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2019年6月19日 (水)

ラファエル前派の軌跡展(4)~第2章  ラファエル前派(2)

Preraffa2gara_1  そして、残る主要メンバーがロセッティで、今回はロセッティの展示作品が多く、この広間の半分以上がロセッティの作品の展示で占められていました。偏りすぎの感はありますが、おそらく、他の画家の作品よりもロセッティの作品が集め易かったのだろうと思います。ロセッティの作品の中でも比較的初期の水彩画が珍しくて、私には、今回の収穫のひとつだったと思います。例えば、「廃墟の礼拝堂のガラハッド卿」という水彩の小品。1850年代のロセッティは、独特の水彩絵具の使い方で、まるで油絵のような鮮明な色彩の水彩画を制作していました。その頃の作品です。普通の水彩画の淡い色彩でなく、鮮明なころですが、油絵に比べて澄明さがある、独特の色合いを持っています。詩人アルフレッド・テニスンが書いた詩をもとにしたアーサー王伝説の一場面です。円卓の騎士、ガラハッド卿が礼拝堂で祈りの声を聴きながら柱に括り付けたほら貝状の容器から手で水を飲んでいるところです。ひざまずくガラハッド卿の白いマントが、その下の青い甲冑が周囲の夜の青みがかった暗さに同化するようなので、対照的に栄えています。画面左の祭壇は、廃墟のはずなのに光が差して、ガラハッドの頭部と白いマントを照らしだしているように見えます。カラヴァッジォのようなバロック絵画であれば光と影の強烈な対照で劇的な場面にしてしまうこともできるところを、むしろ、画面は平板で水彩絵具の明暗の対照が油絵のようにきつくならないので、対立による緊張が生まれるよりも、ガラハッド卿が照らし出されるようで、しかも平板な画面ゆえに、画面左下の祭壇にかけられた布に織られた祈る人物の姿勢がガラハッド卿と直接向き合っているように見えているのです。
Preraffa2rance  「王妃の私室のランスロット卿」はペン画ですが、細かく線が引かれて、狭い室内にランスロット卿と王妃が嘆き悲しむ従者とともに閉じこもった閉塞した雰囲気がつよく感じられる作品です。もともとは、ロセッティが請け負ったオックスフォード大学の壁画のプロジェクトのための下絵だったようですが、絶望したように名目して顔をうえに向けている王妃は、窓の外に殺到する兵士を警戒するランスロットに背を向けて、横目で彼に視線をまわしながら自分の世界に入ってしまっている姿は、尖ったあごやまとめられることなく豊かに溢れるような髪の毛などは後のロセッティの官能的な女性像を彷彿させるところがあるとともに、悲劇的な場面を想像させます。というのも、アーサー王伝説では、この王妃とはアーサー王の妃グウィネヴィアで、ランスロット卿は彼女との不義を犯したために宮廷から追放され、アーサー王の死の遠因を作ることになります。画面左下、ちょうどランスロット卿が上半身を折って窓にもたれかかっている下のところに林檎の木の鉢植えがあるのは、原罪の禁断の木の実を表わしているのではないでしょうか。結局、ランスロットは罪深さのゆえに聖杯を拝受する機会を得ながら、それが叶わず、やがて清らかな騎士ガラハッドだけが聖杯を拝受することになります(その意味で、上の水彩画でガラハッドが清らかな白いマントを身につけているのは示唆的です)。
Preraffa2barge  「ボルジア家の人々」という水彩画の作品です。ロセッティは、後にルクレティア・ボルジアの肖像を描いていますが、その出自であるボルジア家の人々を描いたものでしょう。この中には、ルクレティアや兄のチェザーレ・ボルジア、あるいは父親の教皇レクサンドル6世もいるのでしょう。家族の集合した肖像画のようですが、画面右上の窓が開いて、少年が外から覗き見している様子があるために、物語の場面のようになっています。それぞれの鮮やかな衣裳の原色が対立あってとげとげしくならないのは水彩絵具の透明さのためでしょうか。全体の調子は暗めなのに、衣装の色の鮮やかさが印象的です。
Preraffa2sunrise  「夜が明けて─ファウストの宝石を見つけるグレートヒェン」という作品です。1860年代の官能的な女性像を描き始めたころの作品です。これはチョークを使って描かれたということで驚きました。色彩としては、パステルよりも淡く、その淡い色彩のグラデーションで薄く淡い画面で、いまにも消えてしまいそうな儚い印象を与えます。それにもかかわらず、グレートヒェンは初期の水彩画の平板な人物とはちがって立体感があります。しかし、清純で可憐な少女のファウストのグレートヒェンにしては逞しいロセッティ好みの女性像になってしまっています。画面の左下には糸紡ぎの車が置いてあってグレートヒェンであることが暗示されていますが、糸を紡ぐことはしていなくて、ドイツの田舎娘の姿でもありません。宝石箱をあけて宝石を手にしているのは、どちらかというと、ロセッティの好むファムファタールのスタイルに寄っているといえると思います。

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