リリアーナ・カヴァーニ監督の映画「愛の嵐」の感想
ウィーンのホテルの初老のフロント係の男性と有名な指揮者の妻となった女性が偶然再会する。女性はユダヤ人で第二次世界大戦の際に強制収容所に入れられ、救出された過去をもつ。男性は、その収容所にいた親衛隊の将校で、未だ少女であった彼女を弄んだのだった。男は、その罪を逃れるため、隠れた生活を続けていた。それが過去を知る彼女と出遭ったことで、周辺が慌ただしくなる。その結果、二人は、ホテルの部屋に閉じ込められることになる。極限的な状況で二人は、かつても倒錯的な関係を甦らせる。主演女優のシャーロット・ランブリングが若作りして十代の少女になりきって、上半身をサスペンダーだけで隠したヌード姿で、ストリップを踊ったり、鞭で打たれたりするシーンが話題になった映画。
作品としてみれば、ユダヤ人の迫害とか、ドイツの戦争犯罪とか尤もらしいゴタクを並べて格好をつけているが、内容は単なるポルノだろうと、監督のリリアーナ・カヴァーニは好きではない。しかし、閉じ込められた中で、食物が底を突き飢えに苦しむ二人の、男性が冷蔵庫に食べ残しのジャムを見つけて舐める。それを女性がみつけると、男性は舐めつくした後、それで、男性に口づけして舌を差し込み、男性の口中のジャムを奪おうとする。愛の行為である口づけが生存をかけた戦いになる。その時の女性のジャムを口のまわりにつけて、まるで口紅のようになって、獣のような顔つきをしていた、そのシャーロット・ランブリングを見るだけで、この映画の価値がある。ちなみに、男を演じていたのはダーク・ボガード。ビスコンティやベルトリッチなどのヨーロッパ系の監督の作品ではお馴染みの男優。
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