佐藤俊樹「社会科学と因果分析 ウェーバーの方法論から知の現在へ」
マックス・ウェーバーというと、近代の資本主義経済や合理的な官僚システムがヨーロッパでのみ成立したのはなぜかという問題意識で「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を著した人だが、社会科学の創始者の一人として方法論の著作も少なくない。私には、「社会科学と社会政策にかかわる認識の『客観性』」において、し「社会科学と社会政策にかかわる認識の『客観性』」社会科学が科学であるためには、どうすればよいのかということを、社会科学が成立するために模索したと思っている。時代はズレるが、マルクスが、自身の社会主義を科学的と称し、プルードンたちを空想的と呼んで差別化したのは、客観的であることと実践的であることと、いわば直線的な論理でスパッと切り分けたのが、大学時代の私には、2大巨頭と捉えていた。マルクスに対して、ウェーバーは紆余曲折していて、割り切れないところがあって、つかみどころがない印象が強かった。
しかし、この著作では、ウェーバーの「社会科学と社会政策にかかわる認識の『客観性』」は過渡期の思考で、方法論の代表作は「文化科学の論理学の領域での批判的研究」だという。それが世界標準で、前者の論文を殊更に取り上げるのは日本の学界の特徴だという。前者では、社会科学は価値を創造する科学であるのに対して、自然科学は法則を追求するとして社会科学を称揚するところがある。それゆえ、私は、その姿勢に感動しもした。しかし、後者にあるのは、そんな差別化、というよりも対立を超えようとした。ということは自然科学をも取り込んでいくことを可能にした。それが実践面では、統計学的手法を社会科学が取り込むことを可能にした。それは、後のマーケティング理論に分化していくし、それが理念が裏付けるという方法論をうみだしていったとする。私の個人的に思っていたウェーバーの姿を作り直させる、目から鱗の議論だったと思う。私には、かなり難しい。
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