齋藤芽生とフローラの神殿(14)~15.「暗虹街道」
最後の展示シリーズは最新の作品だろうと思います。シンメトリーの構図は残り、「野火賊」のシリーズの頃までのリアルらしさは希薄になって、安定した構図を土台にして関連性もなく事物を並べて、画面全体の雰囲気を作ろうとしています。そこにカオスのような混乱があっていいはずなのに、整合性とまではいいませんが、落ち着いて眺めるだけの安定感があります。
このような言い方をすると差別的と思われるかもしれませんが、少女趣味のセンチメンタリズムというのか、夢見る少女が想像の世界に遊んでいるような風景を、文学の味付けをまぶして、近代絵画の技法で飾り立てて、良質な絵画作品として、提示された。見る者は、そういう装飾によって安心して眺めるという立場を確保することができて、そこで心置きなく遊ぶことができる。私には、齋藤の作品の基本的な魅力は、そういうところにあり、この人は、そういう画面を手を変え品を変えて、提示してくれる、そういうところにあると思います。だから、ちょっと不気味な雰囲気を感じさせる作品も、センスのいいインテリアとしてお洒落なリビングに飾っても、何の違和感もないと思います。
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