ジャズを聴く(52)~ソニー・ロリンズ「SONNY ROLLINS VOL.2」
Why Don't I?
Wail March
Misterioso
Reflections
You Stepped Out Of A Dream
Poor Butterfly
Sonny Rollins (ts)
J.J. Johnson (tb)
Horace Silver (p)
Thelonious Monk (p)
Paul Chambers (b)
Art Blakey (ds)
煽るブレイキー。この勢い溢れる焚きつけっぷり。これによって煽られまくったロリンズは、一音でも多くの音を吹きたくて吹きたくてたまらなかったのだろう、ドラムスとの4小節交換の箇所など平気ではみ出しまくっているし、このはみ出しっぷりが逆に演奏にものすごい推進力を生みだしている。しかも、ロリンズだけではなく、冷静な印象の強いトロンボーンのJ.J.ジョンソンも音の速射砲さながらに丸太い音を連射する。ブレイキーに煽られてか、はたまたブレイキーに煽られたロリンズに感化されてか、とにもかくにもJ.J.もノリノリ元気。この豪快な勢いで燃え盛る炎に向けて、もっと燃えろとばかりに火をくべ、団扇で煽りまくるのが、名手ホレス・シルヴァーのピアノと、ポール・チェンバースのベース。こうなると、ロリンズの快進撃は止まらない。そこに乱入する、セロニアス・モンク。
最初の「Why Don't」。メンバー全員が一丸となったテーマ吹奏が、いきなり強烈で、この冒頭のトゥッティのキメの短いリフを随所の節目節目に折り込みながら、最初からロリンズのソロは全開に縦横無尽に暴れるように豪放に吹きまくる。続くJ.J.ジョンソンが冷静ながら、テンポとテンションを落とさないでいると、背後からアート・ブレイキーのドラムが迫るように煽る。しかし、これは最初の小手調べ。次の「Wail March」アート・ブレイキーが十八番のマーチドラミングのイントロで一発カマしてから、力強いテーマが始まり、すぐさま高速4ビートで J.J.ジョンソンがスーパーテクのアドリブを聴かせる。しかも背後ではアート・ブレイキーが襲い掛かるように煽る。続くロリンズは、最初からブローを繰り広げる。ここでのロリンズは吹きたくてしょうがないという風情。3曲目の「Misterioso」では、セロニアス・モンクが乱入して、なんと1台のピアノをホレス・シルヴァーとセロニアス・モンクの2人が弾いたという。曲はモンクのオリジナルで、最初セロニアス・モンク自身がピアノでミステリアスなメロディをリードし、ホーン隊が加わっての合奏から、ロリンズが全く異質なフレーズで乱入しムードを描き回しているのに、ちゃっかりバックでモンクがリードしている、この2人の駆け引きは凄い。続く、ピアノ・ソロはモンクで、ロリンズに輪をかけて異質なフレーズをぶち込んで、コードワークは大混乱の様相のはずなのに、といっているうちにピアノの調子が変わり、ぐっとファンキーに。しかし、よくもこんな脈絡のない展開にリズムをつけられると感心しているうちにロリンズのソロとなってハード・バップ調になんとも閉じた後、モンクのピアノが最初の調子に強引に持って行って、本当に終わったの?次の「Reflections」のモンクのオリジナルで、モンクのピアノから始まる。ロリンズがメロディを朗々と吹いてアドリブのオカズを広げていくと、モンクはそのメロディの情感をはぐらかすようなピアノで、そこにアグレッシブに切れ込むロリンズのサックス。これがスリリング。スローバラードなのだろうけれど、このスリルと緊張はただ事ではなく。先の予想がつかない。次の「You Stepped Out Of A Dream」では、明らかにモンクとは違うホレス・シルヴァーのファンキーなピアノが、なんと安心を誘うのだろう。そこから、軽快なテンポでハード・バップなアドリブをロリンズが快速にとばす。最後の「Poor Butterfly」はテンポをおとしたミディアム・ナンバー。これも凄い演奏なのだけれど、モンクの乱入の次元の異なるプレイから、ようやく安心して終わることができた、というところ。
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