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2020年8月21日 (金)

「イギリス近代史講義」川北稔

11111_20200821214201  世界史の教科書を開くと、その多くの部分を帝国が占めている。帝国とは、中華帝国、古代ローマ帝国、イスラムの帝国あるいはモンゴル帝国等皇帝がいて、皇帝とは王の上にいて、世界を支配する。実際の中華帝国はアジアの一部を支配しているだけなのだが、意識として世界を支配している。つまり、並ぶものがない唯一の存在。皇帝は全体を支配し権力や武力を独占し、他の者には持たせない。だから、各地の有力者から武器を取り上げる傾向が強い。だから、帝国というシステムは内部は比較的平和で、戦争は帝国の外との戦いで、支配者は内部の反乱などをさせないように抑えることに心を砕く。そのため、武器等の戦の技術は発達しないことが望ましいとされる。基本的に平和だが、停滞した世界になりやすい。
 これと違うのが近代の西欧世界で、帝国ではなく王の統治する主権国家が並び立つ。ヨーロッパという世界全体は統制のとれないシステムで、イギリス、フランス、ドイツなどの主権国家は、それぞれが喧嘩をするように互いに戦い、負けないように兵器の開発競争を始める。それだけでなく、武力を高めるためには、その基盤である国力を高めねばならず、そのために経済成長の競争をしなければならなくなる。
 マルクスの『資本論』では資本主義という経済システムが拡大再生産という経済成長の姿勢を生み出したという説明をしているが、上記のような歴史の流をみると、近代ヨーロッパの特異な体制システムが競争という姿勢を生み出し、そのマインドが資本主義の動機を生んだという、マルクスのいう原因が実は結果だったという議論になる。まるで、資本論を逆立ちして読みたくなるような発想の転換を促される。これも、歴史を見る面白さだろうと思った。あるいは、先日読んだ記号論の発想を歴史に一部応用したという側面もある。まるで、ゲームを楽しんでいるような面白さに溢れた本。

 

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