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2019年2月11日 (月)

ムンク展─共鳴する魂の叫び(9)~4.魂の叫び─不安と絶望(2)

Munchdespair  「絶望」という作品は、「叫び」の隣に並んでいました。背景が同じではないか、って、ムンクってこういう人なのだ、やっぱり。この作品と「叫び」とは同じような背景にした前面に異なる人物を配しただけの違い、そこで画面全体の印象が変ってくる。画面の背景や人物といった各部分がモジュールのようで、それを組み替えて別の作品を仕立て上げる。まるで、共通のシャーシをプラットフォームにして異なるボディーを乗せて、別々の車種の自動車を製造する工場のようです。この作品男性は、前のコーナーで見た「メランコリー」の横顔の男性の角度を変えてみたものではないか。だから、モジュールとは言いましたが、この作品での前面の男性は、完成したものではない。「メランコリー」の男性と同じモジュールであるとしても、この「絶望」で使われている男性は、言ってみればモジュールとしてのイメージがより独立したものとなっている。それはマンガのキャラクターが物語が進むにしたがってキャラクターとしての個性が明確になって、作品の中での役割が固まってくる、つまりキャラとして成長するのと似ています。また、そのようにキャラが固まった後で、以前の「メランコリー」のような作品を見直してみると、男性のイメージがより明確になっMunchmelan ているというような視点が変化しているので、見え方が変わってくる。そういった作品について、見方のヴァリエィションが生まれてくる。ということは、ムンクの作品は、ひとつの作品として完結していない、と言えるかもしれません。喩えて言えば連続ドラマの第1話のようなものとして個々の作品がある。では連続ドラマ全体というのは何かというと、そのシリーズを一括したまとまりとして展示する巡回個展です。それによってムンクというブラントイメージを確立していく。
 木版画に着色を加えたヴァージョンの「不安」という作品が、「叫び」と「絶望」と並んで、3点が特別に展示されていました。おそらく、ムンクが画家としての生活の糧とした個展でも、このようにシリーズものとして並んで展示されていたのでしょう。ムンク自身展示の作品の配置には気を遣っていたといいます。ここでも同じ背景の「叫び」と「絶望」が並び、関連性があるように、見る人は思い、そこに何らかのものがたり性を見出そうとするでしょう。映画におけるモンタージュのMunchivy 手法とよく似た効果を作り出している。映画で全く関係ない二つの場面を続けると、見る者はそこに自身で意味づけを施して物語を作っていく。例えば、俯いて元気のない人の姿の後に、おいしそうな料理の映像を繋げると、前に映っていた人は空腹だったのかと、見る人は想像すると、そこに物語が生まれるのです。ここでも、「叫び」は単に顔をゆがめているだけで、どうして叫んでいるのかは画面の中では、何も描かれていません。見る人は、そこに不安とか孤独といったことを読み取るのでしょうが、それは並んで展示されているのが、孤独に俯く「絶望」や「不安」という作品であることから、連想して絶望や不安と叫ぶことを結びつけて見てしまう。「叫び」については作品に意味を盛り付けていく。一方、「絶望」については、作品の中の人物は俯いていますが、内心は「叫び」のような顔を歪めているような状態にあるというような想像をするようになる。つまり、これらの作品を並べることで、それぞれの作品の画面の内容を相互に盛り合わせしていっている。
Munchasole  「不安」については、この正面を向いた人物が、互いを認識する素振がなくて、それぞれが前を向いているというのは、ジェームズ・アンソールの作品に通じるところがあると思います。ただ、アンソールの作品は躁状態とでも言った方がいい祝祭的なハイテンションであるのに対して、ムンクの場合は各人の孤独を想像させる欝状態といえるところが違います。この不安をモティーフにした一連のシリーズでは、前のコーナーで見た一連の作品が森や海岸といった自然と結び付いていたのに対して、町の通りや橋、道路といった都市や近代的な生活と結び付いたものとなっています。それが極端な遠近法を用いた構図で、前景と後景の間に大きな断絶を生み出し、とくに「赤い蔦」では建物の壁面を真っ赤に塗りつぶして色彩で強烈な印象(家を圧迫するよう塗られた鮮やかな赤は、それが燃えているように思わせるほどの効果を持っています)を作り出し、不快で緊張感溢れる雰囲気を醸し出しています。
 その「不安」と似たような感じは「赤い蔦」という作品の人物にも言えると思います。

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