パリに生きた銅版画家 長谷川潔 展─はるかな精神の高みへ─(5)~Ⅳ.長谷川潔と西欧の画家・版画家
長谷川が好んだり、彼に影響を与えた西欧の作家達の作品ということです。
「アレキサンドル三世橋とフランスの飛行船」という1930年のメゾチント作品です。正面前景にセーヌ川とアレキサンドル三世橋を、左側にエッフェル塔を、パリの街並みの水平線とエッフェル塔に区切られた空間がまるで額縁のようになって、その真ん中に飛行船が浮かんでいます。飛行船の上下に水平に伸びる雲が飛行船を焦点にして水平の枠を絞るような効果で、見る者の視線を飛行船に導くようになっています。川沿いのポプラ並木が画面に奥行きを感じさせ、橋の手前の小船から立ちのぼる雲が画面に動きをもたらします。並んで展示されていたシャルル・メリヨンの 「パリのポン・ト・シャンジュ」と構図が似ているとのことですが、受ける印象はまったく違います。メリヨンの版画はメゾチントではないからかもしれませんが、写生で画面を整えましたという印象ですが、長谷川の画面は現実の風景を写しているのでしょうがリアルな印象がなくて人工的なつくったという感じがします。表面上はまったく似ていませんが、アンリ・ルソーの絵画に似た感触を覚えるのです。
「チューリップと三蝶」という1960年のメゾチント作品。後のコーナーで見るマニエル・ノワールの静物画のひとつだと思います。長谷川のアトリエにはルドンが描いた三匹の蝶水彩画が飾られていたそうです。蝶は友情と愛、そして復活を意味し、地面にしっかりと水漬くチューリップを讃えるように漆黒の中で舞う三匹の蝶が神秘的な、何かありげな雰囲気に満ちています。
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