一応、展覧会の主催者のあいさつの一部を引用します。“ノルウェーの由緒ある家系に生まれたムンクは、病弱だった幼少期に家族の死を体験し、やがて画家になることを目指します。ヨーロッパ各地で活動しながら世紀末の思想や文学、芸術と出会うなかで、人間の内部に迫る象徴主義の影響を強く受けながら、個人的な体験に根差した独自の画風を確立し、ノルウェーの国民的画家としての地位を築きました。愛、絶望、嫉妬、孤独など人間の感情を強烈なまでに描き出した絵画は、国際的にも広く影響を及ぼし、20世紀における表現主義の潮流の先駆けにもなりました。本展覧会には、ムンクの代表作《叫び》(1910年?)が出品されます。世界一有名な絵画というべきこの《叫び》”には、技法や素材、制作年の異なるヴァージョンが4点、その他に版画作品も現存します。オスロ市立ムンク美術館所蔵のテンペラ・油彩画の《叫び》は、日本では本展覧会で初めて公開される作品です。さらに、ノルウェーへの思慕が漂う美しい風景画や、肖像画、明るい色彩が印象的な晩年の作品などをあわせて展示し、画家の幅広く豊かな創造活動を紹介します。時代を越えて私たちを魅了するムンクの芸術を、この機会にぜひお楽しみください。”
Munchscream  慥かにムンクは代表作の「叫び」で知られていますが、それゆえにムンクのイメージが固定化してしまっているところもあり、ムンクという画家は「叫び」だけではないということを控えめに述べているようです。かといって、有名な「叫び」を外すことはできない、そんなアンビバレントなところが主催者あいさつに表われていると思います。実際のところ、「叫び」がなければ、この展覧会の入場者数はかなり減ってしまったでしょうから。したがって、主催者あいさつでは控えめな言い方になってしまいますが、カタログの中では、「ムンクをめぐる神話」としてストレートな言い方がされていました。少し長くなりますが、その思いが伝わるものなので引用します。“ムンクといえば、まず有名な《叫び》と結びつける人が多いだろう。いまやこのモティーフは、現代人が抱える不安や疎外感を表わす普遍的なシンボルとなっている。印象的なこのイメージは、説明なくただちに理解できるだけでなく、人間の存在の根幹に関わる何かを私たちに訴える。こうした性質ゆえ、《叫び》は近代芸術における最も象徴的なイメージの一つとなり、度重なる盗難被害やオークションでの記録的価格による取引によってさらに知られるようになった。《モナ・リザ》のように、《叫び》はポップ・カルチャーにおいてもたいへん人気があり、《叫び》をコピーしたり、改変したさまざまな作品が制作されている。そのイメージはホラー映画から政治的な風刺画に至るまで、あちこちで目にすることができる。だが、作品の人気はムンクの「苦悩する芸術家」という側面だけを強調してしまう。本展への来場者は、そうした単純で省略された見方でこの画家を捉えるのではなく、より深い知識と、ニュアンスに富む理解をもって、ムンクの新たな側面に触れることになるだろう。”
 例えば、ムンクの作品は《叫び》だけを見ていると突出して独自というのか、それを通り越して奇矯にすら見えますが、他の作品と並べて時系列でもいいから見ていくと、同時代の他の画家たちとの共通性がけっこう見えてきます。人の顔を平面にしてしまって、色の配列のようにしてみるのは、同じ北欧のシャルフベックと共通するし、これも代表作の「不安」と言う作品などは、アンソールの仮面を並べたようなカーニバルの絵画によく似ています。そういうところから、人間の内面とかいうよりも、造型の面で同時代の影響の中である傾向に流れていった画家で、主催者あいさつにある“。愛、絶望、嫉妬、孤独など人間の感情を強烈なまでに描き出した絵画”という評判は、見た人が勝手に感じたのを画家が、それを煽って作品に付加価値をつけたように思えたのでした。そういう私の個人的な印象ですが、個々の作品を追いかけながら、具体的に述べていきたいと思います。

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