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2020年3月23日 (月)

ハンマスホイとデンマーク絵画(2)~第4章 ヴィルヘルム・ハマスホイ─首都の静寂の中で

 第1章 日常礼賛─デンマーク絵画の黄金期
 第2章 スケーイン派と北欧の光
 第3章 19世紀末のデンマーク絵画─国際化と室内画の隆盛
これらは省略
Hammer2020nude  「裸婦」という1884年の作品です。彼が、未だ20歳で、学校で学んでいたころの作品です。いわば習作に近いところもあるでしょうが、この時点でも、彼は、対象を描写するということよりも描かれた画面の方に興味があることを表していると思います。おそらく、ヌード・デッサンをもとに作品に仕上げたのでしょうが、この人のデッサン力の高さは抜きんでているのは、これまで展示されている作品を見ていると、比較で分かります。真っ暗な背景から肌の白さが浮きあがるように映える。その肌の柔らかや温かみの感触できる。とくに、首をかしげるように、向こう側に顔を向けている少女のうなじの少し陰になった柔らかい陰影と産毛の表現によく表れています。ふつう裸婦像で注目されるようなポイントである女性の乳房は、視線を集める中心となっていないと思います。ということは、同じ19世紀にイギリスでは裸体画というのが、理想の美の表現とか物語の場面とかいうような、口実で制作されていました。例えば、美の女神を裸体の姿で描くとか。それに対して、このハンマスホイの裸婦は、そういう配慮があるように見えません。むしろ、白い肌のうなじの柔らかな感触を描くためには裸体にした。だから、乳房を女性の理想的な身体の美しさのシンボルとして扱うことなく、それは、乳房の形を描くことも、あえて隠すポーズをとらせて恥じらいの表現とすることはしていません。しかも、背景を真っ黒に塗りつぶして、物語の場面ではなく、人物をのみ描いているというわけです。それゆえ、裸婦像といっても、官能的であるとか、耽美といったことを、あまり感じることがない作品になっていると思います。
Hammer2020relif  「ルーヴル美術館の古代ギリシャのレリーフ」という1891年の作品です。8年前の西洋美術館の展示会にも出品されていたようなのですが、そのことを覚えていませんでした。それほど印象に残らず、見過ごしていた作品でした。それを見直し、あらためて、この作品を認識させたくれたのは、この展覧会のおかげです。パリのルーヴル美術館に展示されていた紀元前5世紀の古代ギリシャの浮彫を描いた作品です。この浮彫には美と優雅を司る三人の女神の女神が表されていました。
Nebelrefuz  ハンマスホイは大理石の欠損箇所や、周りの暗い美術館の壁までも忠実に描いています。彼は、この浮彫で表現されているギリシャ神話の「パリスの林檎」の物語を描くことには、あまり興味がなかったのではないかと思います。彼が描いたのは浮彫という物体で、その表現という意味とか内容ではないということです。しかし、この作品はそれだけではない。ルーヴル美術館の古代ギリシャのレリーフの浮彫を忠実に写した、写実的な作品ではないと思います。それは、表層部分の描き方のところで、ハンマスホイは、短い幅広のタッチで、点描のような絵の具の使い方をしています。距離をとって離れて見ると、浮彫を描いた画面が、近寄って目を凝らして見ると、整然とタイルが並んでいるように、その並んだ茶とグレーの系統のタイルが微妙に変化するように並べられていて、時折茶系統の色のタイルの並びの中にグレーのタイルが闖入したりして、その並びが独特のリズムを作っている。この作品の主眼は、浮彫の物語でも歴史的な作品としての浮彫Hammer2020relif2 を描くことでもなく、茶とグレーの絵の具のドットを並べて作品を作ることだったように、私には見えます。これは、例えば20世紀初めの抽象画家オットー・ネーペルが、画面中に細かなハッチングを稠密に並べて、全体として人物や建築をモチーフとしたように見える作品を制作したことを連想してしまうのでした。こうしてみると、ハンマスホイの作品はヨーロッパ絵画の先進地域から離れた北欧のローカルな地で、独自の作品をマイペースで描いたものというイメージから、むしろ先端的なムーブメントに通じるような作品を独自に追求していたものと見ることができるのではないかと思えてきます。

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