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2020年3月25日 (水)

ハンマスホイとデンマーク絵画(3)~第4章 ヴィルヘルム・ハマスホイ─首都の静寂の中で(2)

Hammer2020stove  ここからは、展示の順番通りではありませんが、ハンマスホイといえば室内を描いた作品が中心になるので、展示のメインのメインというべき作品を見ていきたいと思います。ただし、以前の西洋美術館での展覧会のときに比べて室内画の展示作品数は少なくなっていたと思います。ハンマスホイの作品数全体が少なくなっていたからかもしれないし、その代わりにデンマーク絵画の作品が展示されていたからかもしれません。
 まず、「古いストーブのある風景」という1888年の作品です。ハンマスホイが初めて描いた室内画のひとつということで、この室内は自宅のではなくて、学生時代の下宿していた部屋ということです。当時のコペンハーゲンでは、多くの画家たちが室内の情景を描いていたということで、ハンマスホイも、そのような環境の中で室内画を描いてみたという作品ではないかと思います。彼が本格的に室内を描き出すのは1990年代後半からですから、この作品は後のスタイルが出来上がる前のものだと思います。とはいっても、この時点で、同時代の他の画家たちの作品とは一線を画す特徴を見ることができます。この作品を見ていると、何か寒々とした印象で、色調は暗く、しかも描かれた画面は平面的です。どこか突き放したようなところがあり、そこにはあまり画家の部屋に対する愛着とか思い入れのようなものは感じることはできません。同時代のコペンハーゲンの画家たちの描いた室内は、画家自身の家庭生活をモチーフとしたもので、そこでの親密でほほえましい家族や親しい友Hammer2020ilstel Milletbostonfel 人たちのくつろいだ姿、日常生活の場面といった幸福な家庭生活を表現したものでした。これは当時のブルジョワジー、つまり、画家たちの絵画の消費者たちが求めたイメージだったのではないかと思います。例えば、ピーダ・イステルズの「アンズダケの下拵えをする若い女性」という作品は、フェルメールの作品そっくりですが、それを当時の風景に移し替えて描いたような作品です。そこには17世紀のオランダの繁栄になぞらえる気持ちもあったことは否定できないと思います。すくなくとも自信があった。そういうことが見て取れると思います。この作品で若い女性が来ている服の黄色は、ハンマスホイの作品では、ほとんど見ることのできない色です。同じイステルズの「縫物をする少女」という作品です。このような子どものいる室内というのはハンマスホイの作品では見ることができない。少し大きすぎる椅子の端にチョコンと腰かけて、陽だまりの中で縫物に夢中になっている少女の姿は微笑ましく、暖かみのある色遣いと相まって、作品画面は親密な空気で満たされています。このような温もりのある視線というのはハンマスホイの室内には見つけることはできないと思います。また、子供を描いた作品では、ヴィゴ・ピーダスンの「居間に射す陽光、画家の妻と子」という作Hammer2020ilstel2 品もありました。居間で幼い子供をあやす母親を描いた作品です。陽だまりの中で、彼女の白い肌と黄色のドレスは、それ自体が輝いているかのように陽光を浴びています。床に散らばったおもちゃや人形、絵本には目もくれず、笑顔の母親を指さす子供。ここで表現されているのは家庭の幸福な姿であり、この母子のように親し気に視線を交わすことや、床にものが散らばっている光景はハンマスホイの作品画面には見いだすことのできないものです。そして、あふれるような光が、画面に暖かさに満ちたものにしています。ハンマスホイの視点から言えば、このような要素は、彼の作品画面ではすべて排除されたもので、このようなものを切り捨てていったところに彼の室内画というのが、できあがっていったものだということができると思います。

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