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2019年4月 8日 (月)

パリに生きた銅版画家 長谷川潔 展─はるかな精神の高みへ─(1)

 今年の3月に町田市立国際版画美術館で見てきた「パリに生きた銅版画家 長谷川潔 展─はるかな精神の高みへ─」の感想です。
 町田市立国際版画美術館は、私の生活路線から外れたところにあって、しかも駅から歩くと急勾配の坂を下りていくので、距離的には近いのだけれど、足が向くことは少ない。ちょうど、出張帰りで羽田空港に降り立ったので、疲れはあったけれど、横浜まわりで町田によることができることと、展覧会ポスターの画像を見て興味を持っていたので、無理して寄ってみることにした。郊外の美術館の平日の昼間とあって、来館者はこの作家の愛好者か時間に余裕のある高齢者と思われる人が目につく程度、思った以上に人数はいたが、それにしても都心の美術館の人気の展覧会に比べるべくもない。出張の疲れで、集中力を保つことはできなかったけれど、落ち着いた雰囲気で静かに過ごすことができ、それは作品の雰囲気に沿うものだったと思う。
 さて、私は、長谷川潔という作家のことはよく知らないので、この展覧会の主催者あいさつを引用します。“パリで創作活動して評価を得た銅版画家、長谷川潔(1891~1980)の作品を122点を展示し、その精神的表現世界を再考します。また長谷川が敬愛したルドンや、フランスで交流のあった画家らの作品45点を展示することで、長谷川の創作活動の背景を探りつつ作品の特徴や内容を浮き上がらせます。長谷川は1910年代半ばに版画家として創作活動を開始、1918年に日本を去ってフランスへ渡って以来パリを拠点に活動しました。サロン・ドートンヌやフランス画家・版画家協会に所属してパリの画壇で高く評価されたほか、フランス文化勲章を授与されるなど、芸術家としての功績がたたえられています。現在は、日本でも版画史上きわめて重要な作家として位置づけられています。町田市立国際版画美術館は開館まもない1988年に、フランス時代の代表作を多数含んだ長谷川潔の銅版画を約70点収蔵し、その後も50点以上作品を収蔵する機会に恵まれてきました。それによって、現在長谷川潔作品は、質量ともに当館の重要なコレクションのひとつとなっています。本展覧会はそれら収蔵品を展示し、この版画家目指した表現世界を探るものです。その精神性豊かな作品は、情報の海に身をゆだねる現代人の思考のあり方を問うにもなるでしょう。”
 この展覧会のパンフレットに使われている長谷川の「時 静物画」という1969年の作品は、漆黒の画面から白く浮かび上がるような静物は照らし出されているような明るい光輝に包まれているようなところは、スペイン・バロックのボデコンと呼ばれる神秘主義的な静物画の雰囲気が漂っていますし、現実の脈略とは別の論理で何か意味ありげに幾何学的に配列されているのは北方ルネサンスのディーラーとも近代のシュルレアリスムとも見える。それが、何ともいえない静けさに包まれている。そういう印象からは、この主催者あいさつは触れられていませんが、私が長谷川の作品に興味を持ったのは、静けさといっても、日本的な“侘び寂び”とは異質な神秘主義的とか敬虔とかいったものに近い印象からです。そういう視点で、これから作品を見ていきたいと思います。
 なお、この展覧会では展示作品の一覧表が単なるリストではなく、展示場での説明や作品画像も入った小冊子で、まるで展示会カタログの簡易版のようになっているものでした。これは素晴らしい。
それでは作品を見ていくことにしましょう。

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